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それから三日間、親には「中学校行こうとすると、ストレスで腹痛がする」と言い訳して、自室に引きこもりながらプレイするうちに風音が気づいたのは、オンラインゲームに出没するモンスターは、今までと全く変わらない程度の強さだし、モンスターを倒した際にドロップするアイテムも今までと全く同じなのだ。
(おかしい。まるっきり、今までと同じオンラインゲームだ。いったい、何が違うのやら?)
風音には訳がわからなかった。だが、綾音の何気ない一言で、ふと気がついた。
「ねえ、ウチがたまたま、オンラインゲームでチャットしていて気づいたんだけどさ、あの爺の声が聞こえたプレイヤーって、ウチらだけじゃないみたいよ。ほら、ウチが滞在している『パラムシル』の街では、あの爺の声を聞いたって言うプレイヤーが何人かいるわ」
風音は急いでパラムシルの街へ向かった。パラムシルの街は、ゲーム攻略に興味のない綾音が立ち寄るような街なので、たどり着くのは大して難しい場所ではない。弱小モンスターの出没する街道を走っていれば、いずれはたどり着く街だ。風音は、今のレベルでは弱すぎて経験値稼ぎにもならない弱小モンスターを倒しながら、パラムシルの街へ向かう。
パラムシルの街に着いた頃、外は既に夕方だった。風音は情報収集のために、プレイヤーの集まる武器屋や防具屋や魔道具屋をのぞいてみる。そこには、いかにもレベル5から10程度の駆け出しの戦士職や攻撃魔法職が、大勢たむろしては、チャットでなにごとか話し合っている。レベル40の風音が話しかけると、駆け出しのプレイヤーたちは少し驚いた様子だった。
『カザネはレベル40じゃないか。どうして、こんな初期のレベルの街に来たんだい?』
『いや、アヤネから聞いたんだけどさ。この中に、アライドとか名乗る爺の声を聞いたやつはいない? あたしも爺の声を聞いたんだけど、レベル40の集まる街には、他にそういうやつがいなくてさ。もし、この中にいたら、情報とか交換したいと思って』
『ああ、それなら、俺が聞いたことあるぜ』
戦士職の男がチャットで話しかけてくる。レベル7だ。
『僕も聞いた』
『私も』
レベル9の回復魔法職と、レベル8の付与術師が話しかけてくる。風音が三人と話してみると、どうやら三人とも、風音とほぼ同日同時刻にお爺さんの声を聞いたそうだ。戦士職は『クラーシン』、回復魔法職は『ヨッフェ』、付与術師は『ザスーリッチ』というハンドルネームだ。風音とレベル差がありすぎる以上、四人でパーティーを組んでも経験値が入りにくくなるので、ひとまず駆け出しの三人でパーティーを組んでもらい、風音は補助に回ることにした。
『それで、次はどうする、カザネ? 俺が聞いた話だと、魔王討伐の前段階としてのクエストがあるそうなんだが、今の俺らのレベルじゃ低すぎて、クエストを受けられないんだ。でも、レベル40のカザネなら、クエストを受けられるはず。まずはクエストを受けてきてほしい。その間に、俺ら三人はできるだけモンスターを狩りまくって、レベルを上げておくから』
『わかった。でも、クエストの間は、あたしたちは離れ離れになってしまうから、いつでも連絡とれるようにフレンド登録しておこう』
風音は三人とフレンド登録を済ませる。これで、一般のチャットでは会話できないほどの遠隔地にいても、いつでもチャットできるようになった。準備の整った風音は、クエストを受けるために、パラムシルの街外れにある『ラウスの神殿』に向かう。ラウスの神殿は、ちょっとした西欧の教会のような建物で、入口の扉を開けると、黒い修道服を着た金髪の聖女が迎えてくれた。
(おかしい。まるっきり、今までと同じオンラインゲームだ。いったい、何が違うのやら?)
風音には訳がわからなかった。だが、綾音の何気ない一言で、ふと気がついた。
「ねえ、ウチがたまたま、オンラインゲームでチャットしていて気づいたんだけどさ、あの爺の声が聞こえたプレイヤーって、ウチらだけじゃないみたいよ。ほら、ウチが滞在している『パラムシル』の街では、あの爺の声を聞いたって言うプレイヤーが何人かいるわ」
風音は急いでパラムシルの街へ向かった。パラムシルの街は、ゲーム攻略に興味のない綾音が立ち寄るような街なので、たどり着くのは大して難しい場所ではない。弱小モンスターの出没する街道を走っていれば、いずれはたどり着く街だ。風音は、今のレベルでは弱すぎて経験値稼ぎにもならない弱小モンスターを倒しながら、パラムシルの街へ向かう。
パラムシルの街に着いた頃、外は既に夕方だった。風音は情報収集のために、プレイヤーの集まる武器屋や防具屋や魔道具屋をのぞいてみる。そこには、いかにもレベル5から10程度の駆け出しの戦士職や攻撃魔法職が、大勢たむろしては、チャットでなにごとか話し合っている。レベル40の風音が話しかけると、駆け出しのプレイヤーたちは少し驚いた様子だった。
『カザネはレベル40じゃないか。どうして、こんな初期のレベルの街に来たんだい?』
『いや、アヤネから聞いたんだけどさ。この中に、アライドとか名乗る爺の声を聞いたやつはいない? あたしも爺の声を聞いたんだけど、レベル40の集まる街には、他にそういうやつがいなくてさ。もし、この中にいたら、情報とか交換したいと思って』
『ああ、それなら、俺が聞いたことあるぜ』
戦士職の男がチャットで話しかけてくる。レベル7だ。
『僕も聞いた』
『私も』
レベル9の回復魔法職と、レベル8の付与術師が話しかけてくる。風音が三人と話してみると、どうやら三人とも、風音とほぼ同日同時刻にお爺さんの声を聞いたそうだ。戦士職は『クラーシン』、回復魔法職は『ヨッフェ』、付与術師は『ザスーリッチ』というハンドルネームだ。風音とレベル差がありすぎる以上、四人でパーティーを組んでも経験値が入りにくくなるので、ひとまず駆け出しの三人でパーティーを組んでもらい、風音は補助に回ることにした。
『それで、次はどうする、カザネ? 俺が聞いた話だと、魔王討伐の前段階としてのクエストがあるそうなんだが、今の俺らのレベルじゃ低すぎて、クエストを受けられないんだ。でも、レベル40のカザネなら、クエストを受けられるはず。まずはクエストを受けてきてほしい。その間に、俺ら三人はできるだけモンスターを狩りまくって、レベルを上げておくから』
『わかった。でも、クエストの間は、あたしたちは離れ離れになってしまうから、いつでも連絡とれるようにフレンド登録しておこう』
風音は三人とフレンド登録を済ませる。これで、一般のチャットでは会話できないほどの遠隔地にいても、いつでもチャットできるようになった。準備の整った風音は、クエストを受けるために、パラムシルの街外れにある『ラウスの神殿』に向かう。ラウスの神殿は、ちょっとした西欧の教会のような建物で、入口の扉を開けると、黒い修道服を着た金髪の聖女が迎えてくれた。
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