夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第1章

第10話 大きな木と意外な事実

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優子マメ、今日はあの木の辺りで休もう。」

「んー?木があるの?」

優子マメは、俺の指差す方をじっと見ているが、諦めたのか聞いてくる。
俺の方が目が良いことを忘れていた。

よくよく聞くと、こっちに来てからというもの、優子マメは周りがよく見えていなかったらしい。
なんでメガネかけないんだ?

「見えないならメガネすれば?」

「ん?度があってないから、かけても見えないよ。」

そう言って笑うが、見えないのは問題だろう…
人のいるところに着いたら、早めになんとかしないといけないな。

「とりあえず教える。この道沿い、ここをこのまま進むと、多分2時間くらいで着く場所に今言った木があるよ。
ここから見ても、他の木より明らかにデカイから、もう少し近づいたら優子マメにも見えるようになるかもしれないね。
で、その木の辺りなら、今日の野営キャンプ地にちょうど良いかなって思ったのさ。」

「ふーん、分かったー」

聞いていたのか微妙な返事を返す優子マメだったが、反対されたわけじゃないからいいか…

因みにだが、川を挟んだ対岸は深い森になっている。当然、たくさん木が生えているが、不思議なことに川を挟んだこちら側には、茂みのような低木や背の高いススキみたいな草くらいしか生えていない。
川を挟んだだけで、こんなにも植生が違うのは違和感があったけど、移動することを考えると、見通しが良いのはとても助かることだ。

(ナビさん、あの木の辺りで休もうと思うんだけど、問題ないかな?)

『回答提示。問題は無いと報告します。可能なら樹上に登ることを推奨します。』

(木に登れってことね。了解。)

ナビさんからのお墨付きも貰えた、少しは安心材料が増えた気がする。

それから2時間と少し…

何事もなく、目的の木の下に辿り着くことができたのだが、川向こうの木に比べても、一回り以上大きな木に、俺は少しだけ驚いていた。
そして、興奮しているしろまと、それを嗜めるでっかちゃんが話しているのが聞こえてきた。

「でっかいねー。上まで登っていいか?」

「ダメだよしろま、汚れるでしょ。」

「えー。大丈夫だよー!」

「ダメ、ちゃんとして。」

「うー…分かったよー」

コイツらは何なんだろうか…優子マメに懐いてるし、元がぬいぐるみだから無害そうではあるが…
まぁ元々、優子マメのぬいぐるみだったんだ、多分大丈夫だろう。

「話してるとこ何なんだが、今日は木の上で寝るつもりだから、みんなで登るぞ?」

「そうなの?ぼんさんも登るの?」

「そりゃな、昨日みたいに眠れないのは避けたいからな。」

肉体は若返ったけど、二徹は流石に精神的に辛い。
だから今日はゆっくり眠るため、ナビさんに言われた通り、木の上で過ごすことに決めていた。

「やった、木登りだ。マメ行くよー」

「ん?分かったー」

ボーッと木を見ていた優子マメは、足元のしろまを持ち上げて肩に乗せると、木の幹に飛び付くと、枝や節のような所に手を掛けてスルスルと登っていった。
意外と運動神経が良かった優子マメに、少し驚かされる。
地球にいた頃は、何も無いところで躓いたりするくらいだったのに…若返ったからだろうか?

「ぼんさん、私登れないから乗せてって。」

「お、おう。」

返事をすると、すぐにでっかちゃんが背中をよじ登ってきて、頭に乗った。
俺に登れるなら木登りも出来るんじゃ…とも思ったが、頭の上で落ち着いたみたいだし、重くもないからそのまま優子マメの後を追って木に登る。

中程まで登ると、誂えたように葉っぱや枝を避けてある程度広さの取れそうな場所があった。
そこにテントを置くため、パラロープを足場兼落下防止ネットとして使えるように蜘蛛の巣状に張っていく。
初めてやったため、出来上がった形は歪なものだったし、結構時間がかかってしまった…
まぁ、自分でやったからなのか、妙な満足感があるからいいんだけどね。

流石にネットの上で飛び跳ねたりはしなかったけど、そのくらいしても大丈夫な気はしている。
…しないけどね。

ネットの上に昨日使ったテントを出すと、偶然だけどテントの横幅が枝の間の距離と同じだった。
これならマットレスを出さなくても、寝るときに枝に当たることもないし、痛い思いをしなくて済みそうだ。
ネットの上にテントの真ん中が来るように置いてから、テントの端を太い枝にロープで動かないように固定する。

「よし。優子マメごは…あれ?」

気がつくと、優子マメが居なくなっていた。
少し設営に時間がかかったから、飽きてもっと高いところにでも登ったんだろうか?

優子マメー、おーい。」

「なーにー?」

声は下から聞こえてきた。
勝手に動かれると、何かあったのかと心配になるからやめて欲しい…

「そろそろ晩御飯にしよう。」

「分かったー、すぐ行くねー」

しろまを頭に乗せた優子マメは、さっきより素早く木を登ってきた。
地球にいた時は、木登りなんて…いや、昔はよく山で遊んでたって言っていた気がするから、俺と出会う前の小さい時にやってたのかもな…

「お待たせーご飯は?作る?」

「いや、昼に焼いたキノコがまだあるから、それにしよう。
でっかちゃんには、焼き鳥の缶詰出すから、それで我慢してね。」

「ん、いいよー」

適当な皿と、昼飯の時に焼いたキノコの残り、でっかちゃん用の焼き鳥缶をストレージリングから取り出し、落ちないようにテントの中に置いていく。
昨夜の熊からもらった謎のキノコは、お世辞抜きで美味いから、落としたりなんかしたらもったいない。

早めの晩御飯をパクパクと食べていると、ナビさんから話しかけられた。

『警戒情報。敵性体が接近しています。』

(またか、相手は分かる?)

『回答提示。種類不明。目視による確認が必要です。』

ふむ、また知らない魔物モンスターか…知らない相手だと対策が立てられないから面倒なんだけど、まだ2日目だから仕方がない…

今まで遭遇したことのある狼や蜘蛛なら、事前に接敵するのが分かっていれば覚悟もできるし今なら対策もある程度立てられる。
仮に追跡狼チェルフだとしたら、平地だとまだ対策らしい対策は無いけど、今みたいな木の上に自分が居る状況なら、登ってこれなそうだから何とかなると思う。
快速蜘蛛スピーダーだと多分登ってくるだろうけど、棒かなんかを用意して登ってくるところを叩けば、数が多くなければいける気がしている。

っと、考えるのは後にしよう。

今わかっているのは、正体不明の魔物モンスターが近づいているってことだけだからね。

ナビさんの能力でも、一度は目視しないと種類や数が分からないらしいし、ゲームみたいに気配だけで相手が分かると楽なんだけどそうもいかない。
ま、不意打ちにならないだけマシだと思おう。

(ナビさん、敵の方角は?)

『回答提示。南方向です。』

相手は分からないが、こちらに来るのは確実…
幸いなのは、今居る木を使えば、隠れてやり過ごすことも、気づかれる前に不意打ちすることも出来そうだってことかな。
俺は少しだけ考えを巡らせ、優子マメに声をかけた。

優子マメ、また魔物モンスターが来るみたいだ。」

「え?そうなの?どうしよ、逃げる?」

「大丈夫だから落ち着いてくれ。相手の数が分からないからなんとも言えないけど、1体なら川原で仕留めた蜘蛛みたいに、動きを封じて倒すことは出来る。
もし相手が複数でも、この木に登られなければやりようはあるから大丈夫。
慌てるのが一番ダメだから落ち着いて行動しよう。」

「う、うん…」

俺の言葉で落ち着いてくれたのか、優子マメは立ち上がりかけていた腰を下ろす。
因みにぬいぐるみ達は、食事が終わると同時にテントに入って早々に寝てしまっていたため、この話は聞いていない。
聞いていても騒ぐだけだろうし、寝ていてくれた方が都合が良いかな。

「じゃとりあえずこれからの作戦を言うぞ?…」

俺の建てた作戦は、現状では一番生き残る確率が高いと判断したものなのだが…

さて…うまくいってくれるかどうかってところだな…

ーーーー
作者です。
ツリーハウスが好きです。
ドタバタになっていますが、宜しくお願いします。
感想その他、お時間あれば是非。
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