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最終章 彼女の会話はとめどない
足掻いても足掻いても 3
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キャスは、洞の中にいる。
動力石のある場所だ。
ここに来ると、いつも不思議に感じる。
この世界の人間は、すべてのエネルギーを、この動力石で賄っているのだ。
「最初に話したと思うんだけどさ。私は、ほかの世界から来たんだよね。来たって言っても魂だけで、この体に飛び込んだっていうか、押し付けられたっていうか」
独り言ではない。
ザイードの部屋から、布団ごとフィッツを連れて来ている。
魔人が来ると予測していたため、退避しているのだ。
魔人の相手は、ザイードがしてくれる。
「その世界だと、エネルギー問題って、割と深刻だったんだよ? いろんな種類があるのに、これもダメそれもダメって言われてて、だけど、使う量が減るわけじゃなくてさぁ。いい加減、エネルギー不足で世界が終わるんじゃないかって言われてたりしていたわけだよ。私は、まぁ、ほら、ああいう感じだったから、どっちでもいいやって思ってたんだけどね」
意識の戻っていないフィッツを相手に、キャスは話していた。
ここに2人でいて、なんとなく思い出したのだ。
意識がなくても話しかけていると、脳の反応が良くなるとかなんとか。
ドラマで、そういう場面を見たことがあったような気もしたし。
「なのに、こっちじゃ、この石だけでいいんだもんなぁ。恵まれてるっていうか、便利だよなぁって思う。でも、帝国は、加工技術を独り占めしてるじゃん? その気持ちが、私は、わからなくもないんだよ。もし、元の世界の人たちが、こっちの世界と行き来できるってなったら、絶対に取り合いになる」
話しながら、時々、フィッツの顔を見つめる。
それから、天井のほうに視線を向けて、また話し始める。
ここで過ごし始めて数日。
キャスは、ずっとフィッツに語りかけていた。
「だから、まぁ、帝国が独り占めしてたほうが、まだマシなのかもしれないなって、そう思う。取り合いになったら、戦争になるじゃん? 戦争なんて嫌だよね。好き好んでやってる人なんていないとは思うんだけど」
フィッツの意識は、半月以上も戻っていない。
そんな中、キャスは、自らを「ラーザの女王」だと宣言している。
どこまでやれるのか、なにができるのかは未知数だが、囚われていた魔物を解放させることには成功した。
「そう言えば、あいつ、ようやく私のこと諦めたっぽいよ? やっぱり中間種っていうのがショックだったのかな? あ、でもさ、あいつ、使者に使ってた中間種の子のこと、ティティとか呼んじゃって、ちょっと気にかけてるふうだった」
思い出して、少しだけ笑う。
フィッツが返事のできる状態だったら、どう言うだろうか、と思ったのだ。
淡々とした口調で、冷静な分析をしそうな気がする。
「魔物を絶滅する!なんて言い散らしてた奴がだよ? 馬鹿じゃないかと思ったね。フィッツの評価を否定するつもりはないけどさ。あいつ、本当に頭いいかなぁ? なんか、そう思えないんだよ。ただ、まぁ、悪いことではないね。意識が少しでも変わるっていうのは。大人になると、なかなか変われないもんだしさ」
とりとめなく話している自覚はあった。
けれど、それでいいのだとも思っている。
フィッツが聞いてくれていると、自分が勝手に思っているだけなのだ。
話したいことを話せばいい。
今は、なんの「制限」もないのだから。
「私もね、変わったんだよ、フィッツ」
元の世界でも、こっちでも、キャスの心は、いつも同じ。
投げやりでもなかったし、生きてはいたけれども。
生きるも死ぬもどうでもいい。
気づいた時には、そんなふうに思うようになっていた。
なにか大変な出来事や事件があったわけではない。
最近になって、ようやく、こうなのではないか、との結論に至っている。
人が嫌いではない。
が、好きでもない。
だから、「人」という範疇にいる自分のことも、どうでもよかったのだ。
自分のことも、好きでも嫌いでもなかったから。
「今でも、別に自分のこと、好きなわけじゃないよ? ただ、私が生きてたほうがいいって思ってくれる相手が増えちゃってさ。なんか、自分のこと嫌いだって言うのも、悪いような気になってしまうんだよね。それに……」
ちらっと、フィッツを横目で見てみる。
目を覚ました様子はない。
もちろん、フィッツが本気で「狸寝入り」なんてものをすれば、自分には気づけないだろう、と思った。
フィッツが「狸寝入り」なんてするかはともかく。
「フィッツがさ、言ってくれたじゃん……ええと、ほら……私のこと大好きって。私もフィッツのこと好きだし……だから、なんていうか、好きな人が、自分のこと嫌いって言うのは、なんか嫌だなって……フィッツも、そう思うかなって……」
フィッツは意識がなく、聞いてはいない。
ほぼ独り言のようなものだ。
なのに、なんだか気恥ずかしくなる。
恋愛にも無関心に生きてきたので、こういう話に慣れていない。
「フィッツは、覚えてないだろうけどさ。ティニカの隠れ家で、フィッツ、かなりグイグイ来てたんだからね。あれは、びっくりしたなぁ。グイグイ来てるのにさ、告白っぽくはないし、ズレまくってるし。だって、結局、ティニカの隠れ家にいた間は、フィッツ、私に好きって言わなかったんだよ? 私は、何回も言ったのに」
フィッツが、キャスに「告白」をしたのは、死の直前。
最初で最後だと思った。
最期の時に、そんなことを言うなんて、と思ったけれど。
それは「最期」にはならなかった。
「フィッツが、ティニカのフィッツでもいい。生きてるから。私を、前みたいには好きって思ってくれなくてもいい。フィッツが、生きてるってことが大事だから。私は、ずっと好きだよ。フィッツのことが、ずっとずっと好きだし、好きなまんまだと思うから、いいんだ、それで」
人には心変わりという能力があるらしい。
だが、自分には備わっていないようだ。
どんなふうにフィッツが変わっても変わらなくても、心は離れていかない。
「さてと。ちょっとだけ、ここで待っててね、フィッツ」
キャスは、すくっと立ち上がる。
そして、ある1点を見つめて、言った。
「やっぱりね、こっちに来ると思ってたよ」
三角の耳と細い尾を持つ、魔人の手先。
青い目の中の、銀色の瞳孔は縦長をしている。
中間種の場合、魔力を使わないと、こういう中途半端な姿になるのだ。
魔力を使うことで、耳や尾を隠していたらしい。
ロキティスにそうするよう強制されていたのだろう。
「青い目がルーポっぽくないって聞いてたから、そっちばっかり気にしてたけど、耳と尻尾もルーポっぽくないね。耳も尻尾も真っ黒なのは魔人の手先だからかな。ねえ、どう思う、シャノン?」
魔人は、ザイードの家に行っているはずだ。
ザイードが、領土内に「意識不明のフィッツ」の話を流させている。
だとしても、魔人が、それを「欺瞞」だと気づかないはずがない。
その程度のことに引っ掛かるようであれば、あんな大惨事は起きていないのだ。
欺瞞に引っ掛かった振りをして、あえて自らが「囮」になろうとする。
キャスは、そう「読んで」いた。
なので、魔人はザイードに任せている。
魔人相手だと、キャスのほうが分が悪いからだ。
対して、シャノン相手ならば、キャスのほうが有利だった。
「これから、あんたのご主人様を殺しに行く」
「そ、そんなこと、で、できるわけ、ない……っ……」
「なんで? 体を移れるから?」
シャノンが、ぴたっと黙る。
それが、答えになっているとは気づいていないのだろう。
ゼノクルが死に、キャスたちは魔人が聖魔の国に帰ったと思っていた。
ザイードも、ゼノクルから「魔力」は感じなかったと言っている。
なのに、魔人は、いつの間にか「ベンジャミン」になっていた。
ゼノクルの傍には、ラフロだっていなかったのに、だ。
だから、ベンジャミンが目覚めているなんて思いもしなかった。
ましてや、魔人に体を乗っ取られているなんて想定もできなかった。
「あの時、あんたは、あの場にいなかった」
理屈は、わからない。
だが「乗り換え」に、シャノンが関わっていることは、わかっている。
開発施設からフィッツとザイードを逃がすため、キャスは壁を一時停止させた。
きっと、その時に違いない。
ラフロが人の国に来た。
そして、なんらかの方法を使って、ベンジャミンの体に魔人を引き込んだのだ。
ゼノクルに、そんな余裕があったとは考えられなかった。
だとすると、シャノンが「なにかした」ということになる。
『あんたは、あの魔人の最高の玩具だからね』
ううっと呻いて、シャノンが膝を折った。
サッと駆け寄り、両手を掴む。
細い手だった。
小さな体だった。
「キャス、向こうも捕まえたらしいわ」
「ザイードも上手くやってくれたんですね」
「早く行ったほうがよくてよ?」
「すみません、無駄に呼んでしまって」
「気にしなくていいわ。ここは粒子が消えるまでに、時間がかかるみたいなの。だから、この子たちと、しばらく楽しんで行くわね」
キャスに光の粒子は見えないが、周りにいるファニたちは、うっとりしている。
それで気分がいいのならいいかと、ミネリネに頭を下げて、歩き出した。
シャノンの手を引き、家の裏口に回る。
まだ呻いているシャノンの手を、軽く戸の脇に紐で括りつけた。
「こっから見てなよ。あんたができないって言ったことを、私がするところをね。私は、あんたのご主人様を殺して来るよ。フィッツの体は、渡さない」
言い捨てて、表口に回る。
戸を開いて中に入った。
ザイードが、こっちを見ている。
軽くうなずいてから、銃を取り出した。
「なんだ、小娘。銃なんか扱えんのかよ?」
「それほど上手くないからね。動かずにいてくれると助かるんだけど?」
「いいさ。やれよ。動かずにいてやるぜ?」
「ご親切に、どうも」
キャスは、魔人に向かって銃口を向ける。
わざとらしく、魔人が顎を突き出し、目を閉じていた。
その姿を見つめながら、キャスは引き金を、引く。
動力石のある場所だ。
ここに来ると、いつも不思議に感じる。
この世界の人間は、すべてのエネルギーを、この動力石で賄っているのだ。
「最初に話したと思うんだけどさ。私は、ほかの世界から来たんだよね。来たって言っても魂だけで、この体に飛び込んだっていうか、押し付けられたっていうか」
独り言ではない。
ザイードの部屋から、布団ごとフィッツを連れて来ている。
魔人が来ると予測していたため、退避しているのだ。
魔人の相手は、ザイードがしてくれる。
「その世界だと、エネルギー問題って、割と深刻だったんだよ? いろんな種類があるのに、これもダメそれもダメって言われてて、だけど、使う量が減るわけじゃなくてさぁ。いい加減、エネルギー不足で世界が終わるんじゃないかって言われてたりしていたわけだよ。私は、まぁ、ほら、ああいう感じだったから、どっちでもいいやって思ってたんだけどね」
意識の戻っていないフィッツを相手に、キャスは話していた。
ここに2人でいて、なんとなく思い出したのだ。
意識がなくても話しかけていると、脳の反応が良くなるとかなんとか。
ドラマで、そういう場面を見たことがあったような気もしたし。
「なのに、こっちじゃ、この石だけでいいんだもんなぁ。恵まれてるっていうか、便利だよなぁって思う。でも、帝国は、加工技術を独り占めしてるじゃん? その気持ちが、私は、わからなくもないんだよ。もし、元の世界の人たちが、こっちの世界と行き来できるってなったら、絶対に取り合いになる」
話しながら、時々、フィッツの顔を見つめる。
それから、天井のほうに視線を向けて、また話し始める。
ここで過ごし始めて数日。
キャスは、ずっとフィッツに語りかけていた。
「だから、まぁ、帝国が独り占めしてたほうが、まだマシなのかもしれないなって、そう思う。取り合いになったら、戦争になるじゃん? 戦争なんて嫌だよね。好き好んでやってる人なんていないとは思うんだけど」
フィッツの意識は、半月以上も戻っていない。
そんな中、キャスは、自らを「ラーザの女王」だと宣言している。
どこまでやれるのか、なにができるのかは未知数だが、囚われていた魔物を解放させることには成功した。
「そう言えば、あいつ、ようやく私のこと諦めたっぽいよ? やっぱり中間種っていうのがショックだったのかな? あ、でもさ、あいつ、使者に使ってた中間種の子のこと、ティティとか呼んじゃって、ちょっと気にかけてるふうだった」
思い出して、少しだけ笑う。
フィッツが返事のできる状態だったら、どう言うだろうか、と思ったのだ。
淡々とした口調で、冷静な分析をしそうな気がする。
「魔物を絶滅する!なんて言い散らしてた奴がだよ? 馬鹿じゃないかと思ったね。フィッツの評価を否定するつもりはないけどさ。あいつ、本当に頭いいかなぁ? なんか、そう思えないんだよ。ただ、まぁ、悪いことではないね。意識が少しでも変わるっていうのは。大人になると、なかなか変われないもんだしさ」
とりとめなく話している自覚はあった。
けれど、それでいいのだとも思っている。
フィッツが聞いてくれていると、自分が勝手に思っているだけなのだ。
話したいことを話せばいい。
今は、なんの「制限」もないのだから。
「私もね、変わったんだよ、フィッツ」
元の世界でも、こっちでも、キャスの心は、いつも同じ。
投げやりでもなかったし、生きてはいたけれども。
生きるも死ぬもどうでもいい。
気づいた時には、そんなふうに思うようになっていた。
なにか大変な出来事や事件があったわけではない。
最近になって、ようやく、こうなのではないか、との結論に至っている。
人が嫌いではない。
が、好きでもない。
だから、「人」という範疇にいる自分のことも、どうでもよかったのだ。
自分のことも、好きでも嫌いでもなかったから。
「今でも、別に自分のこと、好きなわけじゃないよ? ただ、私が生きてたほうがいいって思ってくれる相手が増えちゃってさ。なんか、自分のこと嫌いだって言うのも、悪いような気になってしまうんだよね。それに……」
ちらっと、フィッツを横目で見てみる。
目を覚ました様子はない。
もちろん、フィッツが本気で「狸寝入り」なんてものをすれば、自分には気づけないだろう、と思った。
フィッツが「狸寝入り」なんてするかはともかく。
「フィッツがさ、言ってくれたじゃん……ええと、ほら……私のこと大好きって。私もフィッツのこと好きだし……だから、なんていうか、好きな人が、自分のこと嫌いって言うのは、なんか嫌だなって……フィッツも、そう思うかなって……」
フィッツは意識がなく、聞いてはいない。
ほぼ独り言のようなものだ。
なのに、なんだか気恥ずかしくなる。
恋愛にも無関心に生きてきたので、こういう話に慣れていない。
「フィッツは、覚えてないだろうけどさ。ティニカの隠れ家で、フィッツ、かなりグイグイ来てたんだからね。あれは、びっくりしたなぁ。グイグイ来てるのにさ、告白っぽくはないし、ズレまくってるし。だって、結局、ティニカの隠れ家にいた間は、フィッツ、私に好きって言わなかったんだよ? 私は、何回も言ったのに」
フィッツが、キャスに「告白」をしたのは、死の直前。
最初で最後だと思った。
最期の時に、そんなことを言うなんて、と思ったけれど。
それは「最期」にはならなかった。
「フィッツが、ティニカのフィッツでもいい。生きてるから。私を、前みたいには好きって思ってくれなくてもいい。フィッツが、生きてるってことが大事だから。私は、ずっと好きだよ。フィッツのことが、ずっとずっと好きだし、好きなまんまだと思うから、いいんだ、それで」
人には心変わりという能力があるらしい。
だが、自分には備わっていないようだ。
どんなふうにフィッツが変わっても変わらなくても、心は離れていかない。
「さてと。ちょっとだけ、ここで待っててね、フィッツ」
キャスは、すくっと立ち上がる。
そして、ある1点を見つめて、言った。
「やっぱりね、こっちに来ると思ってたよ」
三角の耳と細い尾を持つ、魔人の手先。
青い目の中の、銀色の瞳孔は縦長をしている。
中間種の場合、魔力を使わないと、こういう中途半端な姿になるのだ。
魔力を使うことで、耳や尾を隠していたらしい。
ロキティスにそうするよう強制されていたのだろう。
「青い目がルーポっぽくないって聞いてたから、そっちばっかり気にしてたけど、耳と尻尾もルーポっぽくないね。耳も尻尾も真っ黒なのは魔人の手先だからかな。ねえ、どう思う、シャノン?」
魔人は、ザイードの家に行っているはずだ。
ザイードが、領土内に「意識不明のフィッツ」の話を流させている。
だとしても、魔人が、それを「欺瞞」だと気づかないはずがない。
その程度のことに引っ掛かるようであれば、あんな大惨事は起きていないのだ。
欺瞞に引っ掛かった振りをして、あえて自らが「囮」になろうとする。
キャスは、そう「読んで」いた。
なので、魔人はザイードに任せている。
魔人相手だと、キャスのほうが分が悪いからだ。
対して、シャノン相手ならば、キャスのほうが有利だった。
「これから、あんたのご主人様を殺しに行く」
「そ、そんなこと、で、できるわけ、ない……っ……」
「なんで? 体を移れるから?」
シャノンが、ぴたっと黙る。
それが、答えになっているとは気づいていないのだろう。
ゼノクルが死に、キャスたちは魔人が聖魔の国に帰ったと思っていた。
ザイードも、ゼノクルから「魔力」は感じなかったと言っている。
なのに、魔人は、いつの間にか「ベンジャミン」になっていた。
ゼノクルの傍には、ラフロだっていなかったのに、だ。
だから、ベンジャミンが目覚めているなんて思いもしなかった。
ましてや、魔人に体を乗っ取られているなんて想定もできなかった。
「あの時、あんたは、あの場にいなかった」
理屈は、わからない。
だが「乗り換え」に、シャノンが関わっていることは、わかっている。
開発施設からフィッツとザイードを逃がすため、キャスは壁を一時停止させた。
きっと、その時に違いない。
ラフロが人の国に来た。
そして、なんらかの方法を使って、ベンジャミンの体に魔人を引き込んだのだ。
ゼノクルに、そんな余裕があったとは考えられなかった。
だとすると、シャノンが「なにかした」ということになる。
『あんたは、あの魔人の最高の玩具だからね』
ううっと呻いて、シャノンが膝を折った。
サッと駆け寄り、両手を掴む。
細い手だった。
小さな体だった。
「キャス、向こうも捕まえたらしいわ」
「ザイードも上手くやってくれたんですね」
「早く行ったほうがよくてよ?」
「すみません、無駄に呼んでしまって」
「気にしなくていいわ。ここは粒子が消えるまでに、時間がかかるみたいなの。だから、この子たちと、しばらく楽しんで行くわね」
キャスに光の粒子は見えないが、周りにいるファニたちは、うっとりしている。
それで気分がいいのならいいかと、ミネリネに頭を下げて、歩き出した。
シャノンの手を引き、家の裏口に回る。
まだ呻いているシャノンの手を、軽く戸の脇に紐で括りつけた。
「こっから見てなよ。あんたができないって言ったことを、私がするところをね。私は、あんたのご主人様を殺して来るよ。フィッツの体は、渡さない」
言い捨てて、表口に回る。
戸を開いて中に入った。
ザイードが、こっちを見ている。
軽くうなずいてから、銃を取り出した。
「なんだ、小娘。銃なんか扱えんのかよ?」
「それほど上手くないからね。動かずにいてくれると助かるんだけど?」
「いいさ。やれよ。動かずにいてやるぜ?」
「ご親切に、どうも」
キャスは、魔人に向かって銃口を向ける。
わざとらしく、魔人が顎を突き出し、目を閉じていた。
その姿を見つめながら、キャスは引き金を、引く。
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