俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。

ミミリン

文字の大きさ
24 / 48

あなたは美しい

しおりを挟む
「…。」
近くでこの美しい女性を眺めても良いと言われたので遠慮なく見ていると時間の感覚がおかしくなっていた。


「アレックス、見とれるだけじゃなくてあなたの意見は?」


「え?ああ、すみません。前提として俺は瞳や髪の色、肌の色などは関係構築上気にしたことがありません。差別の対象になる色もありますが…。

失礼を承知で言いますがあなたのそのアメジストの瞳はわが国ではあきれたことに、まだ一部の組織では疎まれている色ではあります。しかし俺はその瞳をすごく綺麗だと思います。
神秘的で宝石のようだ。本当に、美しい。瞳だけではなく全てがあなたは美しい。」


彼女は俺の言葉を聞いて静かに驚いたような反応を見せた。

そんな表情の変化さえも芸術品のようだ。

でもどこか純真さを感じさせる。これは確かに社交界では苦労するだろうな。

「美しすぎるが故のあなたのご苦労は計り知れません。あなたのご両親もさぞご心配だったでしょう。」
自然とそのような言葉が出てきた。


彼女は驚いた顔から、次は辛そうな表情に変わり、涙が瞳に溜まり始めていた。


「いけない。これをどうぞ。」胸元に用意していたハンカチを手渡す。

「アレックス、察しが良いわね。そうなのよ、彼女のご両親もこの規格外の美しさのせいで訳の分からない縁談を断るのが大変なのよ。でね、セリーヌがあなたに好意を持った事を伝えると、すぐにでも縁談を取りまとめてほしいって頼まれているのよ。あなたもセリーヌを気に入ったようだし、良いわよね。アリスには私からも今回の事説明するわ。」


「は?縁談?取りまとめ?何を言っているんだ?」急に我に返った。


「え?何よ怖い顔して。ああ、アメジストの瞳がダメなの?あなたの家柄はアメジスト色を迎え入れられない家系かしら?」

「だから、色は関係ない。彼女の瞳はさっきも言ったように美しい。全てが芸術品のように美しい。ずっと見ておきたい、傍に置いておきたいという男どもの気持ちも分かる。」

「ならいいじゃない。」

「俺にはアリスがいる!」

つい大きな声で怒鳴ってしまう。


「マリーナ嬢、あなたは俺の気持ちを見くびっている。俺はアリスの事を真剣に愛しているんだ。申し訳ないが、セリーヌ嬢の気持ちにはこたえられない。」


「でも、アレックスはアリスの素顔を見たことがないでしょう?どうするの、アリスの素顔があなたの想像していないような姿だったら。セリーヌはアメジストの瞳だけど容姿は優れているわ。家柄も性格も私が保証するわよ。」


マリーナ嬢は何でこんなに必死なんだ?こんなに話が通じない女性ではないはずだぞ。ここは、はっきり言わないと伝わらないな。


「俺はアリスの信念や功績を誇りに思う。それと同じだけアリスを女性として魅せられているんだ。
自分の愛する人の瞳が何色だろうと関係ない。
素顔がどのようなもので構わない。
俺はアリスといる時安らぎを感じ、向上心をもらえるんだ。マリーナ嬢、失礼だがこれ以上俺とアリスを裂くような事をしないでほしい。アリスが俺を拒絶するようなことがあれば話は別だが、それはマリーナ嬢とは関係のない話ではないか?」


セリーヌ嬢の方を見ると衝撃を受けたような切ない表情をしていた。


「そういうことですから、セリーヌ嬢、私には愛する婚約者がいます。申し訳ありませんがあなたとの縁談は望めません。あなたほどの美貌をお持ちでしたら俺みたいな馬鹿な男でなく素晴らしい男性が現れます。気を落とされないように。では、どうかお元気で。これにて失礼します。」


俺はセリーヌ嬢に深々と礼をした。


セリーヌ嬢は俺に何かを言おうと手を伸ばし引き留めようとしてきた。それを気が付かない振りする。


「マリーナ嬢。色々失礼な言い方をして申し訳ない。俺が会いたいのはアリスなんだが、今どこにいるんだ?」
しおりを挟む
感想 74

あなたにおすすめの小説

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

王妃さまは断罪劇に異議を唱える

土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。 そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。 彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。 王族の結婚とは。 王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。 王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。 ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。

【完結】本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました

音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。 ____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。 だから私は決めている。 この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。 彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。 ……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。

始まりはよくある婚約破棄のように

喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」 学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。 ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。 第一章「婚約者編」 第二章「お見合い編(過去)」 第三章「結婚編」 第四章「出産・育児編」 第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始

つかぬことを伺いますが ~伯爵令嬢には当て馬されてる時間はない~

有沢楓花
恋愛
「フランシス、俺はお前との婚約を解消したい!」  魔法学院の大学・魔法医学部に通う伯爵家の令嬢フランシスは、幼馴染で侯爵家の婚約者・ヘクターの度重なるストーキング行為に悩まされていた。  「真実の愛」を実らせるためとかで、高等部時代から度々「恋のスパイス」として当て馬にされてきたのだ。  静かに学生生活を送りたいのに、待ち伏せに尾行、濡れ衣、目の前でのいちゃいちゃ。  忍耐の限界を迎えたフランシスは、ついに反撃に出る。 「本気で婚約解消してくださらないなら、次は法廷でお会いしましょう!」  そして法学部のモブ系男子・レイモンドに、つきまといの証拠を集めて婚約解消をしたいと相談したのだが。 「高貴な血筋なし、特殊設定なし、成績優秀、理想的ですね。……ということで、結婚していただけませんか?」 「……ちょっと意味が分からないんだけど」  しかし、フランシスが医学の道を選んだのは濡れ衣を晴らしたり証拠を集めるためでもあったように、法学部を選び検事を目指していたレイモンドにもまた、特殊設定でなくとも、人には言えない事情があって……。 ※次作『つかぬことを伺いますが ~絵画の乙女は炎上しました~』(8/3公開予定)はミステリー+恋愛となっております。

【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。

夏灯みかん
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。 妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。

最愛の人に裏切られ死んだ私ですが、人生をやり直します〜今度は【真実の愛】を探し、元婚約者の後悔を笑って見届ける〜

腐ったバナナ
恋愛
愛する婚約者アラン王子に裏切られ、非業の死を遂げた公爵令嬢エステル。 「二度と誰も愛さない」と誓った瞬間、【死に戻り】を果たし、愛の感情を失った冷徹な復讐者として覚醒する。 エステルの標的は、自分を裏切った元婚約者と仲間たち。彼女は未来の知識を武器に、王国の影の支配者ノア宰相と接触。「私の知性を利用し、絶対的な庇護を」と、大胆な契約結婚を持ちかける。

虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと
恋愛
21.05.23完結 ーー 「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」 差し伸べられた手をするりとかわす。 これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。 決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。 彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。 だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。 地位も名誉も権力も。 武力も知力も財力も。 全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。 月並みに好きな自分が、ただただみっともない。 けれど、それでも。 一緒にいられるならば。 婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。 それだけで良かった。 少なくとも、その時は。

処理中です...