私の存在

戒月冷音

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第168話

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マルクス side


俺は、何が正解か、分からなくなっていた。
夜会から、ミシェルを連れて、離宮に帰ってくるまではよかった。
馬車の中で可愛くて、ふわふわしていたミシェルにくっつかれて、ドキドキしていた。

「ただいま帰りました」
そう言って、ミシェルを抱き抱えながら馬車を降りると、何故か宰相とルーザが待ち構えていた。
「マルガン宰相。何かありましたか?」
「何かあった・・・と、言うことではなく、マルガ様が見ておられまして・・・」
「見て?」
「マルクス様が、ミシェル嬢にコールを勧められているところを・・・です」
「あ・・・」
そうだ、そうだった。あれが最初だった。
俺がコールを勧めた。
確かに勧めたが、まさか1口?1舐めだけで、あそこまで酔うとは思わないだろ。
「それを見ておられたマルガ様が心配されて、私をここに送られたのです」
「すみません。ご心配をお掛けして・・・」
「それは・・・良いのですが、ミシェル嬢は?」
「馬車の中で、眠ってしまったので・・・」
ミシェルは、俺の腕の中ですやすやと眠っている。


その後、全員揃ってミシェルを部屋に連れていくと、ルーザが寝衣をもって待機していた。
「マルクス様、ミシェル様をこちらへ」
「あぁ」
そう言ってベッドに連れていくと、ゆっくりと下ろす。
しかし・・・
ミシェルがつかんだ手が、離れないのだ。
「ど、どうしよう。ルーザ」
「マルクス様。仕方ないので、そのままで目隠しをさせてください」
ルーザにそう言われると同時に、目を隠される。
「絶対に、見ないでくださいね」
シュルシュルと聞こえる音に顔を暑くしながら、俺はなるだけ動かないようにたえた。

「はい。ミシェル様の着替えは、終わったわ」
そう言って、目隠しを外される。
すると、目の前に居たのは、薄い布のドレスを着た、女性だった。
「ルーザ・・・俺、どうすれば言い?」
俺の問いは、だれにも届かなかった。

「では、私はこれで、王宮に戻らせていただきます」
一度外に出ていた宰相が入ってきて、そんなことを言う。
「え?これで帰るの?」
「ミシェル様は無事、ベッドに入られましたし、しっかりしたメイドも
 おりますので、安心して帰れます。
 マルガ様にも、良きようにお伝えしておきますので・・・」
そう言って宰相が帰った後、ルーザも何も言わず、礼をして部屋を出ていってしまった。

おいっ!2人とも、俺はどうすれば良いんだ?

そう思いはしたものの、すやすや眠っているミシェルを見ていると、俺もどんどん眠くなり、仕方がないのでミシェルが掴んでいない上着だけを脱いで、ミシェルの横に転がる。
スウスウ聞こえる寝息が、とても心地よく、次第に目蓋が落ちてくる。
そしてそのまま俺は、眠りへと落ちていった。

このときの俺はまさか、ミシェルが寝ぼけて、俺のシャツをむくなんて、想像すらしていなかった。
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