俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。

ミミリン

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あなたは美しい

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「…。」
近くでこの美しい女性を眺めても良いと言われたので遠慮なく見ていると時間の感覚がおかしくなっていた。


「アレックス、見とれるだけじゃなくてあなたの意見は?」


「え?ああ、すみません。前提として俺は瞳や髪の色、肌の色などは関係構築上気にしたことがありません。差別の対象になる色もありますが…。

失礼を承知で言いますがあなたのそのアメジストの瞳はわが国ではあきれたことに、まだ一部の組織では疎まれている色ではあります。しかし俺はその瞳をすごく綺麗だと思います。
神秘的で宝石のようだ。本当に、美しい。瞳だけではなく全てがあなたは美しい。」


彼女は俺の言葉を聞いて静かに驚いたような反応を見せた。

そんな表情の変化さえも芸術品のようだ。

でもどこか純真さを感じさせる。これは確かに社交界では苦労するだろうな。

「美しすぎるが故のあなたのご苦労は計り知れません。あなたのご両親もさぞご心配だったでしょう。」
自然とそのような言葉が出てきた。


彼女は驚いた顔から、次は辛そうな表情に変わり、涙が瞳に溜まり始めていた。


「いけない。これをどうぞ。」胸元に用意していたハンカチを手渡す。

「アレックス、察しが良いわね。そうなのよ、彼女のご両親もこの規格外の美しさのせいで訳の分からない縁談を断るのが大変なのよ。でね、セリーヌがあなたに好意を持った事を伝えると、すぐにでも縁談を取りまとめてほしいって頼まれているのよ。あなたもセリーヌを気に入ったようだし、良いわよね。アリスには私からも今回の事説明するわ。」


「は?縁談?取りまとめ?何を言っているんだ?」急に我に返った。


「え?何よ怖い顔して。ああ、アメジストの瞳がダメなの?あなたの家柄はアメジスト色を迎え入れられない家系かしら?」

「だから、色は関係ない。彼女の瞳はさっきも言ったように美しい。全てが芸術品のように美しい。ずっと見ておきたい、傍に置いておきたいという男どもの気持ちも分かる。」

「ならいいじゃない。」

「俺にはアリスがいる!」

つい大きな声で怒鳴ってしまう。


「マリーナ嬢、あなたは俺の気持ちを見くびっている。俺はアリスの事を真剣に愛しているんだ。申し訳ないが、セリーヌ嬢の気持ちにはこたえられない。」


「でも、アレックスはアリスの素顔を見たことがないでしょう?どうするの、アリスの素顔があなたの想像していないような姿だったら。セリーヌはアメジストの瞳だけど容姿は優れているわ。家柄も性格も私が保証するわよ。」


マリーナ嬢は何でこんなに必死なんだ?こんなに話が通じない女性ではないはずだぞ。ここは、はっきり言わないと伝わらないな。


「俺はアリスの信念や功績を誇りに思う。それと同じだけアリスを女性として魅せられているんだ。
自分の愛する人の瞳が何色だろうと関係ない。
素顔がどのようなもので構わない。
俺はアリスといる時安らぎを感じ、向上心をもらえるんだ。マリーナ嬢、失礼だがこれ以上俺とアリスを裂くような事をしないでほしい。アリスが俺を拒絶するようなことがあれば話は別だが、それはマリーナ嬢とは関係のない話ではないか?」


セリーヌ嬢の方を見ると衝撃を受けたような切ない表情をしていた。


「そういうことですから、セリーヌ嬢、私には愛する婚約者がいます。申し訳ありませんがあなたとの縁談は望めません。あなたほどの美貌をお持ちでしたら俺みたいな馬鹿な男でなく素晴らしい男性が現れます。気を落とされないように。では、どうかお元気で。これにて失礼します。」


俺はセリーヌ嬢に深々と礼をした。


セリーヌ嬢は俺に何かを言おうと手を伸ばし引き留めようとしてきた。それを気が付かない振りする。


「マリーナ嬢。色々失礼な言い方をして申し訳ない。俺が会いたいのはアリスなんだが、今どこにいるんだ?」
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