私の存在

戒月冷音

文字の大きさ
164 / 168

第171話

しおりを挟む
「ふふふっ・・・この時は、皆さんそうなります」
「それは、どうして・・・?」
「私の娘、カサンドラも、最終試験を告げられた時は、そうなったと
 言っておりましたわ」
そう言って、コーラル公爵夫人はまた笑う。
「あの・・・」
「あぁ、ごめんなさい。娘もこうだったのかと思ったら、つい」
そう言うと、深呼吸をしてから
「多分、どうして母親であるメリテッサ様が入っているのかが、気になったのでしょう」
「はい」
「それはね、王妃と王子妃は、公の場に置いて、家族がいても
 気を抜いてはいけません。
 その体験をするためのもので、試験で親子のような会話をすると?」
「怒られるのですね」
「その通りです」

きちんと考えられた試験官だった。
けれど、エリス王妃殿下にとっては、どうなんでしょう?
エリス王妃は今、療養と言う名の、再教育中だったはず・・・
「それでね。国王陛下から聞いたのですが、ミシェル様は
 今のエリス様の状態を、知っておられるとか?」
「は、はい」
「今回エリス様が参加されるのは、あのお方も試験なのだそうです」
「エリス王妃殿下も?」
「えぇ。実質、試験管はメリテッサ様のみとなります」
あぁ・・・そう言うことか。

お母様は、前王妃様の元侍女。
前王妃様から、全てを教え込まれたお母様は、前王妃様からの推薦で、王妃候補にはなったが、最終審査まで残れなかった。
その理由は、母親の傍にずっといた侍女を、選べないとその時の王太子・・・今の国王陛下が、言われたからだった。
だから候補を外れ、お父様に嫁いだ。
今、王妃様の判定が出来るのは、お母様しかいない。
あのお母様であれば、娘の卒業試験と一緒に査定してしまいましょう・・・ぐらい言いそうだ。

「その事で、メリテッサ様からのお手紙をいただいております。
 これをお読みになって、当日ご準備お願いします・・・とのことでしたが・・・」
私はその言葉を聞いて、まさかと思い
「夫人の前で開封することを、お許しください」
と一言言ってから、手紙を開封した。

《ミシェルへ
 
 頑張っているようですね。コーラル公爵夫人から、王子妃教育の最終試験の試験管を頼まれました。
 話を聞けば、その席にエリス王妃殿下も御参加と言うことで、私は考えましたの。
 あの時を知っているミシェルも、分かっていると思うのですが・・・
 それで、お願いがあるの。
 エリス王妃殿下の前に並べるお菓子を、ミシェルに作ってもらいたいの。
 あの方がすぐに、飛び付きたくなるような見た目で、おいっしいお菓子を・・・
 よろしくね》

お母様・・・
確かに王妃様はあの時、自分の権力、財力全てを使ってでも、私のお菓子を欲しがった。
だからあんなことをしたのだし、再教育になった。
でも、そのトラウマを使おうとか・・・
やっぱり一番怖いのは、お母様です。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愚かな恋

はるきりょう
恋愛
そして、呪文のように繰り返すのだ。「里美。好きなんだ」と。 私の顔を見て、私のではない名前を呼ぶ。

この別れは、きっと。

はるきりょう
恋愛
瑛士の背中を見ていられることが、どれほど幸せだったのか、きっと瑛士は知らないままだ。 ※小説家になろうサイト様にも掲載しています。

王子様の花嫁選抜

ひづき
恋愛
王妃の意向で花嫁の選抜会を開くことになった。 花嫁候補の一人に選ばれた他国の王女フェリシアは、王太子を見て一年前の邂逅を思い出す。 花嫁に選ばれたくないな、と、フェリシアは思った。

【完結】あいしていると伝えたくて

ここ
恋愛
シファラは、生まれてからずっと、真っ暗な壁の中にいた。ジメジメした空間には明かり取りの窓すらない。こんなことは起きなかった。公爵の娘であるシファラが、身分の低い娼婦から生まれたのではなければ。 シファラの人生はその部屋で終わるはずだった。だが、想定外のことが起きて。 *恋愛要素は薄めです。これからって感じで終わります。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

秋色のおくりもの

藤谷 郁
恋愛
私が恋した透さんは、ご近所のお兄さん。ある日、彼に見合い話が持ち上がって―― ※エブリスタさまにも投稿します

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

マジメにやってよ!王子様

猫枕
恋愛
伯爵令嬢ローズ・ターナー(12)はエリック第一王子(12)主宰のお茶会に参加する。 エリックのイタズラで危うく命を落としそうになったローズ。 生死をさまよったローズが意識を取り戻すと、エリックが責任を取る形で両家の間に婚約が成立していた。 その後のエリックとの日々は馬鹿らしくも楽しい毎日ではあったが、お年頃になったローズは周りのご令嬢達のようにステキな恋がしたい。 ふざけてばかりのエリックに不満をもつローズだったが。 「私は王子のサンドバッグ」 のエリックとローズの別世界バージョン。 登場人物の立ち位置は少しずつ違っています。

処理中です...