それは、噂から

戒月冷音

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第36話

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「イザリア・マイヤー」
「は、はい」
「ソナタは先ほど、メフィスト家は安泰だと言ったが、何を根拠に言った?」
「そ、それは、子供が居るからにございます」
「子供が居れば、安泰なのか?」
「それは、そうでございましょう。家を継ぐ者がいるのですから」
「家の収入が、なくても?」
「無いわけがありませんわ。主人は働いておりますし・・・」
「ほぉ~・・・そこの男が、働いていると?」
「はい」
自信満々に答える女性の横で、下を向いたままカタカタと震える男性・・・

あれがクラウス・・・
15歳年上で、私が生まれた時からの婚約者。
婚姻式を終えてから、まともに話したこともない。
屋敷には帰ってきても、私とは会わず、エドガーに必要なことを伝言して、仕事に行ってしまう。
あの人からの指示は、自分の仕事の事のみで、領地や屋敷の中の事は、何も言わなかった。

だから仕事だけは、きちんとしているものと思っていた。
しかし・・・

「そうか、そうか。ならばこのまま、働いてもらおう」
「えっ!?」
「クラウス。何を驚いておる。
 そなたは、政務担当のメフィスト公爵であろう。
 何故か、帰ってきてからずっと、マイヤーだと言うから、仕事を
 させなかったが、ここまで女が仕事をしていると言うんだ。
 しなければな。ただし・・・」
「ただし?」
「メイリア・メフィスト公爵夫人」
突然呼ばれた私は、カーテシーをしながら
「はい」
と返事をした。
「そなたは、手を出すことを禁ずる」
突然、そのようなことを言われた。

「国王陛下。発言をお、許しください」
「よい。申してみよ」
「私が手を出さなければ、領地はどうなりますか?」
「メフィスト公爵が、手を付けるのではないか?それが、普通だが」
「領民は、当主を知りません」
「それは・・・何故じゃ?」
「領地に一度も、顔を出していません。
 それに、領地の事は私に全て、任せているからでございます」
「一度も?そして何も、していない?」
「はい」
「ではどうして、領地の税が納められておるのじゃ?」
国王陛下のその質問に答えるのは、クラウスのはず。
けれどクラウスは何も言わず、その場に立ち尽くしていた。
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