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第49話 チョコレート
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「これ! これが一番おいしい!」
「じゃあ白黒すいかとりんご練乳とボークリームのブレンド割合はこんな感じで」
「完全に甘いミルクチョコレートだね」
「あとカカオの香ばしい甘すぎないやつも作ったし」
「ホワイトチョコレートにいろいろ着色したのもできたし」
「各種ナッツやフルーツのペーストも完成した」
「買ってきた見本の高級チョコレートセットもあるよ」
「さあお菓子職人よ、存分に作りたまえ」
「……あの……わたしはお菓子職人ではないのだが……」
「モブにしか繊細なお菓子は任せられないよ」
「くっほめられてる、だが流されんぞ」
「王太子なら国民の望んでいるものを作って差し上げろよ」
「それは使用人の仕事ではないか?」
「みんなに注目されてほめられてちやほやされるぞ」
「注目……わ、わかった。しかたがない。ほかにやることもないし」
「やったー! モブのチョコレート楽しみにしてるね」
「あ、ああ任せておけ」
「チョロすぎ」
「む?」
「なんでもない。これで準備は万端だな」
「ところでこれはなんの準備なんだ?」
「愛の告白イベントだよ」
「好きな人にチョコレートを配るんだ」
「あ、ああ、愛? 配る?! なんだその浮ついたイベントは!」
「友達同士とか家族で贈りあったりもするけど」
「チョコレートはむかし媚薬とも言われていたからな」
「お菓子業界の陰謀だって説が有力らしいけど」
「いや、お菓子業界はしかけたけど全然売れなかったらしいぞ」
「少女漫画とかで流行ったのかな?」
「ちょ、ちょっと待て、陰謀で少女に媚薬を盛るのか?! そんなイベントに手を貸していいのだろうか……」
「大丈夫だって。これは媚薬じゃないし、そもそもここはお菓子業界存在しないじゃん。いや、モブがある意味お菓子業界代表なんだけど」
「わたしが代表?」
「もういまでは『王太子の』ってついたら完全にお菓子のブランドとして定着したからな」
「それってわたしが王太子ではなくなったらどうなるんだ?」
「王太子クビってこと?」
「いや、そのうち王になるんだが……」
「え、それって王になっても自分でお菓子作ってる予定なの?」
「おまえの将来設計どうなってんだ。そのころまでには後進育てておけよ、計画的にな」
「ええ……」
「ぐるう」
「おお、チョコどのは慰めてくれるのか?」
「王になってもお菓子は作ってくれって」
「ええ……」
*****
「あら、これいいじゃない。すてきだわ」
「ペス、あんまり食べ過ぎたら鼻血出るよ」
「本当にトラは相変わらずデリカシーってものがまるっきり欠如してるわね」
「このピンクのチョコレートはかわいいしおいしいわ。ジャムが入ってるのかしら」
「俺はこのナッツ風味のビターチョコレートが好きだな。でも姫さまのチョコレートが一番好きだよ」
「勇者様(それはスーパーの売れ残りよ)」
「これは見事な装飾だな。味も舌ざわりも高級チョコレート並だ。向こうでも売れるぞ」
「どれも~おいしそうねえ~」
「おおお、なんと美しい、なんと香しい、なんたる美味! 多種多様な見た目や味のチョコレートが並べられてやがる! 芸術ですぞ! 王太子殿下!」
「料理長が壊れた」
「あ、ありがとう。うれしいよ」
「これなら大丈夫そうだな。とりあえず貴族向けに二千セットくらい売りさばこうか」
「に、二千?! そんなに作れないよ」
「あと庶民向けのセットも」
「一万セットよ。徹夜でおやりなさいね。ほかにやることなんかないでしょう?」
「母上?!」
「これはとてもいいものだわ。わたくしあなたならやれると信じているのよ」
「母上……わかりました」
「なんという愛情支配型虐待」
「ふふふ、この子はこうでもしないとすぐにサボるのよ。せっかくひとつ取り柄が見つかったんだからいまのうちに限界まで活用しないと」
「使いつぶす系パワハラ上司だ」
「お母さま、お兄さまはチョコレートケーキも作るって言ってたわ」
「まあケーキのほうは凝った装飾必要ないんでモブには上に乗せるチョコレートの飾りだけ作ってもらおうかと」
「こういうやつね」
「あらあら華やかね。貴族にもバッカバッカ売れてガッポガッポよ」
「この王妃商魂たくましいな」
「お母さまは商家出身だから」
「あれ? えらい貴族じゃないの?」
「一応伯爵家だけど、この国はその辺あまりうるさくないのよ」
「隣のナンツャラー王国だと貴族同士の内戦になるかもしれんな」
「あそこはいつも内部でもめてますわね。こちらとしては楽でいいですけど」
「王族の黒い発言怖い」
「じゃあ白黒すいかとりんご練乳とボークリームのブレンド割合はこんな感じで」
「完全に甘いミルクチョコレートだね」
「あとカカオの香ばしい甘すぎないやつも作ったし」
「ホワイトチョコレートにいろいろ着色したのもできたし」
「各種ナッツやフルーツのペーストも完成した」
「買ってきた見本の高級チョコレートセットもあるよ」
「さあお菓子職人よ、存分に作りたまえ」
「……あの……わたしはお菓子職人ではないのだが……」
「モブにしか繊細なお菓子は任せられないよ」
「くっほめられてる、だが流されんぞ」
「王太子なら国民の望んでいるものを作って差し上げろよ」
「それは使用人の仕事ではないか?」
「みんなに注目されてほめられてちやほやされるぞ」
「注目……わ、わかった。しかたがない。ほかにやることもないし」
「やったー! モブのチョコレート楽しみにしてるね」
「あ、ああ任せておけ」
「チョロすぎ」
「む?」
「なんでもない。これで準備は万端だな」
「ところでこれはなんの準備なんだ?」
「愛の告白イベントだよ」
「好きな人にチョコレートを配るんだ」
「あ、ああ、愛? 配る?! なんだその浮ついたイベントは!」
「友達同士とか家族で贈りあったりもするけど」
「チョコレートはむかし媚薬とも言われていたからな」
「お菓子業界の陰謀だって説が有力らしいけど」
「いや、お菓子業界はしかけたけど全然売れなかったらしいぞ」
「少女漫画とかで流行ったのかな?」
「ちょ、ちょっと待て、陰謀で少女に媚薬を盛るのか?! そんなイベントに手を貸していいのだろうか……」
「大丈夫だって。これは媚薬じゃないし、そもそもここはお菓子業界存在しないじゃん。いや、モブがある意味お菓子業界代表なんだけど」
「わたしが代表?」
「もういまでは『王太子の』ってついたら完全にお菓子のブランドとして定着したからな」
「それってわたしが王太子ではなくなったらどうなるんだ?」
「王太子クビってこと?」
「いや、そのうち王になるんだが……」
「え、それって王になっても自分でお菓子作ってる予定なの?」
「おまえの将来設計どうなってんだ。そのころまでには後進育てておけよ、計画的にな」
「ええ……」
「ぐるう」
「おお、チョコどのは慰めてくれるのか?」
「王になってもお菓子は作ってくれって」
「ええ……」
*****
「あら、これいいじゃない。すてきだわ」
「ペス、あんまり食べ過ぎたら鼻血出るよ」
「本当にトラは相変わらずデリカシーってものがまるっきり欠如してるわね」
「このピンクのチョコレートはかわいいしおいしいわ。ジャムが入ってるのかしら」
「俺はこのナッツ風味のビターチョコレートが好きだな。でも姫さまのチョコレートが一番好きだよ」
「勇者様(それはスーパーの売れ残りよ)」
「これは見事な装飾だな。味も舌ざわりも高級チョコレート並だ。向こうでも売れるぞ」
「どれも~おいしそうねえ~」
「おおお、なんと美しい、なんと香しい、なんたる美味! 多種多様な見た目や味のチョコレートが並べられてやがる! 芸術ですぞ! 王太子殿下!」
「料理長が壊れた」
「あ、ありがとう。うれしいよ」
「これなら大丈夫そうだな。とりあえず貴族向けに二千セットくらい売りさばこうか」
「に、二千?! そんなに作れないよ」
「あと庶民向けのセットも」
「一万セットよ。徹夜でおやりなさいね。ほかにやることなんかないでしょう?」
「母上?!」
「これはとてもいいものだわ。わたくしあなたならやれると信じているのよ」
「母上……わかりました」
「なんという愛情支配型虐待」
「ふふふ、この子はこうでもしないとすぐにサボるのよ。せっかくひとつ取り柄が見つかったんだからいまのうちに限界まで活用しないと」
「使いつぶす系パワハラ上司だ」
「お母さま、お兄さまはチョコレートケーキも作るって言ってたわ」
「まあケーキのほうは凝った装飾必要ないんでモブには上に乗せるチョコレートの飾りだけ作ってもらおうかと」
「こういうやつね」
「あらあら華やかね。貴族にもバッカバッカ売れてガッポガッポよ」
「この王妃商魂たくましいな」
「お母さまは商家出身だから」
「あれ? えらい貴族じゃないの?」
「一応伯爵家だけど、この国はその辺あまりうるさくないのよ」
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