私の存在

戒月冷音

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第173話

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と、思ったところで
「ミシェルが、なにか作ってる~」
マルクス様が現れた。
「マ、マルクス様、今はストップでございます」
「え?ストップ?」
料理長とマルクス様がそんな話をするなか、私はオムレツに切り見込みをいれ、左右に開いた。

プルプルの卵が、マイのお山の上からトゥルルンッと落ちていく。
「うわーーーーっ」
マルクス様の声で、料理長は大慌てでマルクス様にストップと言い、厨房にいる料理人達の目が一斉に、こちらをむいた。
「あ、あの・・・」
私はあまりの声にビックリして声をかけると
「ご、こめん。つい、叫んだ・・・って、なんで皆集まってんだ?」
「マルクス様が叫ぶからですよっ」
「ミシェル様が、お一人で作るからと言われたので、必死に耐えてたのに・・・」
「ミシェルさまの、お邪魔にならないように我慢したのに・・・」

料理人達の声に、さすがのマルクス様も
「すまない。悪かった・・・」
と頭を下げた。
「でもミシェル、これって・・・オムライス、だよな?」
「はい。そうです」
「これって・・・皆で食べた、ほう・・・が?」
話を続けようとしたマルクス様は私を見て、続けて良いのか分からないかのように、わたわたし始める。
その理由は、私が泣いていたからだ。

「ミシェル?どうしたの?なんで泣いて?」
私はそう言われてヤバッと思い急いで涙をぬぐう。
「す、すみません。これは・・・」
マルクス様は、どうして良いか分からないかのように固まっていたが、とりあえずここから出ようと私に言い、料理長に後を任せて、私が作ったオムライスを持ち、私の手を引いて、いつか使ったガゼボに連れていった。


オムライスをテーブルに置き、私を座席に座らせてハンカチを渡した後、マルクス様は頭を下げた。
ハンカチで、涙を拭いていた私は、ビックリして
「マ、マルクス様?」
と声をかけた。
「ごめん。厨房で俺が言った言葉は、無神経なものだ。申し訳ない」
「いいえ。マルクス様に気を遣わせてしまって申し訳ございません。
 今日の教育で、私の最終試験の内容を伝えられたのですが・・・」
「何か、重大なことでもあった?」
「はい。私のお菓子を、他の方の最終試験に使うようで・・・」
「そうなの?」
「それで、悩んでたら、あることを思い出しまして・・・」
マルクス様はそこまで聞くと、前世で何かあったと気が付いた。

そして
「もしかして、前世で誰かのために作った料理ってこと?」
「そう、ですね」
私の答えに、分かってくれたマルクス様はその後も、静かに待ってくれている。
そして私は、前世の悪夢を話し始めた。
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