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第145話
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それを聞いた侯爵夫人は泣き始め、侯爵は
「お前との今後について、話し合わねばならんようだ…」
と言ったまま、夫人を放置して、自分の侍従と話し始めてしまった。
私も、もうこの人に言うことはないと、その場を立ち去ろうとする。
すると
「貴女は、悔しくなかったの?英雄を取られて…」
と、公爵夫人が私に言った。
「私は、クーディアス様を好きでも嫌いでもなかった。
ただそこに居る、姉の幼馴染…ただそれだけ。
だから、ティスミル様との営みの声を聞いても、なんとも思わなかったわ」
私が落ち着いてそう答えると、侯爵夫人は顔を赤らめたまま、それ以上何も言わなかった。
私はラヴェ様のもとに帰り、支えてもらいながら個室に戻る。
「あの方は、何かに囚われているようですわね」
「何に?」
「最初は、私のお父様でしょうね」
「オーギュスト公爵か?」
「えぇ。学生の頃であればまだ、公爵嫡男として頑張っておられた。
その時期に、夫人が好きになった公爵嫡男から、
自分が親友だと思っていた人を、婚約者だと紹介されたとなれば、
妬んでも、おかしくはありません」
「妬み…」
「妬みは、他人を羨むだけでなく、相手を不快に思ったり、
憎んだりする感情も含まれますので、人間関係を悪化させる原因になることが
よくあるのです。
他人の成功を、素直に喜べない人は大体そうなりますね」
そんな話をしていると、さっきまでへたり込んでいたイルデアス公爵夫人が、騎士に支えられながら立ち上がり、ゆっくりと歩いていく。
「君に、謝らなくて良いのかい?」
ラヴェが小さな声で私に聞くが、私は首を横に振って答えた。
「お前との今後について、話し合わねばならんようだ…」
と言ったまま、夫人を放置して、自分の侍従と話し始めてしまった。
私も、もうこの人に言うことはないと、その場を立ち去ろうとする。
すると
「貴女は、悔しくなかったの?英雄を取られて…」
と、公爵夫人が私に言った。
「私は、クーディアス様を好きでも嫌いでもなかった。
ただそこに居る、姉の幼馴染…ただそれだけ。
だから、ティスミル様との営みの声を聞いても、なんとも思わなかったわ」
私が落ち着いてそう答えると、侯爵夫人は顔を赤らめたまま、それ以上何も言わなかった。
私はラヴェ様のもとに帰り、支えてもらいながら個室に戻る。
「あの方は、何かに囚われているようですわね」
「何に?」
「最初は、私のお父様でしょうね」
「オーギュスト公爵か?」
「えぇ。学生の頃であればまだ、公爵嫡男として頑張っておられた。
その時期に、夫人が好きになった公爵嫡男から、
自分が親友だと思っていた人を、婚約者だと紹介されたとなれば、
妬んでも、おかしくはありません」
「妬み…」
「妬みは、他人を羨むだけでなく、相手を不快に思ったり、
憎んだりする感情も含まれますので、人間関係を悪化させる原因になることが
よくあるのです。
他人の成功を、素直に喜べない人は大体そうなりますね」
そんな話をしていると、さっきまでへたり込んでいたイルデアス公爵夫人が、騎士に支えられながら立ち上がり、ゆっくりと歩いていく。
「君に、謝らなくて良いのかい?」
ラヴェが小さな声で私に聞くが、私は首を横に振って答えた。
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