12 / 100
第1章
第8話 キノコの宴
しおりを挟む
眠ってからどれくらいの時間が経ったのか、喉の渇きを覚えた俺は目を覚ましてしまった。
「けほ…うぅ…ん?…今…何時だ?」
辺りはまだ暗く、今が夜中であることだけは分かる。
地球から持ってきたスマホを見ると、昼の12時と出ている。
電波を受信できないことで、時計の類いは狂ってしまっているようだな…
残念ながら、正確な時間は分からないか…
「昼間は見なかったからな…ま、仕方ないか…」
ストレージリングから適当な飲み物を取り出し、体を起こして口にする。
と、横で寝ていたはずの優子がいないことに気がついた。
トイレにでも行ったのだろうと思ったが、日本で住んでいたマンションと違い、ここは安全が保証された場所ではないことを思い出し、急に不安になってしまう。
ナビさんが警戒していないことから、昼間の様な魔物が近くにいるわけではないとは思ったが、万が一ってこともある。
念のため確認をしようと、ゆっくりとテントの外に出て様子を伺うが、一瞬自分の目を疑ってしまう光景が広がっていた…
「な……!!!」
寝る前は、確かにただの石の転がる川原だったはずなのに、どのくらいか分からないが、寝て起きたらテントの外には見たこともないキノコが沢山…
もう意味が分からない…
「これは…優子!うおっ!な、なんだ!?」
テントから少し離れた所に優子を見つけ、声を出して一歩踏み出すと、キノコがザワッと動いた。
うん、俺も何が何だかなんだけど、地面が盛り上がってキノコと一緒に動いているように見えている。これは夢なのか?
「優子!大丈夫か!!」
「ぼん?大丈夫だよー、ウキャキャくすぐったいって。」
GAHYYYY
は?何か聞こえ…
GAHU?GAOHYYYY
なんかいるー!!!
「ナビさん!何かいる!何かいるって!」
『回答提示。周囲にいるのは敵生体ではありません。個体名、背茸子熊。背茸熊の幼体です。魔物や魔獣ではなく、戦闘能力は殆どないため、危険ありません。』
「…はぁ?」
自分でも驚くほど間抜けな声が出たと思う。
「大丈夫だよー、なんかトイレに起きたら、熊だらけになってたのー、おとなしいよー」
優子は、楽しそうに熊を撫で回し戯れている。もうね、何が何だか…
GAHUN
足元にいた背茸子熊が、ズボンの裾を引きながら見上げてくる。
襲ってくるわけじゃなさそうで、安心したら力が抜けてしまい、ヘタリとその場に座り込んでしまった。
背茸子熊は、俺の足に器用に乗ってくると、こっちを向いて声を上げる。
GAHUN、GAGAN
背茸子熊は自分の背中に手を回し、背中のキノコを一本取ってこちらに手渡してくる。
「え?あ、どうも…」
咄嗟に受け取ってしまったが、背茸子熊は満足そうに頷いていたため、受け取ったのは間違いではなかったんだと思う。
満足した背茸子熊は、足から降りて仲間の元に行ってしまう。
手の中には、謎のキノコが残された。
見た目だけならデカ目の椎茸だ…
「これは…食えってことなのか?」
「ぼんちゃー、このキノコおいしいよー」
モシャモシャとキノコを食べながら、優子が声を上げる。
普通に食べているみたいだが、あれ、生じゃね?
GAHUN
GAON
GAGAN
優子がキノコを食べたのが嬉しいのか、背茸子熊達は思い思いに声を上げる。
そして揃ってこっちを見る…
何かを期待するように、背茸子熊達のつぶらな瞳が一斉に俺に向けられるが…
これは俺も食わなきゃいけないって事なのだろうか…?
(ナビさん、このキノコ、食っても大丈夫なのか?)
『回答提示。問題ありません。』
(生で食べても?)
『回答提示。問題ありません。』
そうか…問題ないのか…
GAHUN?
GAGAHUN?
これは食わないといけない流れなんだろう…「食べないの?」と言いたげな背茸子熊の視線に急かされながら、意を決して椎茸みたいな謎のキノコを口にする。
むしゃ…
「あ、うまい…」
口にしたキノコは、噛むほどに旨味が染み出してくるもので、歯応えも生なのにコリコリとしているし、鼻から抜ける山の香りがとても良い。
今まで食べたキノコと比べても、ダントツに美味い。
GAHUGAHU
GAGAHUN
GUROON
俺がキノコを食べたのが嬉しいのか、背茸子熊達は小躍りするようにわちゃわちゃと動き回り声を上げる。
子熊が遊んでいるような光景は和んだが、それで終わることはなかった。
この後も、寝そうになると背茸子熊達に纏わり付かれてキノコを差し出される。
受け取って食べると、踊りが始まり、食べないとめちゃくちゃ悲しそうな顔で見られる。
熊の表情が分かるのも、後で冷静になれば不思議なことなんだが、とりあえずキノコを食べ続けた。
そしてキノコを食べると、また不思議な踊りが始まるの無限ループ…
突然始まったキノコの宴は、朝日が昇り明るくなるまで続けられることになるのだった…
ーーーー
作者です。
今回は短めです。
キノコ食べたくなって書きました。
感想その他、時間があれば是非。
「けほ…うぅ…ん?…今…何時だ?」
辺りはまだ暗く、今が夜中であることだけは分かる。
地球から持ってきたスマホを見ると、昼の12時と出ている。
電波を受信できないことで、時計の類いは狂ってしまっているようだな…
残念ながら、正確な時間は分からないか…
「昼間は見なかったからな…ま、仕方ないか…」
ストレージリングから適当な飲み物を取り出し、体を起こして口にする。
と、横で寝ていたはずの優子がいないことに気がついた。
トイレにでも行ったのだろうと思ったが、日本で住んでいたマンションと違い、ここは安全が保証された場所ではないことを思い出し、急に不安になってしまう。
ナビさんが警戒していないことから、昼間の様な魔物が近くにいるわけではないとは思ったが、万が一ってこともある。
念のため確認をしようと、ゆっくりとテントの外に出て様子を伺うが、一瞬自分の目を疑ってしまう光景が広がっていた…
「な……!!!」
寝る前は、確かにただの石の転がる川原だったはずなのに、どのくらいか分からないが、寝て起きたらテントの外には見たこともないキノコが沢山…
もう意味が分からない…
「これは…優子!うおっ!な、なんだ!?」
テントから少し離れた所に優子を見つけ、声を出して一歩踏み出すと、キノコがザワッと動いた。
うん、俺も何が何だかなんだけど、地面が盛り上がってキノコと一緒に動いているように見えている。これは夢なのか?
「優子!大丈夫か!!」
「ぼん?大丈夫だよー、ウキャキャくすぐったいって。」
GAHYYYY
は?何か聞こえ…
GAHU?GAOHYYYY
なんかいるー!!!
「ナビさん!何かいる!何かいるって!」
『回答提示。周囲にいるのは敵生体ではありません。個体名、背茸子熊。背茸熊の幼体です。魔物や魔獣ではなく、戦闘能力は殆どないため、危険ありません。』
「…はぁ?」
自分でも驚くほど間抜けな声が出たと思う。
「大丈夫だよー、なんかトイレに起きたら、熊だらけになってたのー、おとなしいよー」
優子は、楽しそうに熊を撫で回し戯れている。もうね、何が何だか…
GAHUN
足元にいた背茸子熊が、ズボンの裾を引きながら見上げてくる。
襲ってくるわけじゃなさそうで、安心したら力が抜けてしまい、ヘタリとその場に座り込んでしまった。
背茸子熊は、俺の足に器用に乗ってくると、こっちを向いて声を上げる。
GAHUN、GAGAN
背茸子熊は自分の背中に手を回し、背中のキノコを一本取ってこちらに手渡してくる。
「え?あ、どうも…」
咄嗟に受け取ってしまったが、背茸子熊は満足そうに頷いていたため、受け取ったのは間違いではなかったんだと思う。
満足した背茸子熊は、足から降りて仲間の元に行ってしまう。
手の中には、謎のキノコが残された。
見た目だけならデカ目の椎茸だ…
「これは…食えってことなのか?」
「ぼんちゃー、このキノコおいしいよー」
モシャモシャとキノコを食べながら、優子が声を上げる。
普通に食べているみたいだが、あれ、生じゃね?
GAHUN
GAON
GAGAN
優子がキノコを食べたのが嬉しいのか、背茸子熊達は思い思いに声を上げる。
そして揃ってこっちを見る…
何かを期待するように、背茸子熊達のつぶらな瞳が一斉に俺に向けられるが…
これは俺も食わなきゃいけないって事なのだろうか…?
(ナビさん、このキノコ、食っても大丈夫なのか?)
『回答提示。問題ありません。』
(生で食べても?)
『回答提示。問題ありません。』
そうか…問題ないのか…
GAHUN?
GAGAHUN?
これは食わないといけない流れなんだろう…「食べないの?」と言いたげな背茸子熊の視線に急かされながら、意を決して椎茸みたいな謎のキノコを口にする。
むしゃ…
「あ、うまい…」
口にしたキノコは、噛むほどに旨味が染み出してくるもので、歯応えも生なのにコリコリとしているし、鼻から抜ける山の香りがとても良い。
今まで食べたキノコと比べても、ダントツに美味い。
GAHUGAHU
GAGAHUN
GUROON
俺がキノコを食べたのが嬉しいのか、背茸子熊達は小躍りするようにわちゃわちゃと動き回り声を上げる。
子熊が遊んでいるような光景は和んだが、それで終わることはなかった。
この後も、寝そうになると背茸子熊達に纏わり付かれてキノコを差し出される。
受け取って食べると、踊りが始まり、食べないとめちゃくちゃ悲しそうな顔で見られる。
熊の表情が分かるのも、後で冷静になれば不思議なことなんだが、とりあえずキノコを食べ続けた。
そしてキノコを食べると、また不思議な踊りが始まるの無限ループ…
突然始まったキノコの宴は、朝日が昇り明るくなるまで続けられることになるのだった…
ーーーー
作者です。
今回は短めです。
キノコ食べたくなって書きました。
感想その他、時間があれば是非。
0
あなたにおすすめの小説
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。
剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。
彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。
「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。
これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。
【カクヨムでも掲載しています】
表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる