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第51話 アース山
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「ふう、もうすぐだな」
「山登りなんて初めてだよ。クマモトにこんな山あったんだね」
「果樹園よりさらに奥、東に馬車で二日も来たからな」
「ふもとまでしか馬車が入れないんですけどね」
「山だししょうがないよね」
「一応登山道はそれなりに整備されているんですが」
「結構山奥まで入ってきたよな」
「でも森のなかなのにところどころ枯れた木があってなんか明るい」
「確かに。そういう木なのかなんか食害する虫か動物がいるのか。それとも病気か?」
「この辺りは木だけではなく虫や動物も、まれに人も死ぬことがあるようです」
「えっ? なにか危険なものでもいるの?」
「よくわかってはいませんが、近づくと危険な場所はわかっています。新たにできる場合もあるようですが、見分けかたもわかっているのでご安心を」
「へえ。特になにもないけど決まった場所で死ぬ。山のなか。んーなんか出てきそう」
「えっ? なんか出るの?!」
「いや、思い出しそうってこと」
「なにかご存じなのですか?」
「どこかで聞いたことあるような」
「日本?」
「たまご」
「たまご?」
「なんか関係あったような」
「たしか危険な場所では卵の匂いがするとかいう情報もあったと思います」
「匂い……ああ! それだ! 腐った卵の臭いといえば?」
「え? ……ピータン?!」
「なんでだよ」
「たまごだよ」
「ピータンでは死なないだろ」
「ええ? じゃあ先生のおなら」
「ああ……ってそれじゃなくて」
「じゃあ」
「もういいよ。温泉だよ、温泉」
「温泉? 温泉卵?」
「いや、それは関係ない」
「どういうこと?」
「温泉が湧くようなところはいっしょに地下からガスが漏れてくることがあって、硫化水素ガスが含まれてるとそういう臭いがするんだよ」
「腐った卵の臭いで死ぬの?」
「硫化水素は毒だからな」
「毒ガス」
「それよりもっと怖いのはまったく匂いがしない二酸化炭素とかその他のガスだな。気づかないうちに意識がなくなって死ぬ」
「なにそれ怖い」
「そういうガスが溜まりやすいくぼみとかが危険なんだ。そういう地形を避ければ大丈夫」
「なるほど。さすが賢者様ですね」
「いや、日本ならだれでも知ってるよ、たぶん」
「だれでも」
「あ、虎彦は別な」
「それでは温泉も危険なのでしょうか」
「日本だと温泉は普通源泉を引いてきて別の場所で入るし、強制換気が義務付けられてたりするからなあ」
「湧いてるとこに直接入ると危ないの?」
「泉質とか地形にもよるだろうけど、ガスが溜まらなければ大丈夫だ。きっとむかしからみんなが入ってるところは安全なんだろうな」
「確かに。危ないとこは入らなくなるよね」
「それかなにかしらの対策をする」
「あ、今夜の宿が見えてきましたよ」
「おお、やっとか」
「ずっと馬車ばっか乗ってたからこんなに歩くの久しぶりだよ」
「馬車では通れない道で大変申し訳ないことでございます」
「なんでエドさんが謝るの? 山登り楽しいよ」
「俺はもうしばらく歩きたくない」
「この宿には温泉がありますので疲れが癒えると思いますよ」
「やっぱ温泉湧いてるんだ」
「やったー! 温泉宿!」
「あ、トラ様!」
「俺は追いかけないぞ」
「ぐるう」
「あ、チョコ、どこ行ってたんだ?」
「山のなかを見回っていたようですね」
「ぐる?」
「ん? 虎彦なら先に宿に行ったぞ」
「る」
「なんか言いたいことがあるのか? 急ぎじゃなければ風呂入って飯食ってからにしようぜ」
「ぐる」
「山登りなんて初めてだよ。クマモトにこんな山あったんだね」
「果樹園よりさらに奥、東に馬車で二日も来たからな」
「ふもとまでしか馬車が入れないんですけどね」
「山だししょうがないよね」
「一応登山道はそれなりに整備されているんですが」
「結構山奥まで入ってきたよな」
「でも森のなかなのにところどころ枯れた木があってなんか明るい」
「確かに。そういう木なのかなんか食害する虫か動物がいるのか。それとも病気か?」
「この辺りは木だけではなく虫や動物も、まれに人も死ぬことがあるようです」
「えっ? なにか危険なものでもいるの?」
「よくわかってはいませんが、近づくと危険な場所はわかっています。新たにできる場合もあるようですが、見分けかたもわかっているのでご安心を」
「へえ。特になにもないけど決まった場所で死ぬ。山のなか。んーなんか出てきそう」
「えっ? なんか出るの?!」
「いや、思い出しそうってこと」
「なにかご存じなのですか?」
「どこかで聞いたことあるような」
「日本?」
「たまご」
「たまご?」
「なんか関係あったような」
「たしか危険な場所では卵の匂いがするとかいう情報もあったと思います」
「匂い……ああ! それだ! 腐った卵の臭いといえば?」
「え? ……ピータン?!」
「なんでだよ」
「たまごだよ」
「ピータンでは死なないだろ」
「ええ? じゃあ先生のおなら」
「ああ……ってそれじゃなくて」
「じゃあ」
「もういいよ。温泉だよ、温泉」
「温泉? 温泉卵?」
「いや、それは関係ない」
「どういうこと?」
「温泉が湧くようなところはいっしょに地下からガスが漏れてくることがあって、硫化水素ガスが含まれてるとそういう臭いがするんだよ」
「腐った卵の臭いで死ぬの?」
「硫化水素は毒だからな」
「毒ガス」
「それよりもっと怖いのはまったく匂いがしない二酸化炭素とかその他のガスだな。気づかないうちに意識がなくなって死ぬ」
「なにそれ怖い」
「そういうガスが溜まりやすいくぼみとかが危険なんだ。そういう地形を避ければ大丈夫」
「なるほど。さすが賢者様ですね」
「いや、日本ならだれでも知ってるよ、たぶん」
「だれでも」
「あ、虎彦は別な」
「それでは温泉も危険なのでしょうか」
「日本だと温泉は普通源泉を引いてきて別の場所で入るし、強制換気が義務付けられてたりするからなあ」
「湧いてるとこに直接入ると危ないの?」
「泉質とか地形にもよるだろうけど、ガスが溜まらなければ大丈夫だ。きっとむかしからみんなが入ってるところは安全なんだろうな」
「確かに。危ないとこは入らなくなるよね」
「それかなにかしらの対策をする」
「あ、今夜の宿が見えてきましたよ」
「おお、やっとか」
「ずっと馬車ばっか乗ってたからこんなに歩くの久しぶりだよ」
「馬車では通れない道で大変申し訳ないことでございます」
「なんでエドさんが謝るの? 山登り楽しいよ」
「俺はもうしばらく歩きたくない」
「この宿には温泉がありますので疲れが癒えると思いますよ」
「やっぱ温泉湧いてるんだ」
「やったー! 温泉宿!」
「あ、トラ様!」
「俺は追いかけないぞ」
「ぐるう」
「あ、チョコ、どこ行ってたんだ?」
「山のなかを見回っていたようですね」
「ぐる?」
「ん? 虎彦なら先に宿に行ったぞ」
「る」
「なんか言いたいことがあるのか? 急ぎじゃなければ風呂入って飯食ってからにしようぜ」
「ぐる」
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