夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第1章

第5話 魔法属性とご飯

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歩きながら聞いた、ナビさんの説明を俺なりに要約したいと思う。
てか、魔法式や構造の内容やら、発展の歴史なんかも説明されたが、今必要としている知識じゃないところを省いて頭に入れておきたいからだ。

この世界には、魔法の属性が多数あるらしく、火、水、土、風の4属性が基本になって、其々に光と闇の派生属性が存在している。
火の光派生に炎属性、闇派生に焔属性ってものになるらしいが、違いはよく分かっていない…
其々の属性には、当然相性もあるみたいで、例えば火属性だと、水属性には弱く、土属性とはそれなり、風属性には強いって感じかな。
あくまで相性なので、力の差があると火属性の魔法で水魔法に対抗することもできるみたいだけどね。

因みに無属性の魔法も存在しているけど、各属性の下位互換的な位置付けで、言うなれば器用貧乏な属性になる。
でも、無属性の魔法には、無限収納インベントリ空間跳躍テレポートなんかの魔法も含まれているみたいなので、使える様になればとても便利だと思う。

そして、魔法を使う時に必要とされている詠唱や魔道具はあくまで補助的なもので、訓練を積めば無詠唱で発動することも可能になるとのこと…
色々と恥ずかしい詠唱をしなくても良くなりそうで何よりだ。

魔法発動の流れも教えてくれた。
魔法は、大気中の魔素ってものを体に取り込み、生体魔素転換路エーテルリアクターで各属性の魔力に変換し発動する。
体内の生体魔素転換路エーテルリアクターに、無属性以外の各属性との相性があるため、人によって使える属性、使えない属性があるみたい。
過去には全属性が使える人間がいたようだけど、回復系が使えない時点で自分には関係ない話だね。

聞きなれない生体魔素転換路エーテルリアクターってものは、この世界の生き物なら、必ず体の中に持っているものらしく、地球出身の俺や優子マメ、ぬいぐるみ達の体にもナフタが組み込んでいるらしいが、神経や血管と同じような感じらしいから、ぱっと見は分からないんだと。

そして、生体魔素転換路エーテルリアクターが一度に変換できる魔素の量が、魔法の威力を決める要因で、連続して魔法を使うと、変換効率が下がって威力も落ちるみたいで、それでも無理して使い続けると、気絶、下手をすると死んでしまうこともあるらしい。
…気をつけようと思う。


そんな感じにナビさんからの情報を聞きながら、ぬいぐるみを抱いて楽しそうに歩く優子マメの後ろをついていたが、そろそろ腹が減ってきた。

太陽の位置から推測すると、既に午後に差し掛かっているだろう。
身体が若返っても、別に運動が好きになったわけじゃないから、ずっと歩き続けるのにもそろそろ飽きてきた…

既に結構な距離を歩いてきてるようで、酸の雨を降らせているであろう雨雲も、随分と遠くなった。
いまだに黒い雲が残っているのは少し気になるけど…永遠に振り続ける雨はないって言うし、人の住む場所からも離れているみたいだし…うん、大丈夫…だよな?

よし、やめよう。
考えても答えはでない…


「なぁ、そろそろ飯にしないか?」

少し前を歩く優子マメに声をかけると、こちらに振り向いて答えてくれた。

「しよう。お腹減ったしね。」

「ご飯か?何食べる?チョコか?」

「肉でしょ?肉食べるよね?」

優子マメに抱かれたぬいぐるみ達も、当然のように食べるらしい。
どちらも自分の食べたい物を言いながら、優子マメの腕をテシテシと叩いていた。
ぬいぐるみに叩かれても痛くはないだろうしそこは放置するとして、飯の準備をしていこう。
地球だと優子マメが料理していたけど、こんな何もないところじゃ料理どころじゃないし、あまり長居しない方がいいからね。

とりあえず、近場の岩陰に移動して、地球から持ち込んだ物の中から、カセットコンロと鍋を取り出し、ペットボトルの水を注いで火にかける。
安全が確保されるまでは、出来るだけ簡単に食べれるもので済ますつもりにしている。

早く人の住んでいるところに行かないと、食生活が偏りそうだな…

ストレージリングからアルファ米のパウチを取り出し、おかずになりそうな缶詰を選んでいると、優子マメの腕から降りたでっかちゃんがトテトテと歩いてきた。

「ぼんさん、肉は?肉食べたい。」

「ん?なら…これでいいか?」

焼き鳥の缶詰を出し、でっかちゃんの前に置いてやる。
缶詰をしばらく見ていたが、不思議そうにこちらを見上げてきた。

「開けないと食べられないよ?」

「みんなで食べるから少し待ってな?」

「そう?しろまー、一緒に食べよー」

でっかちゃんは余程お腹が減っているのか、楽しそうに話し込んでいた優子マメとしろまを呼びに行った。
その間に自分の食べる分を選んでおく。
無難にサンマの蒲焼にしておこう。
優子マメ達が揃ってやってきた所で、彼女達が食べる缶詰を選ばせる。

「今回は缶詰とアルファ米が昼飯な、優子マメはどれにする?」

「んー…これかな。」

「オレはこれね。マメ開けてー」

適当に取り出した数種類の缶詰を見せると、優子マメは鯖味噌、しろまはシーチキンの缶詰を手に取った。
非常食はまだまだある。
人のいるところに行くまでだったら、余程のことがない限り持つだろう。

湧いたお湯をパウチに入れ、缶詰をおかずに食べながら、さっきの魔物モンスターをどうするか考えていた。
ナフタは、生物も収納できると言っていたが、結果がどうなるかを教えてくれなかった。

考えられるのは、2通り。
まず考えられるのは、出したら収納前と同じように動き出す事ができる可能性。
この場合は、魔物モンスターだとまた襲われるかもしれないから結構面倒な事になるが、使い道は増える。
人の移動や緊急避難なんかにも使えるかもしれない。
もう1つは、収納した時点で死んでしまう可能性。
この場合、魔物モンスターなら問題ないが、人や動物に使うと大変なことになってしまう。

さて、どうしたものか…

既に食べ終わっていた優子マメ達には、余ったお湯にインスタントコーヒーを入れて渡してある。
飲みきるまでは、まだ時間がありそうだ。

(ナビさん、収納した魔物モンスターってどんな状態になってるの?)

『回答提示。時間停止による仮死状態になっています。』

(てことは、出すと動き出すのかな?)

『回答提示。即座に行動開始はしませんが、収納前と同様に動くことができるでしょう。』

これは魔物モンスターだと厄介な方だな…どうにか危機を脱したと思ったけど、出したらまた襲われる可能性が高い…か…

(どうにかする手段はないのかな?)

『回答提示。ストレージリング内で魔石の分離を行う事で、安全に対処できます。』

ナビさんによると、ストレージリングの機能に、収納したものを分別するものがあるみたい。
それを使って魔物モンスターの体内にある魔石を分離出来るらしい。
魔石は、魔物モンスターにとって心臓のような物らしく、生体魔素転換路エーテルリアクターが何かの拍子に暴走してしまい、体内の臓器を結晶化したものが魔石と呼ばれている。
だから魔石が無ければ、魔物モンスターは動くことが出来なくなる。

ナビさんの指示に従い、収納している追跡狼チェルフから魔石を分離させてみるが、作業自体は難しいものでもなく、殆ど感覚的なものだけど、ほんの数秒で終わってしまった。

問題はこれからだ…

「出してみるか…」

「え?何か出すの?」

思わず口をついて出た言葉は、コーヒーを飲みながらゆっくりしていた優子マメの耳に届いてしまった。

「何、お菓子か?」

「肉でしょ、肉ー」

ぬいぐるみ達も優子マメに続く。こいつらはなんなんだ…
まあいいか…どうせいつかは通る道だしな…

優子マメ達に少し離れるように言い、魔石を分離した追跡狼チェルフをリリースすることにした。

上手くいくといいな…


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作者です。
属性云々については、そのうちまとめたページを作ろうと思います。
感想でも残してもらえると嬉しいです。
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