140 / 300
第2章 彼女の話は通じない
即時の転換 4
しおりを挟む
ザイードは、キャスの表情を見て、少し安心している。
同時に、わずかばかり寂しさも感じていた。
(キャスの、あのような顔は、初めて見る。よほど信頼しておるのだな)
同胞なのだから、当然だ。
ザイードにしても、種の異なる「人間」より魔物といるほうが落ち着く。
さらに、同じ魔物であっても、ガリダの民といるのが、最も気が楽だった。
キャスが同胞に気を許すのは、ごく自然なことなのだ。
「ロキティスは壁を越えて、魔物の国に来ようとしてるんだと思う。どこまで準備できてるのか、それがわからないんだけどね」
キャスは無意識に魔力を使っている。
そのため、キャスの言葉は理解できた。
アイシャは人語なので、どう返答しているのかは不明だ。
とはいえ、表情が硬くなっているので、おそらく良い感情をいだいてはいない。
「わからない。でも、アイシャには……わかるんじゃない……?」
アイシャの顔つきが、ますます暗くなった。
ロキティスという「壁越え」の首謀者は、碌な奴ではないのだろう。
魔物の国に来て、なにをするつもりなのか。
ある程度は、予測がついている。
(壁ができる前と同じく、我らの国を蹂躙しようとしておるのだ)
略奪と殺戮。
攫われた魔物は、酷い目に合わされるに違いない。
壁ができた際に「解放」された魔物は、攫われた数に対し、ごくわずかだった。
その時ですら、なぜ人が魔物を「解放」したのかは、わからなかったのだ。
次に攫われれば「解放」など有り得ない。
解放する気があるのなら、はなから攫ったりしないだろう。
(あの壁は人を聖魔から守るためのものだと、キャスは言うておったが、果たして本当に、そうであろうか)
純血種の「人間」は、壁を越えられない。
これはおそらく「血」で判断されている。
魔物や聖魔の血が混ざっていると「人」とはみなされないのだろう。
そのため、キャスやシャノンのような中間種は壁を越えられる。
そして、純血種の「魔物」と「聖魔」も、壁を越えられない。
こちらはたぶん「魔力」により判定されているのではなかろうか。
中間種の持つ中途半端なものではなく、純血種のみが持つ「混じりのない魔力」だ。
(質の違い、みたいなものであろうか……確かに老体らは解放されて以来、人の国に入れぬようになったと言うておった……聖魔は、そもそも魔力を抑制しようなぞという考えがない)
内と外との違いはあるが、人間にとっても魔物にとっても「利」があった。
壁により、人は聖魔から守られ、魔物は人から守られている。
損をしているのは、自ら魔力を抑制するとの概念がない聖魔だけだ。
実際、ザイードは完璧な魔力抑制をすることで壁を抜けている。
(おそらく、壁を造った者は人も魔物も守ろうとしたのだ。それゆえ、魔物は解放されたのではなかろうか……)
魔物の解放を条件として壁が造られたのだとすれば、納得できる。
さらに、ザイードは気づいた。
(壁を造った者は、我らの国が脅かされたことに深い責を感じておったのだろう。あの者たちは、先ほど、余に詫びておったという)
つまり、この家にいるキャスの同胞たちは、壁を造った者の流れにある。
少なくとも、自らの同胞が招いた結果だと認識しているのだ。
これから対峙しようとしている「人間」たちとは、明らかに種類が違う。
(キャスは……この種類の人間の長であったか)
それは、3人の行動から簡単に推測ができた。
しかも、魔物の国で言う取りまとめ的な役割の「長」ではなく、まさしく三角の最も上にいる「長」だ。
王族だの貴族だのというのは、正直、よくわからない。
が、魔物にいくつかの種族がいるように、人にも「種類」があり、そのひとつをキャスは背負っている。
人と対峙するにしても、自らが背負っている「命」を犠牲にできるはずがない。
このまま、キャスの協力を肯としていいのか、悩む。
キャスがいようといまいと、その「ロキティス」という者は来るのだ。
キャスは、自らの存在が魔物の国を巻き込んだ、と言い続けていた。
だが、それだって、ザイードが、キャスを助けたことから始まっている。
あの時のキャスは、死にたがっていたのだから。
今も、心の裡では、その思いをいだいていると、わかっていた。
キャスは、喪った命を生かすために、自らの命を繋いでいるに過ぎない。
目の前には、やるべきこともある。
(そなたは、そなた自身のために生きようとはせぬのだな)
アイシャと真剣な表情で話しているキャスを見て、また胸が痛んだ。
キャスとは関わりなく人が来るとわかっているのは、ザイードだけではない。
キャスも、わかっている。
今となっては、自分がキャスを巻き込んだのだと、ザイードは感じていた。
(この者らと、ともに逃げるのが、キャスにとって……)
生きる目的と成り得るのではないか。
腕輪のはめられた自分の手を見つめる。
何度か、キャスと繋いだ手だった。
ぬくもりが伝わり合っていると感じたことを覚えている。
ザイードは、それで安心できたのだ。
まだキャスは、自分と一緒にいてくれるのだと。
助けた時から、キャスは「ガリダの民」だった。
けれど、人の国に戻るとしたキャスに同行すると決めた時から、ザイードの中に不安が生じ始めている。
人の国には、キャス本来の「暮らし」があるのだ。
魔物の国には帰らないと言われても、ザイードには引き留めるすべがなかった。
だから、独りで帰ることになる可能性を考えてしまう。
この手が、キャスの、あの小さな手を握る機会は訪れないのかもしれない。
当然、魔物の国は苦戦することになる。
だとしても、選択はキャス自身に委ねるべきだと考えていた。
ここで手に入れられた情報だけでも、十分、役に立つはずだ。
キャスが残りたいと言うのなら、無理強いはできない。
(キャスがおらぬようになるのは、寂しい……とてもとても寂しいことよな……)
思って、溜め息をついた時だった。
扉が、乱暴に開け放たれる。
入ってきたのは、アイシャの祖父と父だという男2人。
いくつかの大きな袋を持ち込んでいた。
老いた男のほうが、なにやら早口でまくし立てている。
もう1人の男も焦っているようだ。
アイシャも顔色を変えていた。
「敵に露見したのだな」
「そうです! でも、早過ぎる……っ……」
「あやつの仕業だの」
「あやつって……シャノン? そうか! なんで気づかなかったんだろ! 私の中にも装置が埋め込まれてたのに……っ……シャノンのは通信具だったんだ!」
シャノンの身に着けていたものは、ひと通り確認をしたが、武器のようなものは持っていなかった。
体のあちこちに傷が残っていたと聞いてはいたが、人が魔物を虐げるのは、魔物からすれば「当然」であり、驚きもしない。
シャノンが「逃げて来た」のも道理だと、納得さえしていた。
「とにかく、すぐに逃げないと……ザイード、壁に向かいましょう!」
「荷は、余が持つ」
「私より、そっちのほうが大事ですからね! 絶対に持ち帰ってください!」
でなければ、戻ってきた意味がなくなる。
キャスは、そう言いたいのだ。
「たった4ヶ月で戻って来て……それで、今度は、1日も経たずに、出発しなきゃならなくなるなんてね。けど、直前の情報まであるのは大きい。それに、ラーザの装備品があれば、心強いしさ。みんな、ありがとう。ゆっくり話せなくて、ごめん」
ザイードは、男2人が持ってきた大きな袋を、肩に2つずつ引っ掛ける。
普段、魔獣を背負ってもいるので、これくらいは、どうということもない。
「動いているのはリュドサイオの国境警備と近衛隊っ?! アトゥリノじゃないなんて……そんな……囲まれるのも時間の問題?……あなたたちは、どうする気? 討ち死にとか、絶対に許さないからね!」
3人が、口々に、なにかを言っている。
焦りを口調に出していたキャスだが、3人の言葉に、少しは落ち着いたらしい。
「……わかった。地下に潜ろうがどうしようが、生き延びてくれればいいから……こっちのことは気にしないで、自分たちが生き残ることだけを考えるんだよ」
アイシャは、心残りなのだろう。
瞳が揺らいでいる。
きっと、キャスを守り、無事に壁の外へと送り出したいのだ。
とはいえ、それをキャスが許すとは思えなかった。
「行きましょう、ザイード」
「しかし、元の場所から壁を越えるのは、危険であろうよ」
「リュドサイオが動いてるんなら、待ち伏せされてるかもしれませんね」
老齢の男が、キャスの手を取って跪き、なにかを言う。
「でも、それじゃあ、あなたたちが……ずっと、ここで暮らしてきたんでしょ?」
もう1人の男も同じく跪いて、キャスに語りかけていた。
時間がない中、キャスを説得しようとしているのが、わかる。
2人とも、額に汗が浮かんでいた。
暑いからではなく、キャスを逃がそうと必死なのだ。
「そうだね……ラーザの技術は残して行けない……もうバレスタンには戻れなくなるんだよ? いいんだね?」
2人は立ち上がり、確信に満ちた表情で、うなずく。
キャスが、ようやくザイードの元に走り寄って来た。
「この家は、吹き飛ばすことになりました。街の中でも……小規模な爆発が起きる予定です。その混乱に乗じて、壁を越えましょう」
「承知した」
「離れた場所に出られる隠し通路が家の中にあそうです。入り口まではアイシャが案内してくれます」
ザイードは、男2人に、頭を下げる。
魔物だとわかっても冷遇するどころか、謝罪までしてくれたキャスの同胞だ。
アイシャにも、あとで感謝を伝えるつもりだった。
「アイシャ、お願い」
キャスが、ザイードの手を握って来る。
ここに残したほうが、との思いが、ザイードの中から消えていた。
キャスは、魔物の国に帰ることを選んだのだ。
アイシャの後ろを走るキャスの背を見つめながら、ザイードも走る。
同時に、わずかばかり寂しさも感じていた。
(キャスの、あのような顔は、初めて見る。よほど信頼しておるのだな)
同胞なのだから、当然だ。
ザイードにしても、種の異なる「人間」より魔物といるほうが落ち着く。
さらに、同じ魔物であっても、ガリダの民といるのが、最も気が楽だった。
キャスが同胞に気を許すのは、ごく自然なことなのだ。
「ロキティスは壁を越えて、魔物の国に来ようとしてるんだと思う。どこまで準備できてるのか、それがわからないんだけどね」
キャスは無意識に魔力を使っている。
そのため、キャスの言葉は理解できた。
アイシャは人語なので、どう返答しているのかは不明だ。
とはいえ、表情が硬くなっているので、おそらく良い感情をいだいてはいない。
「わからない。でも、アイシャには……わかるんじゃない……?」
アイシャの顔つきが、ますます暗くなった。
ロキティスという「壁越え」の首謀者は、碌な奴ではないのだろう。
魔物の国に来て、なにをするつもりなのか。
ある程度は、予測がついている。
(壁ができる前と同じく、我らの国を蹂躙しようとしておるのだ)
略奪と殺戮。
攫われた魔物は、酷い目に合わされるに違いない。
壁ができた際に「解放」された魔物は、攫われた数に対し、ごくわずかだった。
その時ですら、なぜ人が魔物を「解放」したのかは、わからなかったのだ。
次に攫われれば「解放」など有り得ない。
解放する気があるのなら、はなから攫ったりしないだろう。
(あの壁は人を聖魔から守るためのものだと、キャスは言うておったが、果たして本当に、そうであろうか)
純血種の「人間」は、壁を越えられない。
これはおそらく「血」で判断されている。
魔物や聖魔の血が混ざっていると「人」とはみなされないのだろう。
そのため、キャスやシャノンのような中間種は壁を越えられる。
そして、純血種の「魔物」と「聖魔」も、壁を越えられない。
こちらはたぶん「魔力」により判定されているのではなかろうか。
中間種の持つ中途半端なものではなく、純血種のみが持つ「混じりのない魔力」だ。
(質の違い、みたいなものであろうか……確かに老体らは解放されて以来、人の国に入れぬようになったと言うておった……聖魔は、そもそも魔力を抑制しようなぞという考えがない)
内と外との違いはあるが、人間にとっても魔物にとっても「利」があった。
壁により、人は聖魔から守られ、魔物は人から守られている。
損をしているのは、自ら魔力を抑制するとの概念がない聖魔だけだ。
実際、ザイードは完璧な魔力抑制をすることで壁を抜けている。
(おそらく、壁を造った者は人も魔物も守ろうとしたのだ。それゆえ、魔物は解放されたのではなかろうか……)
魔物の解放を条件として壁が造られたのだとすれば、納得できる。
さらに、ザイードは気づいた。
(壁を造った者は、我らの国が脅かされたことに深い責を感じておったのだろう。あの者たちは、先ほど、余に詫びておったという)
つまり、この家にいるキャスの同胞たちは、壁を造った者の流れにある。
少なくとも、自らの同胞が招いた結果だと認識しているのだ。
これから対峙しようとしている「人間」たちとは、明らかに種類が違う。
(キャスは……この種類の人間の長であったか)
それは、3人の行動から簡単に推測ができた。
しかも、魔物の国で言う取りまとめ的な役割の「長」ではなく、まさしく三角の最も上にいる「長」だ。
王族だの貴族だのというのは、正直、よくわからない。
が、魔物にいくつかの種族がいるように、人にも「種類」があり、そのひとつをキャスは背負っている。
人と対峙するにしても、自らが背負っている「命」を犠牲にできるはずがない。
このまま、キャスの協力を肯としていいのか、悩む。
キャスがいようといまいと、その「ロキティス」という者は来るのだ。
キャスは、自らの存在が魔物の国を巻き込んだ、と言い続けていた。
だが、それだって、ザイードが、キャスを助けたことから始まっている。
あの時のキャスは、死にたがっていたのだから。
今も、心の裡では、その思いをいだいていると、わかっていた。
キャスは、喪った命を生かすために、自らの命を繋いでいるに過ぎない。
目の前には、やるべきこともある。
(そなたは、そなた自身のために生きようとはせぬのだな)
アイシャと真剣な表情で話しているキャスを見て、また胸が痛んだ。
キャスとは関わりなく人が来るとわかっているのは、ザイードだけではない。
キャスも、わかっている。
今となっては、自分がキャスを巻き込んだのだと、ザイードは感じていた。
(この者らと、ともに逃げるのが、キャスにとって……)
生きる目的と成り得るのではないか。
腕輪のはめられた自分の手を見つめる。
何度か、キャスと繋いだ手だった。
ぬくもりが伝わり合っていると感じたことを覚えている。
ザイードは、それで安心できたのだ。
まだキャスは、自分と一緒にいてくれるのだと。
助けた時から、キャスは「ガリダの民」だった。
けれど、人の国に戻るとしたキャスに同行すると決めた時から、ザイードの中に不安が生じ始めている。
人の国には、キャス本来の「暮らし」があるのだ。
魔物の国には帰らないと言われても、ザイードには引き留めるすべがなかった。
だから、独りで帰ることになる可能性を考えてしまう。
この手が、キャスの、あの小さな手を握る機会は訪れないのかもしれない。
当然、魔物の国は苦戦することになる。
だとしても、選択はキャス自身に委ねるべきだと考えていた。
ここで手に入れられた情報だけでも、十分、役に立つはずだ。
キャスが残りたいと言うのなら、無理強いはできない。
(キャスがおらぬようになるのは、寂しい……とてもとても寂しいことよな……)
思って、溜め息をついた時だった。
扉が、乱暴に開け放たれる。
入ってきたのは、アイシャの祖父と父だという男2人。
いくつかの大きな袋を持ち込んでいた。
老いた男のほうが、なにやら早口でまくし立てている。
もう1人の男も焦っているようだ。
アイシャも顔色を変えていた。
「敵に露見したのだな」
「そうです! でも、早過ぎる……っ……」
「あやつの仕業だの」
「あやつって……シャノン? そうか! なんで気づかなかったんだろ! 私の中にも装置が埋め込まれてたのに……っ……シャノンのは通信具だったんだ!」
シャノンの身に着けていたものは、ひと通り確認をしたが、武器のようなものは持っていなかった。
体のあちこちに傷が残っていたと聞いてはいたが、人が魔物を虐げるのは、魔物からすれば「当然」であり、驚きもしない。
シャノンが「逃げて来た」のも道理だと、納得さえしていた。
「とにかく、すぐに逃げないと……ザイード、壁に向かいましょう!」
「荷は、余が持つ」
「私より、そっちのほうが大事ですからね! 絶対に持ち帰ってください!」
でなければ、戻ってきた意味がなくなる。
キャスは、そう言いたいのだ。
「たった4ヶ月で戻って来て……それで、今度は、1日も経たずに、出発しなきゃならなくなるなんてね。けど、直前の情報まであるのは大きい。それに、ラーザの装備品があれば、心強いしさ。みんな、ありがとう。ゆっくり話せなくて、ごめん」
ザイードは、男2人が持ってきた大きな袋を、肩に2つずつ引っ掛ける。
普段、魔獣を背負ってもいるので、これくらいは、どうということもない。
「動いているのはリュドサイオの国境警備と近衛隊っ?! アトゥリノじゃないなんて……そんな……囲まれるのも時間の問題?……あなたたちは、どうする気? 討ち死にとか、絶対に許さないからね!」
3人が、口々に、なにかを言っている。
焦りを口調に出していたキャスだが、3人の言葉に、少しは落ち着いたらしい。
「……わかった。地下に潜ろうがどうしようが、生き延びてくれればいいから……こっちのことは気にしないで、自分たちが生き残ることだけを考えるんだよ」
アイシャは、心残りなのだろう。
瞳が揺らいでいる。
きっと、キャスを守り、無事に壁の外へと送り出したいのだ。
とはいえ、それをキャスが許すとは思えなかった。
「行きましょう、ザイード」
「しかし、元の場所から壁を越えるのは、危険であろうよ」
「リュドサイオが動いてるんなら、待ち伏せされてるかもしれませんね」
老齢の男が、キャスの手を取って跪き、なにかを言う。
「でも、それじゃあ、あなたたちが……ずっと、ここで暮らしてきたんでしょ?」
もう1人の男も同じく跪いて、キャスに語りかけていた。
時間がない中、キャスを説得しようとしているのが、わかる。
2人とも、額に汗が浮かんでいた。
暑いからではなく、キャスを逃がそうと必死なのだ。
「そうだね……ラーザの技術は残して行けない……もうバレスタンには戻れなくなるんだよ? いいんだね?」
2人は立ち上がり、確信に満ちた表情で、うなずく。
キャスが、ようやくザイードの元に走り寄って来た。
「この家は、吹き飛ばすことになりました。街の中でも……小規模な爆発が起きる予定です。その混乱に乗じて、壁を越えましょう」
「承知した」
「離れた場所に出られる隠し通路が家の中にあそうです。入り口まではアイシャが案内してくれます」
ザイードは、男2人に、頭を下げる。
魔物だとわかっても冷遇するどころか、謝罪までしてくれたキャスの同胞だ。
アイシャにも、あとで感謝を伝えるつもりだった。
「アイシャ、お願い」
キャスが、ザイードの手を握って来る。
ここに残したほうが、との思いが、ザイードの中から消えていた。
キャスは、魔物の国に帰ることを選んだのだ。
アイシャの後ろを走るキャスの背を見つめながら、ザイードも走る。
0
あなたにおすすめの小説
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
【完結】以上をもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
赤貧令嬢の借金返済契約
夏菜しの
恋愛
大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。
いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。
クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。
王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。
彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。
それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。
赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる