夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第1章

第9話 寝不足でも朝は来る

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異世界での2日目、眠い目をこすりながら、地球とは違った日の出を眺めていた。
ここでの朝日は、地球のような赤や黄色ではなく、絵の具のコバルトみたいな青みがかっている。
日の出直後は、辺り一面が海の中くらい青く染められ、ランタンやライトの周りだけが白く星の様に光る、随分と幻想的な風景になっていた。

他の太陽が顔を出すと、直ぐに昨日と同じ色彩のある世界が戻ってきたため、その青い世界はほんの短い時間だけしか続かなかったが、地球とは違うんだなと、不思議な感慨にふけることになった。

ファンタジー的で、地球では見たことの無い情景に、なんだか不思議な気分に浸っていた俺だったが、昨夜は、背茸子熊キノズリー達によるキノコの宴に巻き込まれることになり、結局のところ一睡もできない…

「ふぁ~…眠い…」

あくびと共に思わず言ってしまったが、あまり気を抜くとこのまま寝てしまいそうだ…

眠気の原因の一つに、背茸子熊キノズリー達に次々に差し出されていた、謎のめちゃうまキノコがある。

出されるままに夜通し食べてしまったからなのだが、不思議なことに食い過ぎによる胃もたれなんかはまるでなく、妙な満足感だけしか感じない。

肝心の背茸子熊キノズリー達はというと、朝日が昇る前に気がつくとどこかに帰って行ってしまっていたようで、今は周りに1頭も残っていない。

気がついた時は、「夢でも見ていたのか?」とも思ったが、テントの前に山のように積まれた謎キノコが、昨夜の事が夢ではないと教えてくれる…それにしても…

「眠い…」

これは、完全に寝不足だ…とりあえず謎の美味いキノコをストレージリングに収納してしまおうと立ち上がる…

「あ、おはようぼんちゃん。」

「んー…よいしょ、朝だねー!」

「zzzz…」

優子マメはテントに戻って寝ていたみたいで、キノコを収納していると、しろまとでっかちゃんを抱いたまま、スッキリした顔で外に出てきた。
しろまは一つ伸びをすると、優子マメの腕を登り、肩に座って元気に声を上げる。でっかちゃんはまだ寝ているみたいで、小さく寝息を立てていた。

「おはよう…俺は…ふぁ…眠いよ…」

欠伸をしながら優子マメに答えるが、正直頭が働かない…あ、キノコは数は相当あったけどすぐに収納し終わった。

夜に移動する事は、昨夜のように夜行性の何かがいるかもしれないし、万が一魔物モンスターに夜の視界が制限された状態で襲われたら、対処できるわけがないから避けるべきだろうな。

昨夜現れたのが、攻撃的じゃない背茸子熊キノズリー達だったのは、運が良かったとしか言えない…

今夜安心して眠れる場所を探さないとだけど、人の住む場所までは、どれだけ頑張って歩いても、今日中に着く距離じゃないからね…

どう…す…

「ぼんちゃ?」

「はっ!」

意識が飛びかけた…

「もしかして寝てないの?」

「あんなに熊が騒いでたんだぞ?眠れるか…ふぁ…」

「そう?」

優子マメに問われるが、背茸子熊キノズリー達があれだけ騒いでいて眠れる方が俺は不思議だよ…

いっそこのまま寝てしまうか?
いや、今日も太陽の出ている昼間に出来るだけ移動しておきたい…が…眠い…

ダメだ、思考が寝るほうに向かう。
とりあえず眠気を飛ばすために、川の水で顔を洗ってみよう。

「顔洗ってくる…」

「ん。気をつけてねー」

テントから川までは、ほんの数歩の距離なのに、この距離で何か起こすほうが難しい。
川縁でしゃがみ、袖を濡らさない様に川の水をすくう。

「冷た!」

川の水は想像以上に冷たく、手をつけるだけでも目が覚めたように感じたが、しっかりと目を覚ますため、一気に顔を洗う。
バシャバシャと顔を洗い、ストレージリングから出したタオルで水を拭うと、眠気が幾分か飛んだ。

「くぅ~!…良し。飯にするか。」

目が覚めたら、なんだか腹も減ってきた気がしてきたので、湿ったタオルをストレージリングに収納し、テントの前で寝起きの体をほぐしていた優子マメに声をかける。
ガスコンロを出して、その上に鉄の網を乗せる。

朝ご飯には、背茸子熊キノズリー達が残してくれたキノコを、網焼きにして食べようと思ったからだ。

適当に手で割いたキノコに塩を振り、網の上で炙り焼きにしていく。
生でも食べられることが分かっている為、少し焼け目がつく程度を目安に、箸で網の上を転がすように焼いていく。
キノコから出た水分が、網の下に落ちて湯気が上がると、これだけでも十分うまいことが、食べなくても匂いで分かる…

ここで駄目押しに、地球から持ち込んだ醤油を取り出し、焼けたキノコにほんの数滴…かけすぎない様に垂らしていく。

醤油の香ばしい香りが辺りに広がり、口の中に唾液が溜まっていく…

「もう食べていい?」
「オレも食べたい!」

優子マメ達が聞いてきたが、そんなの聞くまでもない。
出来立てを皿に乗せて渡してやると、すぐに口に放り込んで、優子マメ達はどちらも目を見開いて、悶える様にパタパタと手足をばたつかせて暴れている。
熱かっただろうか?

火傷しては大変だと思い、ストレージリングの中にある飲み物を出そうとしていると…

「「うまーーー!!」」

「ふえ?」

突然叫ばれたため、驚いて変な声を出してしまった。
なんだかよく分からないでいると、優子マメ達は網の上のキノコを片っ端からパクパクと食べ始める。

「ちょ!お前ら!」

慌てて止めに入るが、既に網の上のキノコは無くなっていた…

「これ凄いね!めちゃくちゃ美味しい!」

「もっと食べたい!」

「お前らな…」

ストレージリングの画面を閉じ、今にも小躍りしそうなくらいに興奮している優子マメ達を見る。
…まぁ、キノコは大量にあるし良いか…

それから暫くの間、どんどんキノコを焼いていった。
途中で俺も焼きキノコを食べて見たのだが、優子マメ達の反応で、美味いのは分かっていたにもかかわらず、一口目を口にした時は、某味の王様の様に叫びそうになってしまった。
ギリギリで声を出すのは我慢したが、その後のキノコ焼き速度は確実に上がっていたと思う。
焼いては食い、焼いては食われ、焼いては食い、焼いては食われ、と気がついた時には、途中で目を覚ましたでっかちゃんも含めて、全員結構な量を食べてしまっていた。

「キノコ美味しかったね。」

「ねー。」

「また肉なかった…」

優子マメ達も1体を除いて、昨日のレトルト非常食を食べていた時と違い、満足そうにしていた。
でっかちゃんも相当食べていたと思うけどね…
今度は肉も入れたキノコの炊き込みご飯を作っても良いかな。とか考えながら、簡単でもいいから今後も料理はしていこうと考えを強くする。

全員が焼きキノコを食べ終わり、テントやコンロなど、野営キャンプに使ったものを残さずストレージリングに収納し終えると、当初の目的地である集落に向かうべく、川沿いを南へと下っていく。

舗装された道ではないものの、歩くのに問題ないレベルの獣道のようなものが目的の方角に伸びていたため、サワサワと風に揺れる草の葉音を聞きながら、その道を進んでいった。
途中で腹が減ったらキノコを食べたり、歩き疲れて川に足をつけて休憩したりしていたが、それでもかなり快適に進むことができたと思う。

川沿いを歩く事数時間…遠くに1本、結構な大きさの木が生えているのが目に付いた。

太陽の位置を考えると、まだまだ日没までには余裕がありそうだけど、昨日のことを思い出すと、野営キャンプの準備は早めに始めた方がいい。
暗くなり始めてからは、本当にあっという間だったからな…

少し距離はありそうだけど、今日はあの木の所までにしておこうと優子マメに声をかけた。


ーーーー
作者です。
やっと二日目に入ったら、イベントもなく結構時間が経ってしまった感じです。
そんな日があってもいいと思います。
一応最初の目標にしていた、5万字に到達しました。

感想その他、時間があれば是非。
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感想 18

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