私の存在

戒月冷音

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第170話

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私は、う゛~~っと唸った後、こうしちゃおれぬと思い、着替え始める。
クローゼットから、簡易なコルセットと、よく着ている薄いグリーンのドレスを出す。
簡易なコルセットは、一人でつけられるもの。
背中をピッチリと合わせて、前のひもを締める。
それで、着けれるようになっている。
その上からドレスを着て、ボタンを止めていると、コンコンと音がした。

「はい・・・」
「終わってる?」
やっぱり、マルクス様だった。
「も、もう少しです。しばしお待ちを・・・」
そう言って、慌ててボタンを止め、髪をとく。
「準備できました。どうぞ、お入りください」
中に入ってこられたマルクス様は、昨日の夜とはまた違った、スッキリした衣装で現れた。
これはこれで、かっこいい・・・
そんなことを思っていると、ルーザが朝食を持ってきてくれた。

「サンドイッチか」
「はい。料理長が、ミシェルさまのレシピを使い、お作りしたと
 言っておりました」
「ってことは・・・あった、タマゴサンド」
ルーザがセッティングし終える前に、マルクス様が手を伸ばす。
「ダメですよ。マルクス殿下」
ペシっと、マルクス様の手をはたき、つまみ食いを阻止するルーザ。
「お前だけだぞ、俺の手をはたける侍女なんて。他でやったら首だな」
「そんなっ、首なんて・・・」
私は首と言う言葉だけ、はっきりと聞こえてしまい慌てる。
しかし
「ミシェル様、大丈夫です。
 私は、マルガ様から全ての許可を頂いておりますし、つまみ食いのことも
 聞いてます。
 絶対するでしょうから、阻止しなさいと」
「は、母上~~・・・何もそこまで準備しなくても・・・」
私とルーザは、顔を見合わせた後、クスクスと笑った。


その後、朝食を食べた私達は、何時もの仕事に戻っていく。
マルクス様は執務、ルーザは侍女のお仕事。
私は・・・
王子妃教育の、仕上げだ。
「ミシェル様、本当にあなた様は物覚えも早く、分からないことはご自分で
 お調べになっていらしたことも、知っております」
この声は、私の先生の一人、クレア・コーラル公爵夫人。
コーラル公爵夫人は、現国王のお妃候補として選ばれた五人のうちの一人で、最後まで残った方だ。
「ありがとうございます」
「座学は全て終わりましたし、あとは、実地の試験となります」
「し、試験・・・ですか?」
「はい。一番、試験官にふさわしい方に、お願いいたしましたわ」
「えっ・・・それは、どなたたか聞いても良いのでしょうか?」
「はい。メリテッサ・オーギュスト様と、エリス王妃殿下です」
はい?どうしてお母様が?
そう思ってポカーンとしていると、コーラル公爵夫人の笑い声が聞こえてきた。
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