夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第1章

第8話 キノコの宴

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眠ってからどれくらいの時間が経ったのか、喉の渇きを覚えた俺は目を覚ましてしまった。

「けほ…うぅ…ん?…今…何時だ?」

辺りはまだ暗く、今が夜中であることだけは分かる。
地球から持ってきたスマホを見ると、昼の12時と出ている。
電波を受信できないことで、時計の類いは狂ってしまっているようだな…
残念ながら、正確な時間は分からないか…

「昼間は見なかったからな…ま、仕方ないか…」

ストレージリングから適当な飲み物を取り出し、体を起こして口にする。
と、横で寝ていたはずの優子マメがいないことに気がついた。

トイレにでも行ったのだろうと思ったが、日本で住んでいたマンションと違い、ここは安全が保証された場所ではないことを思い出し、急に不安になってしまう。
ナビさんが警戒していないことから、昼間の様な魔物モンスターが近くにいるわけではないとは思ったが、万が一ってこともある。

念のため確認をしようと、ゆっくりとテントの外に出て様子を伺うが、一瞬自分の目を疑ってしまう光景が広がっていた…

「な……!!!」

寝る前は、確かにただの石の転がる川原だったはずなのに、どのくらいか分からないが、寝て起きたらテントの外には見たこともないキノコが沢山…
もう意味が分からない…

「これは…優子マメ!うおっ!な、なんだ!?」

テントから少し離れた所に優子マメを見つけ、声を出して一歩踏み出すと、キノコがザワッと動いた。

うん、俺も何が何だかなんだけど、地面が盛り上がってキノコと一緒に動いているように見えている。これは夢なのか?

優子マメ!大丈夫か!!」

「ぼん?大丈夫だよー、ウキャキャくすぐったいって。」

GAHYYYY

は?何か聞こえ…

GAHU?GAOHYYYY

なんかいるー!!!

「ナビさん!何かいる!何かいるって!」

『回答提示。周囲にいるのは敵生体ではありません。個体名、背茸子熊キノズリー背茸熊キノゴリーの幼体です。魔物モンスター魔獣ビーストではなく、戦闘能力は殆どないため、危険ありません。』

「…はぁ?」

自分でも驚くほど間抜けな声が出たと思う。

「大丈夫だよー、なんかトイレに起きたら、熊だらけになってたのー、おとなしいよー」

優子マメは、楽しそうに熊を撫で回し戯れている。もうね、何が何だか…

GAHUN

足元にいた背茸子熊キノズリーが、ズボンの裾を引きながら見上げてくる。
襲ってくるわけじゃなさそうで、安心したら力が抜けてしまい、ヘタリとその場に座り込んでしまった。
背茸子熊キノズリーは、俺の足に器用に乗ってくると、こっちを向いて声を上げる。

GAHUN、GAGAN

背茸子熊キノズリーは自分の背中に手を回し、背中のキノコを一本取ってこちらに手渡してくる。

「え?あ、どうも…」

咄嗟に受け取ってしまったが、背茸子熊キノズリーは満足そうに頷いていたため、受け取ったのは間違いではなかったんだと思う。
満足した背茸子熊キノズリーは、足から降りて仲間の元に行ってしまう。
手の中には、謎のキノコが残された。
見た目だけならデカ目の椎茸だ…

「これは…食えってことなのか?」

「ぼんちゃー、このキノコおいしいよー」

モシャモシャとキノコを食べながら、優子マメが声を上げる。
普通に食べているみたいだが、あれ、生じゃね?

GAHUN
GAON
GAGAN

優子マメがキノコを食べたのが嬉しいのか、背茸子熊キノズリー達は思い思いに声を上げる。
そして揃ってこっちを見る…

何かを期待するように、背茸子熊キノズリー達のつぶらな瞳が一斉に俺に向けられるが…
これは俺も食わなきゃいけないって事なのだろうか…?

(ナビさん、このキノコ、食っても大丈夫なのか?)

『回答提示。問題ありません。』

(生で食べても?)

『回答提示。問題ありません。』

そうか…問題ないのか…

GAHUN?
GAGAHUN?

これは食わないといけない流れなんだろう…「食べないの?」と言いたげな背茸子熊キノズリーの視線に急かされながら、意を決して椎茸みたいな謎のキノコを口にする。

むしゃ…

「あ、うまい…」

口にしたキノコは、噛むほどに旨味が染み出してくるもので、歯応えも生なのにコリコリとしているし、鼻から抜ける山の香りがとても良い。
今まで食べたキノコと比べても、ダントツに美味い。

GAHUGAHU
GAGAHUN
GUROON

俺がキノコを食べたのが嬉しいのか、背茸子熊キノズリー達は小躍りするようにわちゃわちゃと動き回り声を上げる。
子熊が遊んでいるような光景は和んだが、それで終わることはなかった。

この後も、寝そうになると背茸子熊キノズリー達に纏わり付かれてキノコを差し出される。
受け取って食べると、踊りが始まり、食べないとめちゃくちゃ悲しそうな顔で見られる。
熊の表情が分かるのも、後で冷静になれば不思議なことなんだが、とりあえずキノコを食べ続けた。

そしてキノコを食べると、また不思議な踊りが始まるの無限ループ…

突然始まったキノコの宴は、朝日が昇り明るくなるまで続けられることになるのだった…

ーーーー
作者です。
今回は短めです。
キノコ食べたくなって書きました。
感想その他、時間があれば是非。
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