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第2章
第32話 俺、何かした?
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「「「「臭っ!」」」」
奴隷馬車を幌馬車から離れたところに出すと、案の定ものすごい臭いが周囲に漂い始める。
俺は急いで離れるように指示するが、少し遅かったようだ。
「何これ!ぼん、鼻取れるよ!?」
「ぼんさーん…無理ー…」
「兄兄さん…ごめんなさい!」
ぬいぐるみ達には相当辛かったらしく、臭いから避けるように幌馬車へと逃げ込んで行ってしまった。
優子にいたっては臭いのが分かっていたからなのか、最初から外に出てくることはなく、幌馬車から顔だけ出して覗いている状態だしな。
俺だって臭いのが分かっていたから、覚悟はしていたからそこまで慌てないだけで…馬車を出した俺が一番キツイんだぞ?
「強き者よ…提案が…あるのだが…」
「…提案?」
ガルも臭いのか、鼻を押さえながら俺に聞いてくる。
獣人の嗅覚がどれほどかは知らないけど、狼と同じくらいだとしたら、奴隷馬車に乗ってたときは、相当きつかったろうね…
「うむ…エルフを…連れてきても…良いか?」
エルフを使っ…そうか、あの雨を降らせて馬車を洗うつもりか。
「解呪。これで毒液は消えたから、急いで連れてきてくれ。」
「心得た…」
獣人の身体能力は本当に凄い、ガルは頭を下げた次の瞬間には目の前から消えてしまっていた。
そんな身体能力を持っている彼らが、どうして迫害されるような立場になっているのか分からないな…
「持ってきた…」
ガルと入れ替わるように、ギルが狼獣人の大きな手には不釣り合いな程小さな笛を持って戻ってきた。
見た目は犬笛?ホイッスル?とにかく小さな笛なのだが、これを吹けば逃げた馬が戻ってくるらしい…
「ありがとう、とりあえず持っていてくれるか?ガルが戻ってきてから使うから。」
「心得た…」
笛はギルに持っていてもらい、ガルが戻ってくるのを待つことにした。
奴隷馬車からは離れて、幌馬車の所に戻ってきたけどね…
「待たせた…」
戻ってきたガルは、手に持っていたエルフの簀巻きを、少し乱暴に地面に下ろすと、掌をペロペロと舐め始めてしまう。
「兄者…大丈夫か?」
「少し…棘が…刺さった…問題は…ない…」
エルフを簀巻きにしている毒蔦の棘が、掌に刺さって怪我をしてしまったらしい。
彼らの手は、人のものと違い完全に獣のものなので、肉球に棘が刺さったのが相当痛いらしい…
「怪我?ほい、ヒール。」
幌馬車の中から顔を出した優子が、ガルの様子を見て回復魔法を使用した。
ガルの体が淡く光り出し、傷口が逆再生されるように回復していく。
今回はいいけど、あまり外で使わないように言っておかないといけないな…
ガル達も驚いたように口を開けて固まっているし、回復魔法の使える人間は、結構貴重らしいから、変な奴に目をつけられたら困るからね。
俺はエルフの元に近づき、顔を近づけて言葉をかける。
「今から拘束を解く…だが余計なことをしたら…分かっているよな?」
出来るだけ優しく言ったつもりだったんだが、エルフは目を見開いて小さく震えているように見えた。
失礼な奴だ…
「ガル、ギル。これからこいつの拘束を解くから、余計なことをしそうになったら頼むぞ?」
「…う、うむ…」
「…心得…た…」
固まっているガル達の肩を叩こうと思ったけど、身長差的に届く気がしなかったから腕を叩いて声をかける。
返事をしたのを確認してから、地面に転がる簀巻きエルフから、毒蔦だけを取り除くように収納する。
…と、自由になったエルフは、棘で全身傷だらけになっていたが、ゴロゴロ転がって俺から距離を取ろうとした。
「「グルル…」」
ガルとギルが、離れようとするエルフの後ろに回り込み、小さく唸り声を上げる。
彼らの動き出しとか、俺の目にはまったく見えなかったんだが…
まあいいか…
「エルフの人、あんたに仕事を頼みたいから動けるようにしたんだ…勝手に動いていいなんて言ったか?」
恐怖からか、完全に固まってしまったエルフに声をかけるが、彼女は何も答えることはなかった。
「そんなに怖がらなくても、余計なことをしなければ、ガル達は何もしない。」
確かにガル達、狼獣人の唸り声は向けられたら怖いだろうが、森で暮らしていたら狼型の魔物もいるだろうし、唸り声を上げられたぐらいでそこまで怖がることか?
「ま、いいや…あんたには、やって欲しい事があるんだが、聞いてもらえると嬉しい…え?」
何をして欲しいかも言ってないのに、彼女は壊れた機械のように首を縦に振り始めてしまう。
少し怖い…
「えっと…さっきあんたらがやった雨の魔法で、あの馬車を綺麗にして欲しいだけなんだが…」
そこで、エルフがバッと立ち上がり、馬車に向かって手をかざして詠唱を始めるので、その手を掴んで止めさせる。
「ちょ!また濡れちまうだろうが!準備する間くらい待て…よ?」
そこで、彼女の視線が、ガル達じゃなく俺に向いていることに気がついた。
…あれ?もしかして俺が怖がられてるのか?
奴隷馬車を幌馬車から離れたところに出すと、案の定ものすごい臭いが周囲に漂い始める。
俺は急いで離れるように指示するが、少し遅かったようだ。
「何これ!ぼん、鼻取れるよ!?」
「ぼんさーん…無理ー…」
「兄兄さん…ごめんなさい!」
ぬいぐるみ達には相当辛かったらしく、臭いから避けるように幌馬車へと逃げ込んで行ってしまった。
優子にいたっては臭いのが分かっていたからなのか、最初から外に出てくることはなく、幌馬車から顔だけ出して覗いている状態だしな。
俺だって臭いのが分かっていたから、覚悟はしていたからそこまで慌てないだけで…馬車を出した俺が一番キツイんだぞ?
「強き者よ…提案が…あるのだが…」
「…提案?」
ガルも臭いのか、鼻を押さえながら俺に聞いてくる。
獣人の嗅覚がどれほどかは知らないけど、狼と同じくらいだとしたら、奴隷馬車に乗ってたときは、相当きつかったろうね…
「うむ…エルフを…連れてきても…良いか?」
エルフを使っ…そうか、あの雨を降らせて馬車を洗うつもりか。
「解呪。これで毒液は消えたから、急いで連れてきてくれ。」
「心得た…」
獣人の身体能力は本当に凄い、ガルは頭を下げた次の瞬間には目の前から消えてしまっていた。
そんな身体能力を持っている彼らが、どうして迫害されるような立場になっているのか分からないな…
「持ってきた…」
ガルと入れ替わるように、ギルが狼獣人の大きな手には不釣り合いな程小さな笛を持って戻ってきた。
見た目は犬笛?ホイッスル?とにかく小さな笛なのだが、これを吹けば逃げた馬が戻ってくるらしい…
「ありがとう、とりあえず持っていてくれるか?ガルが戻ってきてから使うから。」
「心得た…」
笛はギルに持っていてもらい、ガルが戻ってくるのを待つことにした。
奴隷馬車からは離れて、幌馬車の所に戻ってきたけどね…
「待たせた…」
戻ってきたガルは、手に持っていたエルフの簀巻きを、少し乱暴に地面に下ろすと、掌をペロペロと舐め始めてしまう。
「兄者…大丈夫か?」
「少し…棘が…刺さった…問題は…ない…」
エルフを簀巻きにしている毒蔦の棘が、掌に刺さって怪我をしてしまったらしい。
彼らの手は、人のものと違い完全に獣のものなので、肉球に棘が刺さったのが相当痛いらしい…
「怪我?ほい、ヒール。」
幌馬車の中から顔を出した優子が、ガルの様子を見て回復魔法を使用した。
ガルの体が淡く光り出し、傷口が逆再生されるように回復していく。
今回はいいけど、あまり外で使わないように言っておかないといけないな…
ガル達も驚いたように口を開けて固まっているし、回復魔法の使える人間は、結構貴重らしいから、変な奴に目をつけられたら困るからね。
俺はエルフの元に近づき、顔を近づけて言葉をかける。
「今から拘束を解く…だが余計なことをしたら…分かっているよな?」
出来るだけ優しく言ったつもりだったんだが、エルフは目を見開いて小さく震えているように見えた。
失礼な奴だ…
「ガル、ギル。これからこいつの拘束を解くから、余計なことをしそうになったら頼むぞ?」
「…う、うむ…」
「…心得…た…」
固まっているガル達の肩を叩こうと思ったけど、身長差的に届く気がしなかったから腕を叩いて声をかける。
返事をしたのを確認してから、地面に転がる簀巻きエルフから、毒蔦だけを取り除くように収納する。
…と、自由になったエルフは、棘で全身傷だらけになっていたが、ゴロゴロ転がって俺から距離を取ろうとした。
「「グルル…」」
ガルとギルが、離れようとするエルフの後ろに回り込み、小さく唸り声を上げる。
彼らの動き出しとか、俺の目にはまったく見えなかったんだが…
まあいいか…
「エルフの人、あんたに仕事を頼みたいから動けるようにしたんだ…勝手に動いていいなんて言ったか?」
恐怖からか、完全に固まってしまったエルフに声をかけるが、彼女は何も答えることはなかった。
「そんなに怖がらなくても、余計なことをしなければ、ガル達は何もしない。」
確かにガル達、狼獣人の唸り声は向けられたら怖いだろうが、森で暮らしていたら狼型の魔物もいるだろうし、唸り声を上げられたぐらいでそこまで怖がることか?
「ま、いいや…あんたには、やって欲しい事があるんだが、聞いてもらえると嬉しい…え?」
何をして欲しいかも言ってないのに、彼女は壊れた機械のように首を縦に振り始めてしまう。
少し怖い…
「えっと…さっきあんたらがやった雨の魔法で、あの馬車を綺麗にして欲しいだけなんだが…」
そこで、エルフがバッと立ち上がり、馬車に向かって手をかざして詠唱を始めるので、その手を掴んで止めさせる。
「ちょ!また濡れちまうだろうが!準備する間くらい待て…よ?」
そこで、彼女の視線が、ガル達じゃなく俺に向いていることに気がついた。
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