有って無き者

戒月冷音

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第113話

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メイサの支度が終わり、
「とりあえず、自分の部屋に行って、着替えてから朝食をお持ちします」
と言って、部屋を出ていく。
私はメイサを待つ間、マルク様のお屋敷に持っていく薬の準備をしていた。


その時・・・
トントンと、扉をノックされる。
「どなた?」
「エルフィンです」
なにか、問題でもあったかしら?
そう思いながら
「どうぞ」
と迎え入れると、難しい顔をしたエルフィン殿下が入ってこられた。

「何か・・・ありましたか?」
そう聞くと
「昨夜はどちらに?」
何故か、機嫌が悪そうに聞いてくる。
「昨夜・・・ですか?何故、その様なことをお聞きになるの?」
「ルイに伝言を頼み、兄上のところへ行った後、マルクが
 直接話したいと言うので、案内したのです。そしたら・・・」
あー・・・
「この部屋にいなかった・・・と、言われるのですね」
「はい」

それでどうして、エルフィン様が不機嫌なのかしら?
まあいい・・・

「昨日は、メイサの家に行っていたのよ」
「メイサ・・・あぁ、侍女ですか。それは何故?」
「あの花の、被害者がいたから」
「えっ!?」
「メイサは、薬作りを手伝ってくれたわ。そのお礼にと思ったのよ」
「その方は、直ったのですか?」
「いいえ。妹なのだけれど・・・環境がおかしくてね。
 ちょっと様子見で、半分直して帰ってきたの」
そこまで話したところで、メイサが朝食を運んできた。
「まぁその先は、後で話すわ」
「分かりました。では、後程・・・」
そう言うとエルフィン殿下は、部屋を出ていく。

「エルフィン王弟殿下。何かありましたか?」
メイサが、心配そうに聞いてくる。
「メイサ」
「はい」
「貴方の家の事を、ざっくりと話しても大丈夫?」
「はい。いいです」
「エルフィン殿下によ?」
「いいですよ。王城にはある程度、申請していますし・・・」
「分かった」
私はそう答えた後、昨日の夜エルフィン殿下とマルク殿下が訪ねてきたらしいこと。
そして、部屋にいなかったと知って、心配していたことを伝えた。
「すみません。私の事で、皆様にご迷惑をお掛けして・・・」
「私がやっていることは、迷惑ではないわ。
 逆に私が、頭を突っ込んでしまってごめんなさい。
 出来るだけ早めに、あの妄想少女を何とかするわね」
「妄想少女・・・ですか?」
「そうでしょ。
 だってあの子、ルイアンクに気付いていない上に、ルイは
 なにもしていないのに、最終的には彼が、
 自分のために持ってきたって言ったのよ。
 間違いなく、妄想でしょ」
「そうですね」
その後私達は、笑いながら朝食を取った。
あんなことがあったのに、メイサの気持ちが沈んでなくて良かったと、心から思った。
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