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兄の役目と興味の対象
静流 1
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光流と紬君に見送られて先に車を出した。光流が思った以上にαである紬君に反応していたのが少し心配と言えば心配だけど…それならそれで良いか、とも思っている。
2人とも大人なんだからその辺は2人のタイミングで好きにすればいい。
護との付き合いで多少の触れ合いはあったかもしれないけれど、一線を超えた様子は無かったから紬君に任せるしかないのだけど…彼の経歴からして心配することはないだろう。
会ってみて気に入らなければ盛大に邪魔をしてやろうと思っていたのに、それなのに紬君を見つけた途端表情が変わった光流を見てしまったらそんな気も失せた。
〈人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ〉と先人も言っている。
馬に蹴られて死ぬのはごめんだし、成人した弟であっても光流のことが可愛くて仕方がない俺にとって、1番重要視するべきは光流の気持ちなのだ。
護の時のように足りないならば自分が補えば、なんて思ってはいない。
足りないのなら2人で補い合えばいいのだ。
幸いなことに紬君にはそれなりの矜持もあるようだし、光流だっていつまでも子どもじゃない。紬君と出会った事で自分の将来を考えるようになっただけで成長したと思うのは流石に兄馬鹿過ぎるだろうか。
仲睦まじい光流と紬君を見て安心したものの、事あるごとに思い出してしまう彼の事。まだまだ光流の心の片隅に居続ける彼のことを紬君はどう思っているのだろう。
口さがない者たちは護が〈辻崎〉との縁を無くしたと知るや否やそれらしい事を風潮しつつ攻撃に出る者、自分の元に取り入れようとする者とでそれなりの攻防があったらしい。
ただ護自身は自分の非を全て認め、〈番〉となったΩを衆人に晒し、護なりに光流に害が及ばないよう動いていたと聞いた。
だからと言って許せる事でもないし光流の話を聞いて少々思うところもあるけれど、それでも親元を離れて1人で歩き出した護の邪魔をしようとは思わない。
茉希さんに知られればまた甘いと叱られそうだけれど、それでも保身に走らず光流を守ろうとしたことは評価したいんだ。
あちらのΩは護に見切りを付けたのか思った以上に早い段階であの部屋を出たのが意外ではあったけれど、時折耳に入る彼女は不幸でもなければ幸せでもない、可もなく不可も無い生活を送っているようだ。
それなりの相手とそれなりの生活。欲しい物はそれなりに手に入るのだろうけれど、彼女の思い描いた未来はこんな物だったのだろうか?
護と同じ学校にΩである彼女が入学するためには人一倍頑張ったはずだ。それなのに辿り着いた先が〈それなり〉で良かったのだろうか?
偶然に同じ会場に居合わせてしまい、こちらを見て青くなった彼女は〈護を騙したΩ〉と認識していたオレの想像よりも小さくて儚げな感じで驚かされた。アレで百戦錬磨なのだから護が引っかかるのも仕方がなかったのかもしれない。
そして、彼と彼のΩの話題が過去のものとして扱われるようになって次の標的だとでもいうように流れ始めた噂。
〈光流にパートナーが出来たらしい〉
当然だがこちらは何も発信していないし、紬君が自分で吹聴するとも思えない。
そもそも紬君と光流は対面するまでお互いのことを全く知らなかったのだから〈パートナー〉だなんで噂が出ること自体おかしいのだ。
けれども人の噂とは恐ろしいもので光流と紬君が出会う前から〈辻崎のΩには意中の相手がいるようだ〉という話が出るのだから驚きだ。
光流と紬君を引き合わせた今回の功労者の彼女はそんな駆け引きのできるタイプではないどころか、安形さんの話では忠犬のように光流を慕っているとのことだから彼女を疑う余地はない。
とすればサロンで話を聞いていた誰かであったり、紬君の関係者の中に勘のいい者がいたのだろう。
こちらとしてはそれに便乗するような人間や、相手を見極めることなく妨害するような人間を精査する機会でもあるから傍観を決め込んだけれど、なかなか面白い事も起こっていたようだ。
紬 結斗は将来有望だ。
そんなふうに結論づけて問題ないだろう。普段からαとして生活していなかった彼だけどα社会ではちゃんと認知されており、縁を結ぼうと動いていたΩもいたようで、ただ辻崎から見合いを打診した時同様本人に話が行く前に断られたり、本人に行き着きたくてものらりくらりと躱されたりでそもそも縁を繋ぐことが難しかったようだ。
2人とも大人なんだからその辺は2人のタイミングで好きにすればいい。
護との付き合いで多少の触れ合いはあったかもしれないけれど、一線を超えた様子は無かったから紬君に任せるしかないのだけど…彼の経歴からして心配することはないだろう。
会ってみて気に入らなければ盛大に邪魔をしてやろうと思っていたのに、それなのに紬君を見つけた途端表情が変わった光流を見てしまったらそんな気も失せた。
〈人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ〉と先人も言っている。
馬に蹴られて死ぬのはごめんだし、成人した弟であっても光流のことが可愛くて仕方がない俺にとって、1番重要視するべきは光流の気持ちなのだ。
護の時のように足りないならば自分が補えば、なんて思ってはいない。
足りないのなら2人で補い合えばいいのだ。
幸いなことに紬君にはそれなりの矜持もあるようだし、光流だっていつまでも子どもじゃない。紬君と出会った事で自分の将来を考えるようになっただけで成長したと思うのは流石に兄馬鹿過ぎるだろうか。
仲睦まじい光流と紬君を見て安心したものの、事あるごとに思い出してしまう彼の事。まだまだ光流の心の片隅に居続ける彼のことを紬君はどう思っているのだろう。
口さがない者たちは護が〈辻崎〉との縁を無くしたと知るや否やそれらしい事を風潮しつつ攻撃に出る者、自分の元に取り入れようとする者とでそれなりの攻防があったらしい。
ただ護自身は自分の非を全て認め、〈番〉となったΩを衆人に晒し、護なりに光流に害が及ばないよう動いていたと聞いた。
だからと言って許せる事でもないし光流の話を聞いて少々思うところもあるけれど、それでも親元を離れて1人で歩き出した護の邪魔をしようとは思わない。
茉希さんに知られればまた甘いと叱られそうだけれど、それでも保身に走らず光流を守ろうとしたことは評価したいんだ。
あちらのΩは護に見切りを付けたのか思った以上に早い段階であの部屋を出たのが意外ではあったけれど、時折耳に入る彼女は不幸でもなければ幸せでもない、可もなく不可も無い生活を送っているようだ。
それなりの相手とそれなりの生活。欲しい物はそれなりに手に入るのだろうけれど、彼女の思い描いた未来はこんな物だったのだろうか?
護と同じ学校にΩである彼女が入学するためには人一倍頑張ったはずだ。それなのに辿り着いた先が〈それなり〉で良かったのだろうか?
偶然に同じ会場に居合わせてしまい、こちらを見て青くなった彼女は〈護を騙したΩ〉と認識していたオレの想像よりも小さくて儚げな感じで驚かされた。アレで百戦錬磨なのだから護が引っかかるのも仕方がなかったのかもしれない。
そして、彼と彼のΩの話題が過去のものとして扱われるようになって次の標的だとでもいうように流れ始めた噂。
〈光流にパートナーが出来たらしい〉
当然だがこちらは何も発信していないし、紬君が自分で吹聴するとも思えない。
そもそも紬君と光流は対面するまでお互いのことを全く知らなかったのだから〈パートナー〉だなんで噂が出ること自体おかしいのだ。
けれども人の噂とは恐ろしいもので光流と紬君が出会う前から〈辻崎のΩには意中の相手がいるようだ〉という話が出るのだから驚きだ。
光流と紬君を引き合わせた今回の功労者の彼女はそんな駆け引きのできるタイプではないどころか、安形さんの話では忠犬のように光流を慕っているとのことだから彼女を疑う余地はない。
とすればサロンで話を聞いていた誰かであったり、紬君の関係者の中に勘のいい者がいたのだろう。
こちらとしてはそれに便乗するような人間や、相手を見極めることなく妨害するような人間を精査する機会でもあるから傍観を決め込んだけれど、なかなか面白い事も起こっていたようだ。
紬 結斗は将来有望だ。
そんなふうに結論づけて問題ないだろう。普段からαとして生活していなかった彼だけどα社会ではちゃんと認知されており、縁を結ぼうと動いていたΩもいたようで、ただ辻崎から見合いを打診した時同様本人に話が行く前に断られたり、本人に行き着きたくてものらりくらりと躱されたりでそもそも縁を繋ぐことが難しかったようだ。
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