私の存在

戒月冷音

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第166話

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そんなことを考えていると、マルクス様がツンツンと、私の腕をさわった。
「どうか、されました?」
「話が終わったから、礼をして前を辞するよ」
「かしこまりました」
そう返事をした私、を笑って流してくれるマルクス様。
「行こう」
その言葉と共に、2人揃って礼をとり、国王陛下の前を辞する。

「はぁ~・・・緊張した」
「マルクス様は、慣れていらっしゃいますよね?」
「んにゃ、あんな場所、慣れるわけない」
「何年経っても?」
「経っても・・・だな。兄上も慣れるしかないって言ってたけど、俺は
 多分無理だと思う」
「その気持ちは・・・何となく、分かる気がします」
私の言葉にマルクス様は、うんうんと頷きながら、シャンパンを受けとる。

「ミシェルもいる?」
「私は、コールなしで」
「了解。彼女にソフトドリンクを」
「かしこまりました」
給仕のお兄さんはそう言って、その場を離れていく。
「少し、待っててね」
マルクス様はそう言うと、シャンパンを1口飲んだ。
「1口だけ、飲む?」
そう聞かれて、ちょっと興味があった私は、
「味見だけでも、いい?」
「いいよ」
そう言われて、シュワシュワしているグラスを受けとり、すこーしだけ口をつけた。


甘い香りとは裏腹に、喉に来る感覚はすごい。
「甘いのって、匂いだけ?」
「そうだね。でも、甘味は入ってるよ」
少しポやっとした私は、マルクス様が甘味と言ったことに、気付かなかった。
「ミシェル。もしかして、もう酔った?」
「酔ったのかな?ちょっと、ぽやっとします」
「酔ってるね。かわいい」
そんな会話をした直後、さっきの給仕さんが、オレンジジュースを持ってきてくれた。
「マルクス様、ソフトドリンクです」
「ありがとう。ほら、ミシェル。ジュースだ」

こくこくと飲み干すと、少しスッキリした感じかずる。
「ありがとうございます。給仕の方も、ありがとう」 
私がそう言うと
「もったいない、お言葉です」
と言って礼をし、て去っていった。
私はその言葉に疑問を持ち、マルクス様に
「私、何かした?」
と聞いた。
すると
「王宮の使用人は、あまり感謝を伝えられないらしいんだ。
 だから、嬉しかったんじゃない?
 ありがとうって、言ってもらえて」
そう返事をもらった。

私は日本人だったからなのか分からないが、すぐにありがとうという癖がある。
両親や兄姉達も
「どうしてすぐ、ありがとうって言うの?」
と、聞かれたほどだ。
元日本人の私にとっては、手を掛けてくれた方等、相手を自分のために動かせてしまった場合は、私の中の決まりごととしてまず、手をかけてくれて、ありがとうと。
私のために、時間を使ってくれてくれてありがとうと、感謝を表すことにしている。
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