私の存在

戒月冷音

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第115話

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私は、片付けをメイドさん達に任せて、王子妃教育へと向かう。
マルクス様の妻になるなら、必ず受けなければいけないものだ。


「おはようございます、ミシェル様」
「おはようございます、マークス公爵夫人」
そう言って、お互いがカーテシーをして、挨拶する。
「とってもお綺麗な、動作でございます」
「ありがとうございます」
私の家では、お母様から認めてもらえなければ、自分の事は何も出来ない。
お母様から認めてもらうものは、所作だった。
礼のしかた。歩き方。話し方に、断りかた・・・
それらを全て、お母様に見せ、合格をもらうことが、1日を始めるに当たっての最優先事項だ。

所作の先生であるマークス公爵夫人に、一通りの動きを見ていただき、直す場所などを聞こうとしていたが
「ミシェル様に、所作の指導は必要ございませんね」
と突然、そんなことを言われた。
「どうしてですか?}
「もしかしてミシェル様は、お母様の指導を受けていらっしゃいますか?」
「あ、はい。家に居るときは必ず、お母様のチェックが入ってました」
「やはり・・・完璧なのです。
 礼の角度、歩き方カーテシーまで。
 全て、押さえる場所を押さえてあります。
 ですので、注意する場所がありません」
「ですが、これは王子妃教育に欠かせないのでは?」
「それは、普通のお家で育った方ですね。
 基本お母様が、前王妃様の侍女で、元王妃様の指導役に
 なった人と言うのが珍しいのです」
まぁ、そうですよね。
「ですので、ミシェル様は特例として、免除させていただきます」

「ありがとうございます」
急遽、免除が決定してしまった。
「この授業は、毎日午前中としていましたが、免除になりましたので
 午前の間は、自由にお過ごしください」
「分かりました」
「午後からは座学になりますので、担当から連絡があると思います」
「はい。今日は、ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとう。では本日はこれで、失礼しますね」
そう言ってマークス公爵夫人は、部屋を後にする。
私は少し時間を置いてから、部屋を出た。

お母様はそんなに細かく教えていたかしら?
お姉様がたまに、しかられていたのは見たけれど、この頃怒られた記憶がない。

そんなことを考えながら歩いていると、前から何処かのご令嬢が、数人かたまって歩いてきた。
私が居るところは、廊下で、幅は3人が限度。
ところが、その令嬢達は3列のまま突っ込んできた。
「あら、そうなの?私、マルクス様の婚約者候補だったのですが・・・」
「それは、私もよ。でも、突然出てきた公爵家の次女が、
 おさまったって聞いて、私・・・」
「ミリア様、マルクス様を愛していらっしゃったから・・・」
「そうですわよねぇ」
そんな話をしながら私の前に来ると、ピタッと止まった。
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