私の夢

戒月冷音

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第1話

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私はついこの間、婚約を破棄された。
理由は、私が彼をほおって置いたから…らしい。
元婚約者は、私が学園の役員で時間を取られている間に、同じクラスの伯爵令嬢と関係を持った。
世間で言う不貞なのだが、彼の言い分では私が彼を構わなかったせいで、伯爵令嬢に手を出された。
お前が傍に居れば、こんな事にはならなかった…らしいのだ。
けれど、クラスが別の私が、四六時中一緒にいることは出来ないし、学園に入学した時点で噂になっていたことも知っている。
だから破棄された時、何も言わなかった。
こんな人と関係を続けても、また同じ事をされると思ったから。
だから今年卒業という時期に、婚約破棄を受け入れたのだった。


その次の日から、堂々と付き合い出した2人は、毎日私を待ち伏せしては
「マーカス~、大好きよ」
「俺も大好きだよ。ダイアナ」
と、私に聞こえるように言って、去っていく。

「毎日大変ね」
「おはよう、キャシー」
「おはよう、マチルダ」
キャシーは、私と同じ役員で知り合った友達。
婚約破棄の時には、隣にいてくれた。
「相変わらず、グスグスみたいね」
「ほんと、毎日お盛んで、卒業までに子供が出来そうね」
「そうね。そこら中でやってるみたい」
「この前は、何処かの部会の部屋に勝手に入って、やってたみたい」
「えぇっ!?それって…」
「部会のメンバーが、担当の先生を呼んで対処しようとしたら、あの男、
 なんて言ったと思う?」
「何って…」
「先生にも貸しましょうか?…ですって」
「なにそれ」
「先生と一緒に、やりたかったみたいよ」
「ほんと、最悪な男…」

そんな会話をしながら教室に向かうと、クラスメイトが挨拶をしてくれる。
そんな中、一人の女性が
「何でそんな、婚約破棄された女に挨拶しなきゃならないのよ」
と叫んでいるのが聞こえた。
そちらを見ると、マリカ・カンツェ侯爵令嬢が、取り巻きを3人引き連れ腕を組んで立っていた。
「ごきげんよう、カンツェ侯爵令嬢」
キャシーが声を掛ける。キャシーはカンツェ侯爵と同格。
モントリー侯爵令嬢なので声をかけても問題はない。
「ごきげんよう…貴女いつまで、その方についているのかしら」
「あら。私はそこの方々のように、利益だけで居るのではないわ」
「なんてこと言うの」
「私達はそんなんじゃないわ」
取り巻きたちが声を上げる。
「あんな男の甘言に乗って、カンツェ侯爵令嬢はそんな事を言ってくるから、
 代わりに私が答えてあげてるの。貴方達は何も知らない」
「知ってるわよ。
 マーカス様が、リーンクリフ公爵家をお継ぎになるんでしょ。
 そこの公爵令嬢様はお飾り」
「だって、マチルダ」
「そう思っているのなら、それでいい。私には関係ないことだわ」
私はそう言うと自分の席につき。本を開いた。

大体何で、侯爵令息が公爵家を継げるのかよく考えてほしい。
マーカス様はコーニング侯爵家の次男。私はリークリフ公爵家の長女。
私の兄妹は妹が一人だけ。だから私が継ぐことになる。
てもそれを、何を勘違いしたのかマーカス様が継ぐと思っている人が多い。
私の後ろではまだ、侯爵家同士で言い合いが続いてる。
キャシーはいつもこうやって、マリカ様に対応してくれる。
マリカ様はマーカスに熱を上げていて、今はダイアナ様でもいつか自分を見てくれると思っている。

けれどそんな事、私にはどうでもいいこと。
誰が誰を好きで、愛していようが私には興味がない。
私は学園を卒業したら、女侯爵になる為の教育を受けることになっている。
公爵は、国の中枢を担う仕事につく位で、今はお父様がやっているがいつか私がすることになる。
婚約していたら、婿が受けるものなのだが、婚約破棄されたのだから其の為の勉強は私は必要になった。
なので、恋愛なんてやってる時間など要らない。

そうして受けた授業も、やっぱり知っていることの復習になった。
私はここに来る前から、ある程度の勉強を終えている。
だから学園の授業は全て復習なのだ。
私に必要なのはこの後、公爵家の面々が集まって行う部会。
そこで今の公爵家のあり方などを話したり、問題やこれからのことを話し合える場所だ。
だから周囲がうるさくても、学園に通っている。


「やぁ、リーンクリフ公爵令嬢。君の周りは楽しそうだね」
「リーベル殿下。お騒がせして、申し訳ございません」
「マーカスというのは、誰だ?」
「コリン様。私の元、婚約者です」
「元、なのか?」
「はい」
「では何故、あんな噂が?」
「ドリウス様。私にもよく分からないのです。
 多分マーカス様が、言っているのだと思いますが…」
「それに関しては、確認する必要があるな。ドリウス、頼めるか?」
「予行練習だな。了解した」
リーベル殿下は、第2王子殿下。
コリン様は、ヴェルテ公爵家嫡男。お父様は宰相閣下で、御本人は次期宰相候補。
ドリウス様は、カウンティ公爵家次男。お父様は騎士団長で、嫡男様は体が弱く騎士には不向きということで彼が継ぐことになっている。
だからリーベル殿下はドリウス様にお願いした。
「リーベル殿下。ドリウス様のお手を取って頂くようなことでは…」
「リーンクリフ公爵令嬢。これは実地訓練なんだ気にしなくて良い」
そう言われた私はそれ以上言うことはなく受け入れた。
調べるのはドリウス様。私は邪魔にならないようにしていれば良い。
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