私の夢

戒月冷音

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第2話

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それからしばらくして、ドリアス様から調査結果がもたらされた。
案の定マーカス様は、私に婚約破棄をした後も、リーンクリフを継ぐのだと言っていた。
その上ダイアナ様まで、公爵夫人になると言っているから、部会の皆で笑ってしまった。
「何だこの2人は。
 自分達はその準備すらせず遊びまくりながら、言うことだけは一人前か」
リーベル殿下が呆れている。
コリン様は言葉をなくしたようだ。

「君はよく、この男と婚約していたね」
「私が望んだのではなく、母親同士の口約束から始まったもので
 私は興味もありませんでした。
 けれど、ダイアナ様はそうではなかったようで、入学した当時は
 彼女とは無関係だったのですが、突然私の親友だと言い出し
 何かに付けては私に、マーカス様の事を聞いてきていました。」
「親友?そうは見えないが」
「私は、そう思っていません。
 私の親友は、キャシー・モントリー侯爵令嬢だけです。
 彼女は幼い頃からの知り合いで、たくさん助けてもらっています」

「あぁ…そう、だったのか」
「殿下?何かありました?」
コリン様が、何かに気付いたのか確認すると
「いや。こっちのことだ。気にするな」
殿下は、自分の中に仕舞ってしまった。
「殿下。殿下の周りにそっくりなことして落ち込んでる方がいますが…」
「ドリアス。いらんことを言うな」
これは…私の入る余地のないやり取りだと理解し、口を挟むのを止める。
私以外の御三方は、子供の頃からの幼馴染。
第1王子殿下とカウンティ公爵の嫡男様を加えて、5人でいつも一緒だったそう。
だから今でも時々集まって話したりしているようだ。

国政に携わる者達が、気心のしれた方々であれば、沢山の事を話し合い決定していく時に、互いのことが解りやすい。
だから、現国王様の周りも皆幼馴染なのだ。
もちろん私の父も。


とりあえずマーカス様の事はもう私には関係ないので、リーベル殿下におまかせした。
殿下は、ランドクリフ王太子殿下と相談し、処罰をお決めになるようだ。
自分で婚約破棄をしておきながら、他家である公爵家を継ぐなどと言っている以上、乗っ取りを考えていると思われても仕方ない。
その後、父に話を持っていくと、リーベル殿下の決定に従うこととし、コーリング侯爵との繋がりを断つための準備を始めた。



それから数カ月後、私は学園を卒業した。
そのまま、王宮で公爵を継ぐための研修とお父様の仕事の補佐として、実施で仕事を教わっている。
私は今まで、話しの中でしかお父様の仕事を知らなかった。
けれど体験してみて、こんなに忙しく大変なもので、沢山の事を知っておかなければ出来ない仕事だと、理解できた。
私に、お父様と同じ働きが出来るという確証は出来ないかもしれないが、自分にできる範囲で役に立ちたいと思った。
なのでその日から、私はお父様が出勤する日に、週に何度かついていきお手伝いをした。
家にいる時は、公爵家の執務をお母様と行い、お父様が帰ってくるとチェックしてもらった。

そんな生活を続けて1年後、16歳になった私はデビュタントとを迎えた。
通常、学園を卒業と同時にデビュタントなのだが、私は1年早く入学し、リーベル殿下の皆さまと同じ時期に卒業できる様にしていた。
だから、1年待ちのデビュタントになった。


「今日は皆、気合入っているわね」
「キャシー、そんな事どうでもいいわ」
「でも、また来るかもしれないわよ。あの2人」
「来ないわ」
「どうして?」
1年間ほとんど、交流を持たなかったキャシーは、リーベル殿下から調査が入ったことを知らなかった。
卒業の年に調査され、次の年にマーカスとダイアナへの処罰が下った。
2人は卒業と同時に王命で婚姻した。
互いが次男と次女だったため、コーリング侯爵の所有していた、ルンド男爵の爵位をマーカス様が継ぐ形で、ギリギリ貴族となった。
その後コーリング公爵はマーカス様の籍を抜き、実質ルンド男爵はコーリング侯爵との繋がりを失った。
「まぁ…そんな事になってたのね」
「えぇ…今の問題は、あの二人が揃ってここに来るかどうか…」
「そうね」
と言ってる間に、デビュタントが始まった。


きらびやかな会場に同年代の男女が集う。
「今日こそはあの方に…」
「わたくし、決まったの」
「えーっ、どなた?」
「伯爵家の次男様。家の婿になってもらうの」
そんな話が聞こえる。

そこへ
「えっ…あれ、マーカス様よね」
「ダイアナ様?あんなに質素なドレスをお召になって…どうなさったのかしら」
「貴女、知らないの?あの2人、王命で結婚されたのよ」
「どうして?」
「マーカスだよな。何で男爵?公爵になるんじゃなかったのか?」
「辞めとけよ。あいつ、マチルダ様と婚約破棄した後も言い続けてたから
 リーンクリフ公爵を怒らせて男爵になった上に、
 ダイアナと王命で結婚させられたんだ」
「まじで?」
「その上、どこでもやってただろ。
 だから結婚してすぐ、双子が出来たらしい。今は子育て真っ只中だ」
「早ぇなぁ」
「地獄じゃん」
皆が好きなことを言っている中、2人は少し顔を出しただけで帰っていった。

私は、一人壁際に立ち、皆の様子を観察する。
好意を寄せる女性を落とそうと、必死にアピールする男性。
好意を寄せる男性に、体を擦り寄せて、自分に目を向けてもらおうと必死な女性。
誰でも良いから自分に興味を持ってもらおうと、異性に声をかけまくる人。
強硬手段で、異性の横でふらつき、持っているグラスの中身をぶちまける人。
それを片付けるのを言い訳にして、控室に異性を引きずり込む人…

皆…必死だ。
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