それは、噂から

戒月冷音

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第62話

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「イザリア様は、本当にそう思っていらっしゃいますか?」
私は、口許をハンカチで隠して、そう問う。
「メイリア、何を言っている?イザリアは、そう思っているから泣いて・・・」
「クラウス様は、黙っていてくださいますか。
 私は、イザリア様に聞いているのです」
それを聞いたクラウスは、ビックリした顔で私を見た。

私が、クラウスの言った事を否定したことは、これまでに一度もなかった。
それは今まで、クラウスの言ったことは全て真実で、彼が嘘を言うなど、思ったことがなかったからだ。
しかし、今は違う。
私は25年もの間、クラウスに平気で欺かれていたことを知った以上、彼の言っていることが真実だとは、思えなくなった。
だから私はこれから先、クラウスの言うことは聞かないし、信じない。
私の会話に、クラウスの言葉は必要ない。


私達の廻りには、お義父様と沢山の領民がいる。
そんな場所で、その涙をどれだけ湛えていられるかしら?
私の後ろには、エドガーと近衛騎士が立ち、私はイザリア様を見下ろしている。
彼女の口許は徐々に歪み、私に見下されることに、耐えられなくなったようだ。

「なんで貴方が、そんなに偉そうにしているのよっ!
 私がっ、クラウスの子を生んだのだから、私の方が貴方より上なのよっ。
 なのになんで・・・なんで私を、見下すのよ。私の足元にひれ伏しなさいよっ」
大きな声で、こんな場所で・・・
さっきお義父様が話されたことも、すっかり忘れて、そんなことを叫んだ。
言いきった。

「イザ。リア・・・」
クラウス様の呼び掛けに、一瞬動きを止めたイザリア様は、かくかくした動きになり、クラウス様の方を向く。
「ク、クラウス。ち、違うの。さっきのは・・・」
「クラウス。これが、お前が選んだ女の正体だ。
 お前は、うまく使われたんだろうな」
「・・・父上」
「マイヤーと言うのも、貴族と思わせるためのこじつけだろう」
「違うわっ!私はマイヤー伯爵家の・・・」
そう言いかけたイザリア様の言葉を、私は遮る。

「こちらにも隣国にも、マイヤーと言う名の伯爵は、おりませんわ。
 近い名でしたら、マイナーリィ伯爵家ですが、これはこちらの国の貴族です」
私はクラウスの事を知ってから、この国と隣の国の貴族名鑑を手に入れ、全ての名前を覚えた。
そして、マイヤーと言う名の貴族を探したが、乗っていなかった。

しかし、過去の事件を探っていた時、マイヤーと言う家名を持っていた男性の記事が、載っているのを見た。
その男性は、その命と共に没落し、屋敷は廃家になったと書いてあった。
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