有って無き者

戒月冷音

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第142話

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街に住み始めた数日後、メイサが一緒に住むと言って、王宮メイドを辞めてやってきた。

「王宮メイドを、辞めたの?って言うか、辞めれたの?」
「はい」
「なんで?」
「カサンドラ様と、一緒にいたかったから・・・
 でも、一緒に生活とまでは、言いませんので」
「じゃあ、どこに住むの?」
「この近くの、宿屋です」
「宿屋?なんで?すぐにキャンセルして、ここに来なさい」
「え!?いいのですか?」
いいもなにも、女性一人で宿屋なんて、不用心過ぎる。

『カサンドラも着いていって、一回で荷物運んでこい』
やっぱり、アイルークもそう思う?
『思うと言うか、外に一人いる。メイサについて来た奴だ』
そう、もう着いてきちゃったの。
『本人は気付いてないけどな』

「はぁ~・・・
 私も着いていくから、一回で荷物を全て持ってきましょう」
「いいえ、カサンドラ様のお手を、煩わせるわけには・・・」
私は、このとき気付いた。
街に住む人達は、煩わせるなんて言わない。
そして、そんな風に皆と違うことをしている者は、必ず盗難に遭うのだ。

「メイサ。外でもその話し方なの?」
「はい。そうですが?」
「だからか」
『だからか~』
私とアイルークの言葉が、ダブった。
「?なんです?何かあるのですか?」
そしてメイサは、それに気付いていない。

「メイサ。すぐに話し方を、ライヤさんと同じにしなさい」
「えっ!?何故ですか?」
「貴方、こんな街中で、丁寧な言葉使ってる人いる?」
「商売人は・・・」
「使ってないわ」
「宿屋とか」
「貴方、宿屋に勤めるの?だったらここに来る必要は、ないわ」
「いいえ。ここで働かせてください」
「何のために?」
「えっ・・・」

私は、離宮で私の侍女だったから、メイサに手伝ってもらった。
ただ、それだけだった。

「私が言った通りに出来ないのなら、すぐに帰って}
「あの・・・」
「私は、貴方が私の侍女だったから頼っただけ。
 私はあの場所で、長い間一人だったから、頼ることもなかったの。
 けれど貴方が、私の専属になった時、私はどうすればいいのか分からなかった。
 けれど、てきぱき動いてくれる貴方は、私の事を気にせず動くから、
 任せて安心だった。ただ、それだけよ」

そう話したあと、メイサは家に帰ると言った。
あの母親と、ライヤさんが居るところが自分の帰る場所なのだと、彼女は言った。
しかし彼女の帰る場所は・・・
「貴方の帰る場所は、そこではないわ」
「私は、もうそこしか、行くところはありません」
「あるわよ」
そう言って私は、外を指差す。
そこには、侍女長が立っていた。
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