転生したら最弱キャラでした

霜月龍太郎(旧 ツン影)

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5 t h ストーリー 最悪な事態

再会!!あの夜の約束を。

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 アリスさんがいる異世界に戻った僕は絶望していた。
「茜さん」
 こころはそう言葉をこぼして泣いていた。そんなこころをアリスさんは優しく抱きしめていた。
「辛かっただろう。すまない、力になれなくて」
「アリスさんは悪くないです!!私に、もっと力があれば……」
「こころちゃんと月影君はよく頑張っていたさ。自分をそんなに責めないでくれ」
 アリスさんはそう言って僕とこころを慰めていた。
  僕は、もう無理です
「月影、君?」
「僕はもう、あの魔王に、戦えません」
 僕は涙を流しながらそう言った。
「お兄ちゃん」
 アリスさんは座っていた僕の目の前に来て言った。
「月影君は強いんだよ。あんなやつなんかに負けるわけがないよ。大丈夫、君はジョーカーなんだから」
「僕なんかがジョーカーになること自体が間違いなんです。僕みたいな弱者がジョーカーになるのは最初から間違っているんです。アリスさんに鍛えてもらって習得した光属性も魔王の前では通用しなかった。そして僕はあいつに負けた。茜さんも失った。もう、無理なんですよ。僕が魔王を倒すなんて」
 アリスさんは何も言ってくれなかった。幻滅されたのだろう。
「アリスさん。私たち、元いた世界に帰ります」
 こころはアリスさんにそう言った。
「そう。わかった。それじゃあ……」
 するとアリスさんは僕の頭に手を置き、呪文を唱えていた。
「アリスさん?お兄ちゃんに何をしているんですか?」
「こんな状態だから私も力になれるよう、月影君の検索時に私が干渉できるようにした」
 アリスさんは僕の頭から手を離した。
「月影君、もう君しかいないんだ」
 アリスさんは僕を抱きしめて言った。
「私は信じてる。君があの魔王を倒してくれることを。焦らなくていい。今は君が元に戻ることだけを考えたらいい。元に戻ってからあの魔王を倒してくれ。君ならできる。私は君の強さを知っている。だから大丈夫」
 アリスさんは笑って僕とこころを神殿に帰した。

 神殿に戻ってきた僕たちはネイチャータウンに向かおうとした。
「お兄ちゃん」
 こころは僕の手を握って言った。
「お兄ちゃん、覚えてる?現実世界に戻ってきたらレイナちゃんと会うっていう約束。だから、レイナちゃんに会いに行こ?」
 僕は頷いた。こころは僕の手を握ったまま、歩き始めた。

 ネイチャータウンに向かうため、森の中を歩いていた僕たちの目の前に悪党が現れた。
「お前さんがジョーカーだよね~?」
「お、お兄ちゃんに、何、か、ようですか?」
「ん?お兄ちゃんだ~?」
 すると悪党は笑った。
「こいつはおもしれぇ‪w。お兄ちゃん?そうでちゅか。君は妹がいたんでちゅか」
「おらおら、なんとか言ったらどうだ?」
 悪党は僕の頬をぺちぺちと叩いていた。
 お兄ちゃんから離れてください
「ん~?声が小さくて聞こえねーな!!」
 すると悪党は僕を蹴り飛ばした。
「お兄ちゃん!!」
「あ~。めっちゃスッキリしたわ~。兄さん、あの憎きアリスという名のジョーカーの鬱憤晴らしには最高のやつですよ、こいつ」
「初めからそのつもりだよ」
 するともう一人の悪党は僕の腹部を蹴った。
「お兄ちゃんから離れてください!!」
 するとこころは二人の悪党に攻撃魔法を放とうとしていた。しかし悪党たちは僕の体を踏んでこころに指を指し言った。
「おっと。今攻撃魔法を打ったらこのお兄ちゃんはどうなるんだろうな~」
「最低っすね兄貴‪w」
「いいんだよ。こいつはどちらにせよボコすんだからさ!!」
 悪党は僕の腹部を先程より強く蹴った。僕は声も何も出さず、ただただ蹴られていた。
「ははっ。こいつなんも言わね~ッスよ。サンドバッグその物じゃないですか~‪w」
 悪党は胸ぐらを掴んで僕の頬を強く殴った。
「お兄ちゃん!!」
「おっと、それ以上近づいたら大事な大事なお兄ちゃんがもっと傷つけられるよ~。いいのかな~‪w」
 こころは手で握り拳を作ってその場から動かなかった。
「兄貴~。こいつ片目失ってるっす‪wもう片方を消すってのはどうっすか‪w?」
「いい案だ。そしてこいつは惨めに生きて恥を晒すんだよ。『何も見えない‪w怖い怖い。妹よ、妹よどこだ』って‪w」
「ブーーーーーっ‪wちょっ兄貴それ面白すぎっす‪wやばいやばい、ツボったツボった‪w」
「妹よ、妹よどこだ‪w前が見えない‪w怖い怖い‪w」
「ブーーーーー‪っ‪w兄貴‪wマジで面白すぎるぜ‪w」
 こころは手に持っていた魔法杖を地面において頭を下げて言った。
「お願い、します。お兄ちゃんを、お兄ちゃんを痛めつけないでください」
(こころ、もういいよ。僕はどうせ何も出来ないんだ。そんな僕のために頭を下げる必要なんてないよ)
「許して欲しければお前の大好きなお兄ちゃんを踏んずけて顔に唾を吐いてやることだな‪w」
「兄貴、まじ最低っすね‪w」
「ならお前ならどうする?」
「俺だったらこいつを妹に『生まれてきてすみません』って土下座させてその頭を妹ちゃんに踏んず消させるっす‪w」
「お前も大概最低じゃね~か‪w」
 悪党は大笑いしていた。僕はその二人の足首を掴んだ。
「なんだお前?」
 こころには何もするな
「ん~?聞こえねーな‪wあ、足が滑ったわ‪w」
 すると悪党は僕の顔を蹴った。
「お前が生まれてきてすみませんって妹に土下座したら妹ちゃんには手を出さね~って約束してやるよ‪w」
「兄貴‪wさすがにそんな事するわけないじゃないですか‪w」
 僕は迷わずこころの前まで行き、正座した。
「お兄ちゃん?」
「は?マジですんのか‪w?プー‪wマジですんのか‪w?」
「兄貴、俺もう腹痛てぇっす‪w」
(いいんだもう。僕は生きる意味なんてもうないんだ。ごめんね、こころ)
 僕が土下座しようとした時だった。こころの後ろから緑色の魔法弾が飛んできた。その魔法弾は悪党の二人に命中した。
「痛てぇーーー!!」
「痛てぇーっ畜生!!誰だ!?」
 こころの後ろから見覚えのある姿が見えた。
「今すぐこの子達から離れなさい!!さもなければあなた達をここで倒します」
「ふざけんな!!ナメてんじゃねーぞ!!」
 すると悪党はナイフを持って走ってきた。
「こころちゃん、月影、ちょっと待ってて。すぐに終わらせるから」
「レイナ、お姉ちゃん」
 レイナは先程の魔法弾をナイフを持った悪党に放った。
「ぐはぁぁぁ」
「兄貴~!!」
 ナイフは折れ、悪党は倒れた。
「クソがっ!!」
「兄貴!!しっかりしてくだせ~」
「うるせ~!!ずらかるぞ!!」
「覚えてやがれ!!」
 そう言って悪党は逃げていった。
「レイ、ナ?」
 僕がそう言うとレイナはニコッと笑って、ポケットから紙を取り出して言った。
「あの夜の約束、果たしに来たよ。月影さん」
 レイナが取り出した紙は以前、過去に僕がレイナちゃんに渡した紙だった。
「レイナちゃん?」
 するとレイナは抱きついて言った。
「うん。私はレイナ。あの時助けてもらった女の子だよ」
「やっぱりレイナちゃんはレイナお姉ちゃんだったんだ」
 こころはレイナに抱きついた。
「こころちゃん!?」
「レイナちゃん、こんなに成長したんだね」
「こころちゃん、なんだか母親みたいなこと言ってるね」
 僕は無言で頷いた。
「月影?」
 こころはレイナから一旦離れた。
「レイナお姉ちゃん。お兄ちゃんは今……」
「いいよ、こころちゃん」
 レイナはこころが言おうとしたことを僕の左目を見て察したのかそう言った。
「月影の事だもん。また無茶したんでしょ?」
 レイナはこころにそう言った。そしてレイナは僕の頬に手を当てて言った。
「月影、もう無理しなくていいよ。今はゆっくり休んで」
 僕は泣いていた。レイナに抱きついて泣いていた。そんな僕をレイナは優しく抱きしめてくれた。
 頑張ったね
 レイナは僕の耳元でそう言った。

 ネイチャータウンに戻ってきたレイナたちは宿屋でネイバーと話をしていた。
「月影殿、大丈夫か!?」
「ネイバーのおじさん」
「ネイバーでよい」
「ネイバーさん」
「うむ。それより月影殿は何故こうなった?」
 ネイバーはベッドで眠っている僕を見て言った。
「いろいろありまして。とりあえず、私たちが体験してきたことを全てお話します」
 こころは神殿に行って起こったこと、過去に飛んで地獄閻魔の日に行ったこと、そして目の前で茜さんが死んでしまったことを話した。
「ですから、茜さんが死んでしまったことを自分の無力のせいだと自分を責めていまして、今こうなっています」
「そうじゃったか」
 ネイバーはそう言葉をこぼし、お茶を飲んだ。
「これじゃあ、あの時と一緒ね」
「レイナお姉ちゃん?」
 レイナは寝ている僕の手を握って言った。
「月影。月影はよく頑張ったわ。だから、そんなに自分を責めないであげて…… 月影さん
「レイナお姉ちゃん」
 ネイバーは立ち上がってこころに言った。
「儂はそろそろ失礼するよ。また何かあれば呼んでもらってよいか」
「はい。忙しいところ、時間を作って下さり、ありがとうございます」
「こころ殿。月影殿もそうじゃが辛い思いをしたじゃろう。しばらくはこの街で休むとよい」
 こころはお礼を言った。ネイバーはこの部屋から去り、僕とレイナ、こころの三人だけになった。
「こころちゃん」
「レイナお姉ちゃん?」
「おいで」
 こころはレイナに近づいた。するとレイナはこころを抱きしめた。
「レイナお姉ちゃん!?」
「辛かったよね。そんな時、そばにいてあげられなくてごめんね」
「レイナお姉ちゃん」
 こころはレイナの服を握って泣いていた。そんなこころの頭をレイナは撫でていた。静かなこの部屋はこころの泣き声だけが響いていた。
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