君に恋したあの頃の夏

王太白

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「チー!」というかけ声とともに、牌がカカッと触れ合う音が、広大な空間に響き渡る。ここは小学生麻雀大会の会場である、私立天台小学校の講堂。小学校に麻雀部があるために、今大会の会場に選ばれたのだ。小学生たちは四校ごとに一卓にわけられ、それぞれ25000点から始めて、最終的に最高点になった者が勝ち抜ける方式だ。
 この大会に参加している女の子が、危なげなく初戦を突破した。彼女の名前は秋月悠里。私立天台小学校の五年生で、よく家族と麻雀を打つ。
 そして迎えた二回戦。彼女の場は東!と親!
「私の配牌は! うん! 悪くない!」と思って、思わずニヤリと笑みがこぼれる。龍が昇天するような勢いのまま、一筒を切ると、南家から「立直」と先制立直をかけられて、安牌も何もない状況で、私が打った牌は、二筒! すると南家が「ロン! 立直、一発、タンヤオ、平和、三色、ドラ5、12000」と高い手で和了ってきたの。今度は南家の子が、してやったりと不敵に笑う番だ。これで、私の点棒は45000から33000点になり、和了った南家の点数は37000点とトップ。でも、まだ逆転できる範囲内にはとどめた! 私はまだ余裕の笑みを浮かべている。ここから巻き返し……と思った矢先に下家がツモ和了り、そして、私も負けじと「ロン! タンヤオ、三色、ドラ3」の3900点を下家から和了るが、南家が、「ツモ! 嶺上開花、ドラ2、4000オール」で和了る。
 私は内心、かなり焦っていた。そして、ついに東四局、オーラス、ここで勝てれば三回戦。
(私の配牌は、うん! 悪くないけど、同じ牌来すぎでしょ! まぁ、最悪カンできるけど、嶺上牌引けなかったらまずい!)
 東四局が始まり、三人が捨てた後、私が「カン!」と言って山上から一枚引いてくる。そして、「ツモ! 嶺上開花! タンヤオ三色ドラ3! 70符の二翻は3900オール!」で、二回戦も私のトップで終了した。私はホッと胸をなでおろす。
 そして、三回戦、準決勝も順調に勝ち進み、いよいよ決勝戦! これで勝てれば優勝できる。緊張で胸が高鳴るのを感じる。私は対戦卓に向かい、場所決めを先に済ませる。そして、対戦相手が次々と入ってきて、私は「宜しくお願いします!」と言って、席に座る。
 決勝戦、東一局、私に、とてつもなくいい手牌が入ってきて、私は「立直!」とダブル立直を掛けた。すると!「とある男の子が「ポン!」と鳴いてきて、一発を消してきたの。次に私が打ったのは四筒。すると、またさっき鳴いたばかりの男の子が、「カン!」と言って、嶺上牌を引いた瞬間、「ツモ! 嶺上開花! ドラ6、18000点」と高い手で和了ってきた。私には、龍に虎が牙をむき、かみついたように感じられた。
 その後もその男の子のペースが落ちることなく早くもオーラスに入った。
「これで、何連続和了よ! そろそろおとなしくしてもらうわよ! 立直」と四巡目に入り、ようやく立直できる手牌になり立直をかけた。私の手は三倍満も狙える手牌! 役でいうと国士無双かな! 私の中の龍がうずく。この手、絶対にものにしてみせる。
 そして、下家が、当たり牌である白を出してくれて、「ろ、ロン! 国士無双! 48000!」と言って900まで下げられた点数を48900点まで戻すことができた。その男の子の点数は48700点! 私の中の龍が勝どきをあげる。「か、勝った! ゆ、優勝だー」と喜んでいると、下家の人が「いやー、まさか国士無双の手で和了られるとはね、負けたよ! でも、五連続和了した男の子、あれ、僕の弟なんだよね! ま、何はともあれ、優勝おめでとう! またやろうね」と言ってくれた。
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