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第131話
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彼がずっと、渡しを想っていてくれたおかげで、今の私がいる。
「終わりましたよ」
肩にかけていたタオルを取りながら、マーサさんが笑ってる。
「マーサ、兄上を呼んできてくれないか?」
「ふぅ~、坊ちゃまはオババ使いが荒い。
私がいない間に、メイクを崩さないでくださいよ」
「なっ!何を言ってる。早く行って」
「はいはい」
マーサさんが部屋を出ていくと、ラヴェ様が私の横に椅子を持ってきて座り、手を握る。
「落ち着いたか?」
「はい。ご心配をおかけしました」
「はーーっ…」
ラヴェ様は私の手を握ったまま、祈るように息を吐いた。
「ラヴェ?」
「ごめん。君に、負担をかけてしまった」
絞り出すような声で言う、ラヴェ。
「いいの。いつかは、会うことになるはずだったし…」
「でも何も、こんな時期にならなくても…」
「たしかにそうは思うけど、私は良いタイミングだと思ったの」
「良い?」
「だって私は、英雄の石女妻…だったのよ。
英雄になった時期に押しかけで妻になり、子供も作れず
帰ってきた途端、ぽっと出の女に英雄を寝取られた女。
そんな噂が流れている私を、貴男は娶ってくださった。
それならその噂を、払拭するのが私の役目。
私の印象が貴男を汚すのであれば、私はこの子と一緒に貴男を守ると決めたの。
だから今日、ここに来た」
そう言った私を、ラヴェ様はぎゅっと抱きしめ
「やっぱり君は、俺を守ってくれる。助けてくれる…有り難う」
そう言ってくれた。
「終わりましたよ」
肩にかけていたタオルを取りながら、マーサさんが笑ってる。
「マーサ、兄上を呼んできてくれないか?」
「ふぅ~、坊ちゃまはオババ使いが荒い。
私がいない間に、メイクを崩さないでくださいよ」
「なっ!何を言ってる。早く行って」
「はいはい」
マーサさんが部屋を出ていくと、ラヴェ様が私の横に椅子を持ってきて座り、手を握る。
「落ち着いたか?」
「はい。ご心配をおかけしました」
「はーーっ…」
ラヴェ様は私の手を握ったまま、祈るように息を吐いた。
「ラヴェ?」
「ごめん。君に、負担をかけてしまった」
絞り出すような声で言う、ラヴェ。
「いいの。いつかは、会うことになるはずだったし…」
「でも何も、こんな時期にならなくても…」
「たしかにそうは思うけど、私は良いタイミングだと思ったの」
「良い?」
「だって私は、英雄の石女妻…だったのよ。
英雄になった時期に押しかけで妻になり、子供も作れず
帰ってきた途端、ぽっと出の女に英雄を寝取られた女。
そんな噂が流れている私を、貴男は娶ってくださった。
それならその噂を、払拭するのが私の役目。
私の印象が貴男を汚すのであれば、私はこの子と一緒に貴男を守ると決めたの。
だから今日、ここに来た」
そう言った私を、ラヴェ様はぎゅっと抱きしめ
「やっぱり君は、俺を守ってくれる。助けてくれる…有り難う」
そう言ってくれた。
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