72 / 116
第67話 勇者伝説
しおりを挟む
『勇者はそのとき持っていた木の枝を振るってこう言った「たこ殴りや!」お供のイゥヌは走って吠え、ゥサルは火の玉を投げつけ、トリゥは剣を突き刺した』
「これいつまで続くんだろ」
「このかたも正気に戻らないタイプの人でしたか」
『こうして魔王四天王の一角であるモモンタクッ・マジナッは倒された。とこういう……あれ? どうしました?』
「えっと、お供がイヌ、サル、トリなのは勇者が決めたの?」
『もちろん勇者様が名付けたと言われています。もしかしてなにか意味があるんですか?』
「むかし話に出てくるキャラなんだよ。その勇者ふざ」
『やはり勇者様は伝説になぞらえてお供を名付けられたのですね! ちゃんと役割通りに振舞うことを重視していたようですからなにか呪術的な意味があったのかもしれませんね』
「そんなことはないと思うけど」
「その、勇者伝説は東のほうが多く残っているそうですけど、どういう理由なんでしょうか」
『そりゃ勇者様は東から来たからですよ。東の外れの海辺に流れ着いた大きな薄紅色の球体に入っていたそうですよ』
「ええ……」
『子どものころにそれを見せられた勇者様は「やっぱわいももたろうちゃうか」って言いだしたらしいですね』
「この辺の言葉とは違うんですね」
『なぜか生まれたときから周りと違う言葉を話していたそうです』
「どこから来たんだろうね?」
『怒られたときの口癖が「せんせにゆうで」だったらしいですよ。みんな意味がわからなかったようです』
「なんかいやな感じがする」
『魔王四天王に捕らえられていた賢者に出会ってからはとてもいい子になったと言われています』
「そのころ何歳?」
『五~六歳だと思います。賢者が十六歳でほぼ十歳差だったはずですから』
「賢者はどこから来たの?」
『賢者は魔王四天王に捕らえられていたんですが、なぜか「四天王は悪くないわ。わたしを保護してくれたの」って言ったそうです。洗脳されてたんでしょうか』
「絶対悪くないやつ」
『倒された四天王も改心してそれからは勇者様と賢者といっしょに暮らしたそうです』
「たぶん最初から悪くないやつ」
「ほかの四天王っていうのはどうなったのでしょうか」
『勇者様たちは見つけられなかったようです』
「ん? じゃあ魔王は?」
『勇者様が作った巨大渓谷に阻まれて魔王はこちらに来れなくなったようです。そのあとしばらく魔法が使えなくなりましたが』
「勇者が魔王を倒したんじゃないの?」
『いいえ、当時国境付近で常にいさかいがあったのを憂いた賢者が仲裁することを勇者様に進言したようですが、その結果キレた勇者様が魔法を暴発させあの渓谷ができたようです。ですから魔王とは直接関係ありませんね』
「え、じゃあ魔法が使えなくなったのは魔王が倒されたからじゃなくて、勇者がデカい魔法を使ったから?」
『まあそうなりますね』
「(なんだ、そうか……)じゃあ魔王が倒されたあとも魔法が使えるのはおかしくないんですよね?」
『ん? まあそうですね。ちなみに勇者様が魔法を使うときには「この線から入ってくんなよ!」と言ったそうです』
「迷惑系勇者じゃん……」
「ずいぶん太い線ですね」
『東の端から魔法を打ったので、西のほうに行くに連れて幅が広くなっています。勇者様が十歳くらいのころの話なんですよ。すごいですよね!』
「すごいかすごくないかで言ったらすごいけど」
「それで結局魔王は倒さず四天王も見つけられずに事故で渓谷を作って魔法を使えなくしたその子はそのあとなにをして勇者と認定されたんですか?」
『え? 四天王から賢者を救った時点で勇者確定ですけど?』
「ザルい」
「勇者が学校を作ったって話を聞きましたけど」
『ああ、学校を整備したのは賢者ですね。四天王マジナッといっしょに孤児院を開いたり保育園や学校を建てたりしたようです』
「めっちゃいい人じゃん」
『この魔導都市の中心にある魔導学院を作ったのもマジナッだと言われていますよ』
「断然そっちのほうがすごいじゃん」
『勇者も学校や魔導学院に通ったそうです。そのときの話が』
「あ、それは結構です」
「賢者様も勇者と同じ世界から来たはずですが、なにかそれについては残ってないんでしょうか?」
『ああ、賢者はねえ、意味わからんですけど「きょういんめんきょとかんりえいようし取っといてよかった」とか言ってたらしいですよ。なんなんでしょうね?』
「絶対優秀なやつ」
『あと四天王マジナッも「僕の研究が引き継げる人に巡り合えて幸せだよ。だいがくでもなかなか理解されなかったからねえ。ここにからすくんがいてくれたら助かったのになあ」とよく言っていたそうです。なにがなんだかわかりませんよね』
「絶対日本人なやつ」
「その四天王マジナッの資料はないんですか?」
『マジナッ学長の書き残した謎の暗号はいまでも学院資料館に展示されてますよ』
「辰巳回収してそれ見に行こう」
『それより勇者様の話もっとしましょうよ~』
「え、いや、もういいかな」
「これいつまで続くんだろ」
「このかたも正気に戻らないタイプの人でしたか」
『こうして魔王四天王の一角であるモモンタクッ・マジナッは倒された。とこういう……あれ? どうしました?』
「えっと、お供がイヌ、サル、トリなのは勇者が決めたの?」
『もちろん勇者様が名付けたと言われています。もしかしてなにか意味があるんですか?』
「むかし話に出てくるキャラなんだよ。その勇者ふざ」
『やはり勇者様は伝説になぞらえてお供を名付けられたのですね! ちゃんと役割通りに振舞うことを重視していたようですからなにか呪術的な意味があったのかもしれませんね』
「そんなことはないと思うけど」
「その、勇者伝説は東のほうが多く残っているそうですけど、どういう理由なんでしょうか」
『そりゃ勇者様は東から来たからですよ。東の外れの海辺に流れ着いた大きな薄紅色の球体に入っていたそうですよ』
「ええ……」
『子どものころにそれを見せられた勇者様は「やっぱわいももたろうちゃうか」って言いだしたらしいですね』
「この辺の言葉とは違うんですね」
『なぜか生まれたときから周りと違う言葉を話していたそうです』
「どこから来たんだろうね?」
『怒られたときの口癖が「せんせにゆうで」だったらしいですよ。みんな意味がわからなかったようです』
「なんかいやな感じがする」
『魔王四天王に捕らえられていた賢者に出会ってからはとてもいい子になったと言われています』
「そのころ何歳?」
『五~六歳だと思います。賢者が十六歳でほぼ十歳差だったはずですから』
「賢者はどこから来たの?」
『賢者は魔王四天王に捕らえられていたんですが、なぜか「四天王は悪くないわ。わたしを保護してくれたの」って言ったそうです。洗脳されてたんでしょうか』
「絶対悪くないやつ」
『倒された四天王も改心してそれからは勇者様と賢者といっしょに暮らしたそうです』
「たぶん最初から悪くないやつ」
「ほかの四天王っていうのはどうなったのでしょうか」
『勇者様たちは見つけられなかったようです』
「ん? じゃあ魔王は?」
『勇者様が作った巨大渓谷に阻まれて魔王はこちらに来れなくなったようです。そのあとしばらく魔法が使えなくなりましたが』
「勇者が魔王を倒したんじゃないの?」
『いいえ、当時国境付近で常にいさかいがあったのを憂いた賢者が仲裁することを勇者様に進言したようですが、その結果キレた勇者様が魔法を暴発させあの渓谷ができたようです。ですから魔王とは直接関係ありませんね』
「え、じゃあ魔法が使えなくなったのは魔王が倒されたからじゃなくて、勇者がデカい魔法を使ったから?」
『まあそうなりますね』
「(なんだ、そうか……)じゃあ魔王が倒されたあとも魔法が使えるのはおかしくないんですよね?」
『ん? まあそうですね。ちなみに勇者様が魔法を使うときには「この線から入ってくんなよ!」と言ったそうです』
「迷惑系勇者じゃん……」
「ずいぶん太い線ですね」
『東の端から魔法を打ったので、西のほうに行くに連れて幅が広くなっています。勇者様が十歳くらいのころの話なんですよ。すごいですよね!』
「すごいかすごくないかで言ったらすごいけど」
「それで結局魔王は倒さず四天王も見つけられずに事故で渓谷を作って魔法を使えなくしたその子はそのあとなにをして勇者と認定されたんですか?」
『え? 四天王から賢者を救った時点で勇者確定ですけど?』
「ザルい」
「勇者が学校を作ったって話を聞きましたけど」
『ああ、学校を整備したのは賢者ですね。四天王マジナッといっしょに孤児院を開いたり保育園や学校を建てたりしたようです』
「めっちゃいい人じゃん」
『この魔導都市の中心にある魔導学院を作ったのもマジナッだと言われていますよ』
「断然そっちのほうがすごいじゃん」
『勇者も学校や魔導学院に通ったそうです。そのときの話が』
「あ、それは結構です」
「賢者様も勇者と同じ世界から来たはずですが、なにかそれについては残ってないんでしょうか?」
『ああ、賢者はねえ、意味わからんですけど「きょういんめんきょとかんりえいようし取っといてよかった」とか言ってたらしいですよ。なんなんでしょうね?』
「絶対優秀なやつ」
『あと四天王マジナッも「僕の研究が引き継げる人に巡り合えて幸せだよ。だいがくでもなかなか理解されなかったからねえ。ここにからすくんがいてくれたら助かったのになあ」とよく言っていたそうです。なにがなんだかわかりませんよね』
「絶対日本人なやつ」
「その四天王マジナッの資料はないんですか?」
『マジナッ学長の書き残した謎の暗号はいまでも学院資料館に展示されてますよ』
「辰巳回収してそれ見に行こう」
『それより勇者様の話もっとしましょうよ~』
「え、いや、もういいかな」
0
あなたにおすすめの小説
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!
ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!?
夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。
しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。
うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。
次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。
そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。
遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。
別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。
Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって!
すごいよね。
―――――――――
以前公開していた小説のセルフリメイクです。
アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。
基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。
1話2000~3000文字で毎日更新してます。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる