貴方の✕✕、やめます

戒月冷音

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第147話

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「国王陛下。それだけはおやめください」
私は、そう進言する。
「何故だ?
 ファル卿は、君と付き合いが長いと言うだけで、
 貴族のルールを無視した。
 なら、私がしてもいいだろ」
国王陛下は、怒っておられるのだ。

ファル卿は…クーディアス様は、自分より上の立場になった私に対して、マリアと呼び捨てた。
今の私は、マリア・コーラル公爵夫人。
クーディアス・ファル騎士爵より、ずっと高位なのだ。

国王陛下の言葉で、それに気付いたファル卿は、もう一度ひれ伏し
「申し訳ございません。
 長い付き合いでも、守らなければならないのがルールです。
 私は、コーラル公爵夫人に失礼を働きました。
 本当に申し訳ございません」
と即座に謝った。
「フーーッ…ファル卿よ。そなたは英雄として持ち上げられ、
 爵位のなかったところから、爵位を与えられた者だ。
 だが、それに奢り、奥方をすげ替えるという行為を、
 当たり前のように行った。
 いくら英雄でも、民は納得しきれなかっただろう。
 それでも君たち夫婦は、ここに居るマリア嬢のおかげで、
 今も騎士爵を維持していられることに、感謝せねばならん。なのに…」
国王陛下はそこで、言葉を切った。
間にファル夫人が入り、もっとややこしいことになったからだ。


「あ、あのっ…国王陛下。すげ替えたわけでは…」
ファル卿が私の下に走り寄った時、その場に放置され、泣くことも忘れてボーゼンとしていたが、突然許しもなく国王陛下に声をかけてしまった。
これには、ファル卿もイルデアス侯爵も慌てる。
「ティ、ティスミル。何をしてる」
「やめなさい。お前に話す資格はない」
だが、
「お父様何故です?
 あの時、私はきちんとマリア様とお話して、入れ替わったはずです。
 すげ替えたなどと言われては…」
パーン
「お前は、国王陛下に向かってなんということを言ったのだ。
 お前がマリア殿にやったことは、挿げ替えでもまだ
 優しい言い方だということを、忘れたかっ!」
イルデアス侯爵は真っ赤な顔をして、ティスミル様を怒鳴った。
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