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敦志編
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〈時也と連絡取ってる?〉
何の前触れもなく送られてきたメッセージに先輩らしいと思いながら返信を返す。電話の方が手っ取り早いけれど出産したばかりの家庭に電話するのは気が引ける。メッセージなら都合のいい時に返してくれればいい。
〈何かありましたか?〉
相手の都合のいい時に、と考えてメッセージにしたのに折り返しで電話がかかってきたため、こちらからかければ良かったと思いながら通話ボタンを押す。
「もしもし」
『久しぶり。
今って話してて大丈夫?』
挨拶らしい挨拶もないまま直ぐに話を始めるのも先輩らしい。
「大丈夫です。
あ、出産おめでとうございます。
お子さん、大丈夫ですか?」
そんな風に始まった会話はお互いの持っている情報を交換する、と言うよりも俺の知っている事を先輩に伝えるための会話だった。
先輩も三浦から連絡があったと聞き、色々と察するところはあったのだろう。
『三浦君って時也と付き合ってた?』
確信はなかったのだろう、確認するために言われた言葉を肯定する。
『違ったらごめんだけど、時也にパートナーがいたのには気付いてたし、それが同性なら時也のパートナーは敦志だと思ってたんだよね。何で三浦君だったの?』
俺の肯定に対して返ってきた言葉に返答に困り、それでも素直な気持ちを先輩に伝える。きっと呆れられるだろうと思いながらもこの人には言った方が、言っておいた方がいいと思い自分のヘタレ具合を隠さず伝える。
「……弱みにつけ込むのは狡い。
就活の邪魔をしたくない。
お互いに生活が落ち着いたら、そんな風にタイミングを計っていたら出遅れました」
『就職決まってから卒業までけっこう時間あったよね?』
そして予想通り、少し呆れた言葉が返ってくる。
「もしも拒絶されたら卒業式に顔を合わせ辛いかと思って、お互いに。
だったら就職してからなら、それなら拒絶されて会えなくなれば諦めるしかないかと思って、時也が落ち着く頃を待ってました」
『で、その間に三浦君に取られちゃったのね』
今度こそ本気で呆れられたのだろう。何か言い訳をと思うものの、何を言っても自分の情けなさが露呈してしまうだけだ。
『奪ってやろうとか思わなかったの?』
「三浦の事は気に入らないけど時也が選んだなら仕方ないです。
それに、パートナーに浮気されて捨てられた時也が1番嫌がる事じゃないですか、それって」
だけど、これだけは確信を持って応えることが出来た。もしも時也を三浦から奪ったとしても、時也の心の中から三浦の存在が消える事はない。相手に傷つけられて別れた経験のある時也を相手を傷つける立場にはしたくなかった。
『そうよね…。
ところで三浦君から連絡が来たって、何の要件で?』
「同じですよ。時也の居場所を知らないかって」
『そうなの⁈
連絡先、交換してたの?』
俺の言葉が意外だったのか、本気で驚いているようだ。
「学生の時に接点ができたせいで向こうの友達の連絡先も何人か知ってますよ。
だから時也の意向を伝えてある相手もいます」
『時也の意向?』
「引っ越すけど必要な相手には自分で連絡してあるから、もしも誰かに自分のことを聞かれても知らないって答えて欲しいって」
『会社にもそう伝えてあったみたいよ?」
「どんな別れ方したんだよ…」
思わず言ってしまった。
別れが確定した事は嬉しいはずなのに、それなのに三浦からの連絡や先輩から聞かされる事実で綺麗に別れたわけではないと知り腹立たしさを隠すことができない。
もしかしたら2人で生活するために、なんて考えていた時に時也は独り淋しく過ごしていたのだと思うと居た堪れない。
『なんて答えたの?
素直に知らないって』
「言うわけないじゃないですか。
一体いつの話をしてるんだって、連絡が取りたいのなら直接時也に連絡しろって言って返事を聞かずに電話を切りました。いつ引っ越したのかも、もしかしたら知らないんじゃないですか?」
『まさか』
「連絡が今更なのが答えですよ」
俺だってまさかとは思ったけれど、三浦からかかってきた電話はきっとそういう意味でしかないのだろう。
『時也からは何か聞いてる?』
「何も。
大丈夫って言われたらそれ以上何も言えないし、何も聞けないですよ」
口から出た言葉は本心。
今、この時も時也は淋しい思いをしているかもしれない。引越しと転職と忙しくしていたはずだけど、少し時間が経ち落ち着いた今、色々考え込んでいないか心配だけど、大丈夫だと言われてしまっては動くことができない。
全て知っていると伝えて話を聞いて、そして自分の思いを伝えればもしかしたら俺に振り向いてくれるかもしれない。そんな狡いことを考え、だけど弱っている時に気持ちを押し付けるのは時也の負担になるかもしれないと自分にブレーキをかける。
『私が急に連絡したらおかしいよね?』
何かを考えてから告げられた言葉を肯定する言葉を返したのは時也は俺にだってもちろんだけど、先輩にも知られたくないだろうと思ったから。
「お祝いの催促してみたらどうですか?」
『そんなことしませんから』
少しの笑みを含ませて返された言葉だったけれど、その後直ぐに言葉を付け足される。
『時也の気持ちも大切だけど、敦志の気持ちだって大切だと思うよ?』
俺の気持ちは伝わったのだろう。
そして、俺の本心も理解しているのだろう。
「そうですね」
そう言われてもなかなか行動を移すことができないであろう俺に向けられた先輩なりのエールに思わず苦笑いが浮かぶ。
『私は、時也と敦志から嬉しい報告が聞けるのを楽しみにしてるんだからね』
そして、ダメ押しのように告げられた言葉。やっぱり先輩にとって、時也だけでなく俺も庇護対象なのかもしれない。少しだけくすぐったく感じて今度は苦笑ではない笑みが溢れてしまう。
「善処します」
具体的な事は言えないけれど、そうなって欲しい気持ちは俺も同じだ。
味方がいるというのはこんなにも心強いのかと少しだけ上向きになった気持ちは、その数日後に来る電話でまた下降するのだけど…。
先輩からの電話の数日後、今度は三浦の友人から電話をもらった。あのグループの中ではマトモな、三浦の良心とも言える友人だったため時也からの連絡を伝えておいたのも何かあれば連絡が行くだろうと思ってのことだ。
だけど、何の連絡もしてこないから自分の杞憂だったのだと思っていたのに俺に連絡をした後で自分に連絡があったと告げた友人は、実際に三浦に会って話してきたとその時の様子を話し始める。
時也が居なくなったとかなり落ち込んでいたこと。
居なくなったことに気付いた時には連絡手段は残っていたのに、自分の部屋に戻るまでのわずかな時間にそれらが全て断たれた事。
急いで俺に連絡をした時に告げられた言葉とその時の態度。
そして、その時に俺が告げた言葉。
『あいつ、時也と付き合ってるのバレてないと思ってたみたいだよ?』
そして話してくれたその時の様子。
かなり反省していると、本当に大切な相手は時也だとやっと気付いたようだと言われたけれど、正直それがどうしたとしか思わなかった。
時也から直接聞かされることはとうとう無かったけれど、この友人から「一也と時也、付き合うみたいだけどお前それで良いの?」と言われた時には〈やられた〉と悔しい思いをした。
時也の気持ちを考えて様子を伺っているうちに、時也の気持ちよりも自分の想いを優先した三浦に先を越されてしまった事は今でも後悔している。
それでも時也が三浦を選んだのなら仕方ないと諦めたはずの想いだったけれど、今度は諦める気はない。ただ、すぐに連絡をできなかったのはやっぱり〈付け込みたくない〉という思いからだった。
それでも三浦の話を聞いて何も思わなかったわけではない。
なんだかんだ言って時也と三浦の付き合いはそれなりに長く、これが男女のカップルであれば結婚の話が出てもいいくらいの長さだ。
それ程までに長く付き合ったのだ、いわゆる倦怠期のせいですれ違っただけで、三浦が心を入れ替えたのであれば上手くいくのかもしれない。時也も自分の事を探してほしくないと言ってはいるけれど、本心では追いかけてもらいたかったのがしれない。
そんな風に考えてまた身動きが取れなくなってしまう。
もしも今、思いを告げて時也と付き合うことができたとしても、三浦が真摯な気持ちで時也に向き合えば自分は邪魔なだけではないのか?
そんな風になってしまった時に自分のせいで時也を苦しめる事になるのならば何も告げずに友達のままそばにいるだけで満足するべきではないのか。
結局、こんな時に相談できる相手もおらず、思考はループするばかりで動くことができない。
そんな時に来た妹からの連絡は〈買い物に付き合って欲しい〉と言うもので、買い物に付き合って欲しい=買って欲しいものがあると分かっていても、相変わらず妹に甘い俺はOKの返事を返し、待ち合わせの時間を決める。
これがまた事態をややこしくするなんて分かるわけがなく、当日、偶然会った時也を誘ってコーヒーショップに入ったものの、急な事に聞きたいことが多すぎて核心に触れられないまま時間が過ぎていく。
新しい会社の話が出たところで〈家に来られても大丈夫〉と言った言葉に便乗して飲みに行く約束を取り付けたまでは良かったのに、思いのほか早く合流した妹からのを見て帰り支度をした時也を止めることもできず「連絡待ってるから」と急いで告げるのが精一杯だった。
「良かったの?」
妹からそう言われたものの、この後予定があるとも言っていたから仕方がないだろうと時也の言葉を鵜呑みした俺は、時也との再会がまだ先になる事に全く気付いていないのだけど…。
「なんかさ、あの人私と敦志の仲、誤解してないかな?」
そう言われても〈妹〉の存在を話したことがあったのだからそんな筈はないと否定した俺は…ただの鈍感なのだろう。
そして、妹の言う通り〈妹〉を俺のパートナーだと勘違いした時也が自分の将来について更に悩む事になっている事も、当然のように気付いていなかった。
そんな調子だから、送られて来ないメッセージに痺れを切らして連絡をするまでの期間に、思い悩みながらも成長した時也を見て自分のヘタレ具合を再確認して落ち込む羽目になるのだった。
何の前触れもなく送られてきたメッセージに先輩らしいと思いながら返信を返す。電話の方が手っ取り早いけれど出産したばかりの家庭に電話するのは気が引ける。メッセージなら都合のいい時に返してくれればいい。
〈何かありましたか?〉
相手の都合のいい時に、と考えてメッセージにしたのに折り返しで電話がかかってきたため、こちらからかければ良かったと思いながら通話ボタンを押す。
「もしもし」
『久しぶり。
今って話してて大丈夫?』
挨拶らしい挨拶もないまま直ぐに話を始めるのも先輩らしい。
「大丈夫です。
あ、出産おめでとうございます。
お子さん、大丈夫ですか?」
そんな風に始まった会話はお互いの持っている情報を交換する、と言うよりも俺の知っている事を先輩に伝えるための会話だった。
先輩も三浦から連絡があったと聞き、色々と察するところはあったのだろう。
『三浦君って時也と付き合ってた?』
確信はなかったのだろう、確認するために言われた言葉を肯定する。
『違ったらごめんだけど、時也にパートナーがいたのには気付いてたし、それが同性なら時也のパートナーは敦志だと思ってたんだよね。何で三浦君だったの?』
俺の肯定に対して返ってきた言葉に返答に困り、それでも素直な気持ちを先輩に伝える。きっと呆れられるだろうと思いながらもこの人には言った方が、言っておいた方がいいと思い自分のヘタレ具合を隠さず伝える。
「……弱みにつけ込むのは狡い。
就活の邪魔をしたくない。
お互いに生活が落ち着いたら、そんな風にタイミングを計っていたら出遅れました」
『就職決まってから卒業までけっこう時間あったよね?』
そして予想通り、少し呆れた言葉が返ってくる。
「もしも拒絶されたら卒業式に顔を合わせ辛いかと思って、お互いに。
だったら就職してからなら、それなら拒絶されて会えなくなれば諦めるしかないかと思って、時也が落ち着く頃を待ってました」
『で、その間に三浦君に取られちゃったのね』
今度こそ本気で呆れられたのだろう。何か言い訳をと思うものの、何を言っても自分の情けなさが露呈してしまうだけだ。
『奪ってやろうとか思わなかったの?』
「三浦の事は気に入らないけど時也が選んだなら仕方ないです。
それに、パートナーに浮気されて捨てられた時也が1番嫌がる事じゃないですか、それって」
だけど、これだけは確信を持って応えることが出来た。もしも時也を三浦から奪ったとしても、時也の心の中から三浦の存在が消える事はない。相手に傷つけられて別れた経験のある時也を相手を傷つける立場にはしたくなかった。
『そうよね…。
ところで三浦君から連絡が来たって、何の要件で?』
「同じですよ。時也の居場所を知らないかって」
『そうなの⁈
連絡先、交換してたの?』
俺の言葉が意外だったのか、本気で驚いているようだ。
「学生の時に接点ができたせいで向こうの友達の連絡先も何人か知ってますよ。
だから時也の意向を伝えてある相手もいます」
『時也の意向?』
「引っ越すけど必要な相手には自分で連絡してあるから、もしも誰かに自分のことを聞かれても知らないって答えて欲しいって」
『会社にもそう伝えてあったみたいよ?」
「どんな別れ方したんだよ…」
思わず言ってしまった。
別れが確定した事は嬉しいはずなのに、それなのに三浦からの連絡や先輩から聞かされる事実で綺麗に別れたわけではないと知り腹立たしさを隠すことができない。
もしかしたら2人で生活するために、なんて考えていた時に時也は独り淋しく過ごしていたのだと思うと居た堪れない。
『なんて答えたの?
素直に知らないって』
「言うわけないじゃないですか。
一体いつの話をしてるんだって、連絡が取りたいのなら直接時也に連絡しろって言って返事を聞かずに電話を切りました。いつ引っ越したのかも、もしかしたら知らないんじゃないですか?」
『まさか』
「連絡が今更なのが答えですよ」
俺だってまさかとは思ったけれど、三浦からかかってきた電話はきっとそういう意味でしかないのだろう。
『時也からは何か聞いてる?』
「何も。
大丈夫って言われたらそれ以上何も言えないし、何も聞けないですよ」
口から出た言葉は本心。
今、この時も時也は淋しい思いをしているかもしれない。引越しと転職と忙しくしていたはずだけど、少し時間が経ち落ち着いた今、色々考え込んでいないか心配だけど、大丈夫だと言われてしまっては動くことができない。
全て知っていると伝えて話を聞いて、そして自分の思いを伝えればもしかしたら俺に振り向いてくれるかもしれない。そんな狡いことを考え、だけど弱っている時に気持ちを押し付けるのは時也の負担になるかもしれないと自分にブレーキをかける。
『私が急に連絡したらおかしいよね?』
何かを考えてから告げられた言葉を肯定する言葉を返したのは時也は俺にだってもちろんだけど、先輩にも知られたくないだろうと思ったから。
「お祝いの催促してみたらどうですか?」
『そんなことしませんから』
少しの笑みを含ませて返された言葉だったけれど、その後直ぐに言葉を付け足される。
『時也の気持ちも大切だけど、敦志の気持ちだって大切だと思うよ?』
俺の気持ちは伝わったのだろう。
そして、俺の本心も理解しているのだろう。
「そうですね」
そう言われてもなかなか行動を移すことができないであろう俺に向けられた先輩なりのエールに思わず苦笑いが浮かぶ。
『私は、時也と敦志から嬉しい報告が聞けるのを楽しみにしてるんだからね』
そして、ダメ押しのように告げられた言葉。やっぱり先輩にとって、時也だけでなく俺も庇護対象なのかもしれない。少しだけくすぐったく感じて今度は苦笑ではない笑みが溢れてしまう。
「善処します」
具体的な事は言えないけれど、そうなって欲しい気持ちは俺も同じだ。
味方がいるというのはこんなにも心強いのかと少しだけ上向きになった気持ちは、その数日後に来る電話でまた下降するのだけど…。
先輩からの電話の数日後、今度は三浦の友人から電話をもらった。あのグループの中ではマトモな、三浦の良心とも言える友人だったため時也からの連絡を伝えておいたのも何かあれば連絡が行くだろうと思ってのことだ。
だけど、何の連絡もしてこないから自分の杞憂だったのだと思っていたのに俺に連絡をした後で自分に連絡があったと告げた友人は、実際に三浦に会って話してきたとその時の様子を話し始める。
時也が居なくなったとかなり落ち込んでいたこと。
居なくなったことに気付いた時には連絡手段は残っていたのに、自分の部屋に戻るまでのわずかな時間にそれらが全て断たれた事。
急いで俺に連絡をした時に告げられた言葉とその時の態度。
そして、その時に俺が告げた言葉。
『あいつ、時也と付き合ってるのバレてないと思ってたみたいだよ?』
そして話してくれたその時の様子。
かなり反省していると、本当に大切な相手は時也だとやっと気付いたようだと言われたけれど、正直それがどうしたとしか思わなかった。
時也から直接聞かされることはとうとう無かったけれど、この友人から「一也と時也、付き合うみたいだけどお前それで良いの?」と言われた時には〈やられた〉と悔しい思いをした。
時也の気持ちを考えて様子を伺っているうちに、時也の気持ちよりも自分の想いを優先した三浦に先を越されてしまった事は今でも後悔している。
それでも時也が三浦を選んだのなら仕方ないと諦めたはずの想いだったけれど、今度は諦める気はない。ただ、すぐに連絡をできなかったのはやっぱり〈付け込みたくない〉という思いからだった。
それでも三浦の話を聞いて何も思わなかったわけではない。
なんだかんだ言って時也と三浦の付き合いはそれなりに長く、これが男女のカップルであれば結婚の話が出てもいいくらいの長さだ。
それ程までに長く付き合ったのだ、いわゆる倦怠期のせいですれ違っただけで、三浦が心を入れ替えたのであれば上手くいくのかもしれない。時也も自分の事を探してほしくないと言ってはいるけれど、本心では追いかけてもらいたかったのがしれない。
そんな風に考えてまた身動きが取れなくなってしまう。
もしも今、思いを告げて時也と付き合うことができたとしても、三浦が真摯な気持ちで時也に向き合えば自分は邪魔なだけではないのか?
そんな風になってしまった時に自分のせいで時也を苦しめる事になるのならば何も告げずに友達のままそばにいるだけで満足するべきではないのか。
結局、こんな時に相談できる相手もおらず、思考はループするばかりで動くことができない。
そんな時に来た妹からの連絡は〈買い物に付き合って欲しい〉と言うもので、買い物に付き合って欲しい=買って欲しいものがあると分かっていても、相変わらず妹に甘い俺はOKの返事を返し、待ち合わせの時間を決める。
これがまた事態をややこしくするなんて分かるわけがなく、当日、偶然会った時也を誘ってコーヒーショップに入ったものの、急な事に聞きたいことが多すぎて核心に触れられないまま時間が過ぎていく。
新しい会社の話が出たところで〈家に来られても大丈夫〉と言った言葉に便乗して飲みに行く約束を取り付けたまでは良かったのに、思いのほか早く合流した妹からのを見て帰り支度をした時也を止めることもできず「連絡待ってるから」と急いで告げるのが精一杯だった。
「良かったの?」
妹からそう言われたものの、この後予定があるとも言っていたから仕方がないだろうと時也の言葉を鵜呑みした俺は、時也との再会がまだ先になる事に全く気付いていないのだけど…。
「なんかさ、あの人私と敦志の仲、誤解してないかな?」
そう言われても〈妹〉の存在を話したことがあったのだからそんな筈はないと否定した俺は…ただの鈍感なのだろう。
そして、妹の言う通り〈妹〉を俺のパートナーだと勘違いした時也が自分の将来について更に悩む事になっている事も、当然のように気付いていなかった。
そんな調子だから、送られて来ないメッセージに痺れを切らして連絡をするまでの期間に、思い悩みながらも成長した時也を見て自分のヘタレ具合を再確認して落ち込む羽目になるのだった。
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