私の存在

戒月冷音

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第104話

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その後、細いうどんを5分程度、太いものを10分程度茹でた後、スープにお湯を注いで薄め、そこに水で洗ってしめたうどんをいれた。
「これで、うどんの完成となります」
そういって前に置くと、マルクス様が張り付いた。
「うどんだ。うどんがある・・・」
喜んでいるマルクス様をそのままに、次々とうどんをセットしていく。

「メイドの方はこれを、ダイニングに運んでください。
 国王陛下、王妃様、ヘンドリック様、カサンドラ様を
 優先してください」
「「「「はいっ!」」」」
そうしてここにいる全員が、一斉に動く。

「陛下、ここは、お邪魔になりますから、ダイニングへ」
「そうだな」
「ヘンドリック様、マルクス、あなた方もいきましょう」
「「はい」」
そうして私は料理長にスープの元の分量を説明した後、ダイニングに向かうと
「ミシェルさまは、マルクスの隣へどうぞ」
と、いつのまにか来ていた、宰相様に言われてビックリしたが、そのままマルクス様の隣に座る。

それに気付いたマルクス様が、身体をこちらに傾け
「ありがとうな。この世界に来てやっと、懐かしい料理が食べれる」
「いままで、ずっと?」
「作れる自信がなくて、途中で・・・」
「そうだったのですね。では、思う存分食べてください」
「そうする」
にっこりと笑って私を見るマルクス様は、国王陛下がうぉっほんと咳払いした瞬間、ビクッとして陛下の方を見ると、
「ははははっ」
と笑って、頭を掻いた。

「それでは、みんな揃ったようだし、頂こうか」
国王陛下のお声で、みんな食べ始める。
けれど、私とマルクス様は顔を見合わせ、手を合わせ
「「頂きます」」
といってから食べ始めた。

マルクス様はまず1本、口にいれるとするすると吸い込み、もぐもぐと咀嚼した。
「あぁ・・・この味だ」
そういいながら、2本3本とすすっていく。
その様子を見ながら私もすすると
「ミシェル、うまいな」
と、少し震えた声が聞こえてきた。
横を向くと、マルクス様の瞳からすぅーっと、涙が流れた。

「マルクス?」
向かいに座っていたヘンドリック様が、声をかける。
「ん?」
「なんで、泣いて・・・」
「えっ、泣いてる?」
そういって頬を触ると、濡れていることに気付いたのか
「あれ?なんで泣いてんだろ?不思議だな」
といって、涙をぬぐった。

マルクス様には、日本にたくさんの思い出がある。
日本にまつわるものに触れたとき、それが溢れてきても仕方のないこと。
それを、心配そうに見ている陛下に気付くと
「父上。大丈夫ですよ」
といって笑うマルクス様に、私は意を決して言ってみた。
「あ、あの、マルクス様」
「どうしたの?」
「今さらなのですが、お箸・・・使われますか?」
と。
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