有って無き者

戒月冷音

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第39話

「まぁ、私の方にもその資料はありますが、ほぼ、王太子妃として
 完全なる地位を築き、王妃として王を支えたと記してありました。
 しかしエリスは、全く逆。来た時から、資料とは違う反応でした」
「そうだったのですか?」
ルイアンク様が、聞く。

私達は、迎えに行ったルイアンク様からの情報しか、入っていなかったため、召喚された直後のことを知らない。
「この子は、召喚されて開口一番、ここが異世界かぁーと、笑ったのです」
「「笑った?」」
殿下方の声が重なり、私は絶句した。
残っている資料には、呼ばれた瞬間、言葉をなくしたかのように呆然とし、こちらからの説明で泣き崩れる。
その後、少しの間、何も話さず、何も食べず、部屋にこもるか、侍女達と話しだし、少しずつ慣れていくかだったはず…


「エリスさん。一つ、聞きたいのだけれど…」
「何?」
はぁー…、言葉遣いだけで、これほど疲れるものなのね。
「あなたはここ…この世界に来た時、何を思ったの?」
「えーーっとぉ~…
 私が居た元の世界にね、小説がたくさん出てたの」
「小説?」
「うーん、物語を書いた、本の事。
 そこにね、沢山の異世界物があったの。
 そしてね、聖女として呼ばれて、王子様を婚約者から奪うとか、
 召喚された時に、身についた魅了を使って、ハーレムルートとか」
「ハーレム…」
「あぁ、これは、乙女ゲームだった」
「ゲ、ゲーム?」
「えっとねぇ、
 デジタルで進めていくストーリーで、攻略対象が4,5人いて
 皆と、仲良くなっていくんだ。
 それでね。皆、一人の女性を好きになって…」
「それは、遊び?現実なの?」
「ううん。空想」
「空…」

まさか、それになぞらえて、この現実を喜んだ?
デジタル?というのが何なのか分からないが、その物語と同じ様に進むと思った?
そして、最初に声をかけた王族のルイアンク様を、攻略対象として…
『だが、ハーレムルート?は4,5人と言っていた。最低でもあと数人いる。誰だ?』
アイルークに言われて、ぞっとした。
もしこの世界の空想があったとして、そのハーレムをエリスさんが望んでいたとすれば、この国が危なかった。
ルイアンク様だけですんだと思えば、まだ…


その時、
「あっ、レイン呼んでください。ルイが駄目だったら、彼にするわ」
「レイン…レインラック伯爵令息か?」
答えたのは、トラビィス様。
「そうよ。ここに来た時から、仲良くしてもらってますっ」
「そうですか。では、あの子は協会から出ていただこう」
「えっ!?何でっ?何で出しちゃうの?
 私は、協会に戻るんでしょ。だったら…」
「協会をモーテルにする気ですか?
 貴女とやったということは、王族に対しての不貞とみなし、処罰対象です」
「嘘っ…」

この子、一体、王子妃を、何だと思っているのか…
王太子妃が、王子意外と関係を持っていたのなら、種が入れ替わっている危険がある。
それに私が、この女のために今までやってきたことが、とても残念なものに思えてきた。
だから
「トラビィス様。その、レインラック様を、此処に呼んでください」
「は?何故?」
「フフッ…エリス様の眼の前で、処分するのです。
 もう誰も、この子を甘やかさない…と、言うことを教えるための、
 見せしめですわ」
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