この生の理

戒月冷音

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第78話

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「もう、大丈夫ですよ」
兄さんの終了報告にルーカス様はコラルニア伯爵令嬢の耳からゆっくりと手が外し、席に戻る。

「ジュリア、なにか聞こえたか?」
「貴方が塞いでたから何も聞こえませんでしたわ。
 一体、何が有りましたの?」
首をコテンと傾げる伯爵令嬢を見ながらみんなではーーーっと息を吐く。
「突然あの子がぺたんと座ってしまったから、何かはあったたんでしょ。
 教えてよ」
「また、怖くて動けなくなっても良いのか?」
「えっ!?こ、怖いことでしたの?」
「コラルニア伯爵令嬢様。
 僕が少々はっちゃけたようで。余りお聞かせしたくないものですので
 塞いでいただいたのです。
 それを確認されるというのもちょっと…」
「そうでしたの?ではやめておきますわ。
 しかし、いつになったらジョージ様はその長い呼び方を辞めてくださるのかしら」
「それは私も同意見です。
 執務室で作業している時ですら、長い呼び方をされるのですよ。」
「そうなのですか。本当に他人行儀ですのね」
「他人行儀って…僕は皆様より一つしたですし、
 ルーカス様や兄さんは男性ですので変に勘ぐられることは有りません。
 ですが、女性の方を名で呼ぶと、あらぬ疑いを掛けられそうで…」
僕がそう言うと女性方はお互いを見てフフッと笑い合う。

そして
「私達には婚約者も居りますので、その心配はございませんね。
 では、私をリリーベルと」
「そして私を、ジュリアとお呼び下さい」
「その呼び方でなければ、返事いたしませんので」
「ご注意下さいませ」
とにこやかに言われた。

「あの1つだけお願いが…」
「「なんですか…ジョージ様」」
「様だけは、つけさせて下さい」
「良いですよ」
「よろしくてよ」
「有難うございます。リリーベル様、ジュリア様」
僕がそう言うと、兄さんとルーカス様がププッと吹き出していた。

僕が困っているのを見て笑うなんて…と思い机の下からガッガッと二人のスネを蹴った。
「つっ!?」
「いった!?」
「どうなさったの?お二人共」
「いや…なんでもない」
ルーカス様は耐えた。だが
「ジョー!痛いじゃないか」
兄さんは抗議した。
「だって聞こえたもん」
「何が?」
「兄さんとルーカス様が、僕のこと笑った」
「すまん。ジョージ殿が照れているのが珍しく…つい」
「ルーカス様は許します。兄さんは許しません」
「なんで?ジョー」
そうして小さな兄弟喧嘩が始まった。

アドルファス兄弟の喧嘩は、食堂の席で隣りに座った弟を兄が後ろから両方を持って前後にブンブン振リながら抗議し続けるもの。それを見ているリリーベル様とジュリア様は、笑っている。
僕は兄に振り回されながら、色々あった昼休憩を終了した。
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