有って無き者

戒月冷音

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第57話

「私は王家の事務員として、王宮にはいるため、第3王子殿下に嫁ぎました。
 私にとっては、結婚も仕事で御座います。
 それでもまだ、私に色恋を解かれますか?」
私は口元を隠し、にっこりと笑ったまま、アリステリア公爵令嬢様に問うた。

「い、いいえ。私はそんな気は・・・ですが、本当にエルデシアとは?」
「全く。ただ・・・」
「ただ?」
「第1王子殿下は、自分も楽をしたいと望んでおられるようで、
 アリステリア公爵令嬢様に内緒で、何やら画策しておられます。
 私にとっては迷惑でしかありませんので、何とか
 していただけませんでしょうか?」
「迷惑・・・」
「はい。私にとっては、迷惑の何者でもありません」
「あなたは、エルデシアに言い寄られて「おりません」
「エルデシアに、興味は「御座いません」
「次期王妃の座は?」
「そんなめんどくさい場所、こちらから願い下げです」
私の言葉に、アリステリア公爵令嬢様はキョトンとした後
「フフッ・・・あなたって、とっても面白いかたでしたのね」
と言った。

面白い・・・面白いですって。
『まぁ、生粋のお嬢にとったら、あんたは面白い部類だと思うよ』
失礼な。

その後、アリステリア公爵令嬢からエマと呼んでほしいと言われ、話しているうちにいつのまにか、カサンドラお姉さまと呼ばれるようになってしまった。
そして、帰り際
「カサンドラお姉様。またお話がしたいわ。招待しますから来てくださる?」
「今回のような文章では、来ないわ」
「でも、私にはあれが、お誘いの定番なのですけれど・・・」
「だから皆様、お話ししないのではなくて?」
「そうなのですか?」

私は今日、あの噂は半分、嘘だと知った。
彼女は、エルデシア殿下にベタ惚れの、人見知りお嬢様だった。
「当然です。
 お茶会に呼ぶのに、エルデシア殿下を引き合いに出しては、何か
 やらかしたと思うのが普通ですよ。
 今日の私も、何かやったかしらと、心配になりながら来たのですから」
『帰ってこれるかどうかの心配まで、したな』
そうよ。

「ごめんなさい、お姉様」
「だから、お姉様じゃないわ。どうしてそうなったの?」
「だってお話を聞いてきたら、なんか話されること全てがカッコよくて、
 私・・・大好きになってしまったのです。
 ですので、カサンドラお姉様・・・と」
私は、はぁ~・・・とため息をついた。

ルイアンクといいエルデシア殿下といい、王子は変な方が多いと思ったが、その婚約者もヤバイと思った。
すると
『俺の子孫は、ヤバイのしか選ばないのか・・・』
と、中でがっくりしているアイルークに、笑うしかなかった。
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