夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第1章

第31話 陰鬱な思考

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目を開けると、優子マメの顔が目の前にあった。

「ぼん!良かった!起きた!」

突然泣かれてしまい、状況がよく分からない…俺は一体何を…

「やっと目が覚めたか。」

「…誰…だ…?」

優子マメの横から、キャナタさんが顔を覗かせる。

「キャナタさん…?俺は…なにを…」

「まぁ、あれだ、落ち着いたら話を聞いてやるから、今はゆっくりするといい。あんまり嫁さんを心配させちゃいかんしな。」

キャナタさんは、そう言って離れていった。

優子マメ…俺は…どうしてここに…」

胸の上で泣いている優子マメに聞くが、まともに話せる状態じゃないようで、しゃっくりあげて泣いてしまっている。

弱った…頭も痛いし、よく分からん…
優子マメが泣き止んだら聞いてみるか…


それから結構な時間が経ち、ようやく落ち着いた優子マメに話を聞いた。

「…俺が…か?」

「そう、私も見たわけじゃなくてキャナタさんに聞いただけだけどね。ノノーキルさんに魔法使って、その後叫んで倒れちゃったって…」

俺が…倒れた?

話を聞いても、あまりピンときていなかった。
こんな時はナビさんに聞いた方がいいな。

(ナビさん、俺が倒れた原因は?)

『回答提示。急性ストレス障害ASDの初期症状に近い状態にあると判断します。
そのため、原因となったとマスターが判断した村人ノノーキルに対して、嫌悪感と共に強い排斥感を持ってしまっている状況です。』

急性ストレス障害ASD?何だ?俺は病気なのか?
ノノーキルに対する嫌悪感って…そりゃこんなことになったのはアイツのせいだ、ムカつくのは当たり前じゃないのか?
クソ…なんだって俺がこんな目に…全部ノノーキルのせいだ…あいつ…

「ぼん!また怖い顔になってる!ダメだよ!」

「…そんな…ことは…」

「ダメ!それは、ぼんがぼんじゃなくなるやつだよ!こっち見て!」

優子マメは、そう言って俺の顔を手で抑えた。
泣きそうな顔で俺を見ている優子マメは、そのままそっと唇を重ねてくる。
暖かいキスだった…

すぐに離れた優子マメは、また俺に抱きついてきた。

そういえば、優子マメが目覚めてから今まで、まだキスすらしていなかった…
それだけ余裕が無かったんだな…

「なあ優子マメ…」

「ん?なに?」

「俺さ、まだまだ余裕だと思ってたんだ…俺は出来る、俺ならやれるって…
でも、無理だった…ノノーキルに言われてさ、グリムって人を助けに行って…大怪我をしていた彼を見つけたんだ…俺が見つけた時には虫の息で、正直助からないと思った…それぐらいの怪我だったんだ…
そんな彼が言うんだ…娘を助けてくれって…自分が死にそうなのにだぜ?
俺はそれを言い訳にして彼を見捨てた…
そう…俺は見捨てたんだよ優子マメ…」

優子マメは、黙って俺の話を聞いてくれる…
今はそれがありがたかった…

「俺は、彼を見捨てて、彼の娘を助けに向かった…ナビさんが教えてくれるから、見つけるのは簡単だったよ…
見つけた時、彼女は豚男ピッグマン達に捕まっていたんだ…
ここでも俺は迷ったんだ…すぐに助けに行けなかった…
自分が怪我するのが怖かったんだ…だから彼女が襲われるまで、俺が安全になるまで待ってしまった…
その結果、彼女は豚男ピッグマンに襲われ、俺が見捨てたことで、父親まで亡くしてしまった…
全部俺のせいだ…俺がうまくやれなかったから…俺が…俺は…」

言葉が続かなかった…頭の中がぐちゃぐちゃで、ただただ泣いた…

優子マメには、子供をあやすように髪を撫でられた…
そして、小さな声で大丈夫と何度も言われた…それだけなのに、なんだかとても楽になった気がした…
自分で考えてた以上に、俺は無理してたみたいで、そのまま意識が途切れてしまった。

どのくらい時間が経ったのか分からないが、目を覚ますと部屋には誰も居なくなっていた。
部屋の中を見渡すも、優子マメだけでなく、ぬいぐるみ達の姿も見当たらない。

食事にでも行ったのだろうか…

俺はベッドから起き上がり、扉を開けて外に出る…
階下の酒場は、通常通り営業しているようで、大勢の話し声が聞こえてきていた。

階段を降りて行くと、階段下にロールさんがいた。
降りてきた俺に気がつくと、静かにカウンターの端に案内してくれた。

「マメさんを呼んできますね。ここなら他の人に気付かれることも無いですし、ここで待っていてください。」

ロールさんに言われ、カウンターに座っていると、キャナタさんがカウンターの中から声をかけてくる。

「随分顔色が戻ったみたいだな。少しは元気になったみたいで安心したぞ。」

「えぇ…おかげさまで…すみません、ご迷惑を…」

「気にするな。ほら、マメも来たぞ、食欲はあるか?」

キャナタさんは気にするなと言うが、色々迷惑をかけてしまったようだし気にするよ…

「…いえ…あまり…」

「そうか…分かった、まぁ寝込んでいるよりはましだ、少しだけでもいいから腹に入れておけ。今持って来てやる。」

そう言って、キャナタさんは奥に入ってしまう。

「起きたね。うん元気そう。」

横に座った優子マメは、そう言って微笑む。

「ぼん、チョコ食うか?」

「肉食べる?」

ぬいぐるみ達にも、また気を遣わせてしまった…

「そうだぼん、ちょっと目を閉じて。」

「ん?なんだ?」

「いいから、少しの間だけ。ね。」

優子マメは、そう言って俺の目を塞いだ。



ーーーー
作者です。
どんどん鬱になっていきますね…
感想その他、お時間あれば是非。
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