有って無き者

戒月冷音

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第121話

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「なぁ・・・その薬の作り方、俺に教えてくれないか?」
突然そんなことを言う彼をみて、私はなにも言えなくなった。
しかし、
「お前は、何を言っているんだ?
 お前は、継承第二位なんだぞ。何かあったら・・・」
「だけど、ルイもいる。俺に何かあっても大丈夫だろ」
そう言ったマルク様をみて、私はカチンときた。

「マルク殿下」
「なんだ?」
「貴方はそれを、リズ様の前で言えますか?」
「なんで、リズに?」
「貴方は、リズ様を置いていける方なのですか?」
この言葉に、マルク様は口ごもる。
「この薬は、作る工程で気を付けなければ、死ぬ危険があります。
 それを、リズ様に分かってもらってから、作られるのですか?
 まさか、隠してとか・・・言いませんよね?」

マルク殿下は、言わずに作ろうと思ったようだ。
でも、それだけは許さない。
「貴方は、リズ様を不幸にするために、
 一緒になられたのではないでしょ」
「当たり前だ」
「それじゃあどうして、
 自分を危険な場所に、送ろうとしているのかしら?」
「そ、それは・・・」
「あのね、これは私が結婚してから思ったことなのだけれど、
 男の自己マンに巻き込まれるほど、女は悲しくなるの」
「えっ・・・」
「私は、ルイアンク様の、エレナさんを守りたいという気持ちは、
 理解できたけど、その為にどうして私が1人、
 仕事をしているのだろうと悩んだの。
 守りたいという気持ちは、ルイアンク様の自己満足。
 それを叶えるために、犠牲にされた私は、今はこうして
 いい年をして、独り身なの。
 まぁ、そのお陰で自分の命を懸けての作業が、出来るのだけれど・・・」
そこまで話すと、ようやく分かったかのように、リズ様の部屋がある場所を見たマルク様。

「配偶者を悲しめたくなければ、この薬に関わるのはやめなさい」
「・・・はい。すみませんでした」
そう言って頭を下げるマルク殿下を見て、エルフィン殿下とルイアンク殿下は、ほっとしていた。

「それで、この後の治療は?」
ルイアンク殿下の言葉に、私は思い出したかのように話し出す。
「アルゴ様の治療方法ですが」
「あぁ」
マルク様が、聞く体制になったので話を続けた。
「アルゴ様にはまず、体にたまった毒の結晶を、消していくことを
 おすすめします」
「消す?」
「先ほど意識がなかった時に行った、消去の魔法で、体の中にある結晶を
 取り除かなければ、血液の通り道を塞いでしまいます」
「塞ぐとどうなるんだ?」
エルフィン様が聞く。
「血液の道を塞いでしまうと、その部分に必要なものが届かなくなり、
 体が機能しなくなります」
「必要なもの?」
「例えば、体に必要な栄養等です」
そう話すと、倒れたところを見ていたマルク殿下は、すぐに理解できたようだ。
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