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第40話
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「侯爵様。私は別に何も感じておりませんわ。
クーディアス様は私と姉の幼馴染で、自分の引いたレールの上を
一緒に歩いてくれる女が必要だっただけ。
別に、私でなくても良いのです」
「それは…」
「彼は子供の頃からそうだったのです。
最初は姉でしたが、クーディアス様の学友であった
第二王子の目に止まった為、私に移っただけです」
「そうなのですか?ですが、そうであったとしても領地の事は…」
「えぇ…私の心配はそれです。クーディアス様と…
失礼とは思いますが、ティスミル様に領地経営は無理だと思っております」
「私もそう思います。あの子は働くことを知りませんから」
「そうでしょうね。こちらに居ても世話をされるのが当たり前と言う言葉を
幾度と聞いております」
「ですが、その書類がある以上、そこは避けられぬと…」
私は、自分が持つ書類を見つめる。離縁と婚姻。妻が変わるだけで、この家の仕事は変わらない。
しかしこの3年。その仕事の決済や視察をしていたのは私だ。妻の立場から顔を出し、提案し話し合い…沢山の民と接してきた。
その人達との決別…それを決定づける書類だ。
それでも…
それでも私は、ここを離れる決意をした。
だから…
「それは仕方ありません。領民の皆様は分かってくださいます。
そして私が居なくとも、今の暮らしを守っていかれる。
そう思うから、離縁の書類を準備したのです」
私の言葉に侯爵様は何かを考えたようだが、そのまま何も言わず、別の部屋で離縁する妻の欄に名を記していく私を、じっと見ていた。
クーディアス様は私と姉の幼馴染で、自分の引いたレールの上を
一緒に歩いてくれる女が必要だっただけ。
別に、私でなくても良いのです」
「それは…」
「彼は子供の頃からそうだったのです。
最初は姉でしたが、クーディアス様の学友であった
第二王子の目に止まった為、私に移っただけです」
「そうなのですか?ですが、そうであったとしても領地の事は…」
「えぇ…私の心配はそれです。クーディアス様と…
失礼とは思いますが、ティスミル様に領地経営は無理だと思っております」
「私もそう思います。あの子は働くことを知りませんから」
「そうでしょうね。こちらに居ても世話をされるのが当たり前と言う言葉を
幾度と聞いております」
「ですが、その書類がある以上、そこは避けられぬと…」
私は、自分が持つ書類を見つめる。離縁と婚姻。妻が変わるだけで、この家の仕事は変わらない。
しかしこの3年。その仕事の決済や視察をしていたのは私だ。妻の立場から顔を出し、提案し話し合い…沢山の民と接してきた。
その人達との決別…それを決定づける書類だ。
それでも…
それでも私は、ここを離れる決意をした。
だから…
「それは仕方ありません。領民の皆様は分かってくださいます。
そして私が居なくとも、今の暮らしを守っていかれる。
そう思うから、離縁の書類を準備したのです」
私の言葉に侯爵様は何かを考えたようだが、そのまま何も言わず、別の部屋で離縁する妻の欄に名を記していく私を、じっと見ていた。
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