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第104話 魔導学院の緑の屋根
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「で、あんたが百田のおっさんってことで間違いないな?」
「そうだけど、君はだれなんだい?」
「タツ様、失礼ですよ」
「わたいが紹介しましょ。このかたは」
「それより先にしたの女の人と合流したほうがよくない?」
「トラ様……」
「……ええけど」
「それじゃあしたに『コンコン、くまさん戻ってらっしゃるんですか?』来ちゃったねえ」
「これだけ大騒ぎしとったら気づかはるわな」
「殿下、お入り。ちょっとお客さんが来ていてね。騒がしくてごめんね」
「え? いつのまに? こんなにいっぱい??」
「狭いよなこの部屋」
「いやわてらが押しかけたせいやろ」
「タツ様、ちょくちょく失礼ですよ」
「とりあえず一階に降りようか」
「ええ、お茶でも淹れますね……」
「お、廊下はきれいにしてるな」
「部屋が荒れたのはわてらのせいやろ」
「カラスくんのツッコミを聞くのはなんだか久しぶりだねえ」
「百年ぶりでしょ」
「君のツッコミもなかなかするどいねえ」
「のんびりしたかたですね」
「そやな。変わってなくてびっくりや」
「カーさんハンカチ持ってます?」
「うるさいなあ」
「おお、リビングは広くてきれいだな」
「あれ? あっちはちょっと内装凝ってるね」
「ログハウス風か?」
「いや、あっちがこの家の本体だよ。増築してるうちにもとの家がすっぽり入る大きさになっちゃったんだ」
「むかしはあの狭い空間に三人で暮らしていたこともあるんですよ。新しい家を建てても懐かしくて取り壊せなくて。屋根も同じ色にしたんです。お茶をどうぞ」
「いただきまーす」
「そういえばさっきから後ろで泣いてる人は大丈夫なのかい?」
「ん? なにもじもじしてんだ?」
「うわべちょべちょだね」
「ハンカチじゃ足りませんね」
「あらあらタオルを持ってくるわね」
「なんか言ったらどうだ?」
「ぅうムリじゃあ……」
「ほら、お顔を拭いて。あんまり擦っちゃダメよ」
「ぅうぅ……」
「余計ひどくなるな」
「あんまり優しくしないほうが彼のためかもしれません」
「やだぁ優しくしてえ……」
「それはさすがに気持ち悪い」
「……太郎くん?」
「んぇ?」
「太郎くんよね? いままでどこに行ってたの? 心配したんだから!」
「うえぇぇぇ……」
「決壊した」
「ずっと会いたかったんだもんね」
「ごめ゙ん゙な゙ざい゙ぃ゙」
「あらあらどうしたの? 大きくなっても泣き虫ねえ。顔洗いましょ」
「強すぎる」
「よかったねえ」
「えっと、あの人本当に桃太郎くんなのかい?」
「あれ?」
「桃太郎くんはもっとこんくらいちっちゃいはずだけど」
「そんなわけないだろ」
「だってこないだだって『おっちゃん覚悟せえ!』ってじゃれてきて可愛いもんだったんだぞ」
「それは何年まえの話ですか?」
「……五十年くらいまえだったかなあ?」
「こじれた原因の半分はこいつだな」
「せんせ、相変わらず雑ですねえ」
「そしてそこはかとなく醸し出される強者の風格」
「まあみんなそろうまで雑談でもしてようか」
「紹介はおあずけかいな」
「話が進まないグダグダ感がやっぱ持ち味だよね」
「もっとぱっと話してさっと引き上げるつもりやったわ」
「そんなうまくいくわけないじゃん。誘拐でもあるまいし」
「人聞きの悪い」
「もしかして僕を誘拐しに来たのかい?」
「なんでわてらがそんなことする必要ありますの」
「それよりワイバーン串かなんか出してよ」
「虎彦、俺は食糧庫じゃないぞ」
「とかいいながらテーブルが見えんくらい出すのはやめんかい」
「腹ごしらえしないとむぐ、いつ話が始まるかわからんからな」
「こっちの桃太郎はなにやってるのかな」
「ん? こっちの桃太郎?」
「その説明はあとでね」
「おあずけが多すぎて微妙にストレス溜まるなあ」
「それより二人は久しぶりに会ってなんか積もる話とかないの?」
「ないな」
「ないねえ」
「なんでこんな苦労して会いに来たんだ……」
「カーさん恥ずかしがってるんですか?」
「別にそうゆうんと違て……いや生きてはったからもうええかて」
「なに照れてるんだ?」
「ほう、魔王の力が見たいらしいな」
「はいはい、ヒマだからってじゃれ合わないでください」
「カラスくん、仲のいい友達ができてよかったねえ」
「はあっ?!」
「違う方向から攻撃が入った」
「君は仕事ばかりでそういう姿を見たことがなかったから心配だったんだよ」
「!?」
「クリティカルヒットだな」
「と、友達くらいいるわ!」
「百年くらいぼっちで四百年近くドラゴンだけが友達でしたよね?」
「どうしてそこでたたみかけるんだ」
「暗黒騎士団長の恨みかな」
「ぬぬぬ」
「なにもしゃべれなくなってる」
「お待たせしました」
「かたじけない」
「それでは情報共有の時間にしましょうか」
「あら、こんなにおいしそうなものが」
「もぐもぐ、やっぱたこやきはうまいのう」
「太郎くん、お行儀が悪いわよ」
「全然話が進まないね」
「まあ食べながら話しましょうか」
*****
「というわけで四百年後の未来から来たんだ」
「へえ、このおだんごおいしいねえ」
「聞けよ」
「聞いてるよ。カラスくんが魔王でぼっちでドラゴンと暗黒騎士団を仲間にして勇者をだまして勇者の息子くんたちと仲良くなったって話だよね?」
「ぐはあっ」
「うっなぜわたしにも攻撃を……」
「魔王に歴代最大ダメージ与えたのこの人なのでは?」
「それで迷子の桃太郎くんを連れてきてくれたんだよね?」
「うぐっ」
「ぐるる」
「強いね」
「流れ弾が四方八方に……」
「おっちゃんが四天王やったんはわいが正しかったやんか!」
「それを言うなら桃太郎くんも四天王だったんだろう?」
「うぐうぅっ」
「絶対に勝てない反逆を見せられている」
「それにしても殿下まで四天王とはねえ」
「確かにいままで勇者とか賢者とか言われてもピンと来なかったけど、魔王とか四天王とか言われてもやっぱり腑に落ちないわねえ」
「まあ魔王が知らない人じゃなくてよかったけどねえ」
「知り合いならいいんだ」
「で、僕の書いた手紙? ちょうど昨日書いて机の引き出しに入ってるんだけど、それと同じ内容だし、手品じゃなければ信じるしかないかな」
「なんでわてがわざわざこんなとこまで来て手品せなあきまへんの」
「カラスくんはときどき冗談かどうかわからないことを言うからなあ」
「このあとわたしたちがいなくなったんでしたっけ?」
「うん。わいが来たときにはもういてへんって言われたんや」
「あらあらそのときまで待って会いたいわねえ」
「『会えなかった』のが史実だからなあ。そこは変えないほうがいい」
「いまの太郎くんにもう会えないのは寂しいわねえ」
「桃太郎には四百年待たせるが賢者にはその年取った桃太郎がいるからな」
「年取ったっていうけど、太郎くん別にそんなに変ってないわよね」
「え?」
「ちょっと大きくなったけど、せいぜい三十代手前くらいかしら?」
「どう見てもはるかにじじいだろ」
「なんかくたびれてるだけで一晩寝てしゃんとしたら戻ると思うわ」
「そんなバカな」
「何晩いっしょに寝たと思ってるんだ」
「太郎くん夜更かしはダメよ。ちゃんと寝なさい」
「はーい」
「ちょっと気持ち悪い」
「殺人鬼が実家に帰ったらマザコンだったみたいな」
「そうだけど、君はだれなんだい?」
「タツ様、失礼ですよ」
「わたいが紹介しましょ。このかたは」
「それより先にしたの女の人と合流したほうがよくない?」
「トラ様……」
「……ええけど」
「それじゃあしたに『コンコン、くまさん戻ってらっしゃるんですか?』来ちゃったねえ」
「これだけ大騒ぎしとったら気づかはるわな」
「殿下、お入り。ちょっとお客さんが来ていてね。騒がしくてごめんね」
「え? いつのまに? こんなにいっぱい??」
「狭いよなこの部屋」
「いやわてらが押しかけたせいやろ」
「タツ様、ちょくちょく失礼ですよ」
「とりあえず一階に降りようか」
「ええ、お茶でも淹れますね……」
「お、廊下はきれいにしてるな」
「部屋が荒れたのはわてらのせいやろ」
「カラスくんのツッコミを聞くのはなんだか久しぶりだねえ」
「百年ぶりでしょ」
「君のツッコミもなかなかするどいねえ」
「のんびりしたかたですね」
「そやな。変わってなくてびっくりや」
「カーさんハンカチ持ってます?」
「うるさいなあ」
「おお、リビングは広くてきれいだな」
「あれ? あっちはちょっと内装凝ってるね」
「ログハウス風か?」
「いや、あっちがこの家の本体だよ。増築してるうちにもとの家がすっぽり入る大きさになっちゃったんだ」
「むかしはあの狭い空間に三人で暮らしていたこともあるんですよ。新しい家を建てても懐かしくて取り壊せなくて。屋根も同じ色にしたんです。お茶をどうぞ」
「いただきまーす」
「そういえばさっきから後ろで泣いてる人は大丈夫なのかい?」
「ん? なにもじもじしてんだ?」
「うわべちょべちょだね」
「ハンカチじゃ足りませんね」
「あらあらタオルを持ってくるわね」
「なんか言ったらどうだ?」
「ぅうムリじゃあ……」
「ほら、お顔を拭いて。あんまり擦っちゃダメよ」
「ぅうぅ……」
「余計ひどくなるな」
「あんまり優しくしないほうが彼のためかもしれません」
「やだぁ優しくしてえ……」
「それはさすがに気持ち悪い」
「……太郎くん?」
「んぇ?」
「太郎くんよね? いままでどこに行ってたの? 心配したんだから!」
「うえぇぇぇ……」
「決壊した」
「ずっと会いたかったんだもんね」
「ごめ゙ん゙な゙ざい゙ぃ゙」
「あらあらどうしたの? 大きくなっても泣き虫ねえ。顔洗いましょ」
「強すぎる」
「よかったねえ」
「えっと、あの人本当に桃太郎くんなのかい?」
「あれ?」
「桃太郎くんはもっとこんくらいちっちゃいはずだけど」
「そんなわけないだろ」
「だってこないだだって『おっちゃん覚悟せえ!』ってじゃれてきて可愛いもんだったんだぞ」
「それは何年まえの話ですか?」
「……五十年くらいまえだったかなあ?」
「こじれた原因の半分はこいつだな」
「せんせ、相変わらず雑ですねえ」
「そしてそこはかとなく醸し出される強者の風格」
「まあみんなそろうまで雑談でもしてようか」
「紹介はおあずけかいな」
「話が進まないグダグダ感がやっぱ持ち味だよね」
「もっとぱっと話してさっと引き上げるつもりやったわ」
「そんなうまくいくわけないじゃん。誘拐でもあるまいし」
「人聞きの悪い」
「もしかして僕を誘拐しに来たのかい?」
「なんでわてらがそんなことする必要ありますの」
「それよりワイバーン串かなんか出してよ」
「虎彦、俺は食糧庫じゃないぞ」
「とかいいながらテーブルが見えんくらい出すのはやめんかい」
「腹ごしらえしないとむぐ、いつ話が始まるかわからんからな」
「こっちの桃太郎はなにやってるのかな」
「ん? こっちの桃太郎?」
「その説明はあとでね」
「おあずけが多すぎて微妙にストレス溜まるなあ」
「それより二人は久しぶりに会ってなんか積もる話とかないの?」
「ないな」
「ないねえ」
「なんでこんな苦労して会いに来たんだ……」
「カーさん恥ずかしがってるんですか?」
「別にそうゆうんと違て……いや生きてはったからもうええかて」
「なに照れてるんだ?」
「ほう、魔王の力が見たいらしいな」
「はいはい、ヒマだからってじゃれ合わないでください」
「カラスくん、仲のいい友達ができてよかったねえ」
「はあっ?!」
「違う方向から攻撃が入った」
「君は仕事ばかりでそういう姿を見たことがなかったから心配だったんだよ」
「!?」
「クリティカルヒットだな」
「と、友達くらいいるわ!」
「百年くらいぼっちで四百年近くドラゴンだけが友達でしたよね?」
「どうしてそこでたたみかけるんだ」
「暗黒騎士団長の恨みかな」
「ぬぬぬ」
「なにもしゃべれなくなってる」
「お待たせしました」
「かたじけない」
「それでは情報共有の時間にしましょうか」
「あら、こんなにおいしそうなものが」
「もぐもぐ、やっぱたこやきはうまいのう」
「太郎くん、お行儀が悪いわよ」
「全然話が進まないね」
「まあ食べながら話しましょうか」
*****
「というわけで四百年後の未来から来たんだ」
「へえ、このおだんごおいしいねえ」
「聞けよ」
「聞いてるよ。カラスくんが魔王でぼっちでドラゴンと暗黒騎士団を仲間にして勇者をだまして勇者の息子くんたちと仲良くなったって話だよね?」
「ぐはあっ」
「うっなぜわたしにも攻撃を……」
「魔王に歴代最大ダメージ与えたのこの人なのでは?」
「それで迷子の桃太郎くんを連れてきてくれたんだよね?」
「うぐっ」
「ぐるる」
「強いね」
「流れ弾が四方八方に……」
「おっちゃんが四天王やったんはわいが正しかったやんか!」
「それを言うなら桃太郎くんも四天王だったんだろう?」
「うぐうぅっ」
「絶対に勝てない反逆を見せられている」
「それにしても殿下まで四天王とはねえ」
「確かにいままで勇者とか賢者とか言われてもピンと来なかったけど、魔王とか四天王とか言われてもやっぱり腑に落ちないわねえ」
「まあ魔王が知らない人じゃなくてよかったけどねえ」
「知り合いならいいんだ」
「で、僕の書いた手紙? ちょうど昨日書いて机の引き出しに入ってるんだけど、それと同じ内容だし、手品じゃなければ信じるしかないかな」
「なんでわてがわざわざこんなとこまで来て手品せなあきまへんの」
「カラスくんはときどき冗談かどうかわからないことを言うからなあ」
「このあとわたしたちがいなくなったんでしたっけ?」
「うん。わいが来たときにはもういてへんって言われたんや」
「あらあらそのときまで待って会いたいわねえ」
「『会えなかった』のが史実だからなあ。そこは変えないほうがいい」
「いまの太郎くんにもう会えないのは寂しいわねえ」
「桃太郎には四百年待たせるが賢者にはその年取った桃太郎がいるからな」
「年取ったっていうけど、太郎くん別にそんなに変ってないわよね」
「え?」
「ちょっと大きくなったけど、せいぜい三十代手前くらいかしら?」
「どう見てもはるかにじじいだろ」
「なんかくたびれてるだけで一晩寝てしゃんとしたら戻ると思うわ」
「そんなバカな」
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