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第29話
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「まぁ、すごい…」
「これは、スイートアリッサム。父上が、母上にと選んだ花らしい」
「そうなのですか。
国王様に側妃様は、そのように見えていらっしゃるのですね」
「そのように?」
「この花の花言葉は【優美】【美しさに勝る価値】なのです」
「優美か…」
「どうかされたのですか?」
少し寂しそうな表情をしたマルクス様が、少し気になった。
「いや…何でもありません」
「そんな感じではないのですが…日本のことですか?」
その言葉にビクッとするマルクス様。
「私、聞きますよ?聞く事しか…出来ませんが」
するとマルクス様は、目をパチパチさせたあと、フーっと息を吐いてから
「妹の…名前。優美と書いてゆうみだった」
と教えてくださった。
「妹さん。お元気だったのですか?」
「あいつは、病気知らずだった。
俺が病気になった時、一緒に住んでいた家族は誰もこなかった。
けどゆうみだけが、週に一回だけど来てくれて、色々やってくれたんだ。
まだ意識があった時は、たくさん話してたんだが、意識が朦朧として
はっきりしなくなってからも、時々来てるのを感じては居たんだ。
結局、礼も言えずに死んじまったが…」
「大丈夫ですよ。ゆうみさんには伝わっていると思います」
「そうだといいが…それと、パウンドケーキ」
「ケーキもゆうみさんが?」
「いや。こっちは娘だ。
よく作ってくれたんだ。なんにも入っていない、普通の」
「そうだったのですね」
「でもな。食べて思い出したよ」
「何を?」
「毎回、味が違うんだ」
「?」
「砂糖がなくて蜂蜜入れたり、粉糖入れて甘みがなかったり…」
「まぁ…」
「一番最悪だったのが、塩辛かったやつだな」
「塩、辛い…って砂糖と塩を「間違えた」
ふふっ…
ククッ…
マルクス様は私のお菓子で、懐かしい思い出を思い出していた。
私にはそんな記憶はない。
私は前の日に作って、次の日の朝ごはんにしていた。
誰も作くらないご飯を、自分が作り自分で食べる。
それを10歳ぐらいからしていた。
その時15だった姉は、私の作ったものを持っていってしまい、食べるものがなかった時もあった。
確認すると
「これ、私のために作ったんでしょ。
だから、食べてあげたの感謝なさい」
と言って、それが当たり前のように言われた。
だからその日から、何かを作る時は2つ作るようにした。
一つはテーブルに。一つは自分の部屋に。
そうしてなんとか、食べてきたのだ。
「大丈夫?」
突然声をかけられ、ハッとした。
私は考え事をしながら、ぼーっと歩いていたようだ。
「すみません。ご心配をおかけしました」
「大丈夫ならいい。少し先にガゼボがあるから、そこで少し休もう」
マルクス様はそう言うと、ゆっくりと歩いてそこに誘導してくださった。
私は薦められた席に座り、ホッと息を吐いた。
「これは、スイートアリッサム。父上が、母上にと選んだ花らしい」
「そうなのですか。
国王様に側妃様は、そのように見えていらっしゃるのですね」
「そのように?」
「この花の花言葉は【優美】【美しさに勝る価値】なのです」
「優美か…」
「どうかされたのですか?」
少し寂しそうな表情をしたマルクス様が、少し気になった。
「いや…何でもありません」
「そんな感じではないのですが…日本のことですか?」
その言葉にビクッとするマルクス様。
「私、聞きますよ?聞く事しか…出来ませんが」
するとマルクス様は、目をパチパチさせたあと、フーっと息を吐いてから
「妹の…名前。優美と書いてゆうみだった」
と教えてくださった。
「妹さん。お元気だったのですか?」
「あいつは、病気知らずだった。
俺が病気になった時、一緒に住んでいた家族は誰もこなかった。
けどゆうみだけが、週に一回だけど来てくれて、色々やってくれたんだ。
まだ意識があった時は、たくさん話してたんだが、意識が朦朧として
はっきりしなくなってからも、時々来てるのを感じては居たんだ。
結局、礼も言えずに死んじまったが…」
「大丈夫ですよ。ゆうみさんには伝わっていると思います」
「そうだといいが…それと、パウンドケーキ」
「ケーキもゆうみさんが?」
「いや。こっちは娘だ。
よく作ってくれたんだ。なんにも入っていない、普通の」
「そうだったのですね」
「でもな。食べて思い出したよ」
「何を?」
「毎回、味が違うんだ」
「?」
「砂糖がなくて蜂蜜入れたり、粉糖入れて甘みがなかったり…」
「まぁ…」
「一番最悪だったのが、塩辛かったやつだな」
「塩、辛い…って砂糖と塩を「間違えた」
ふふっ…
ククッ…
マルクス様は私のお菓子で、懐かしい思い出を思い出していた。
私にはそんな記憶はない。
私は前の日に作って、次の日の朝ごはんにしていた。
誰も作くらないご飯を、自分が作り自分で食べる。
それを10歳ぐらいからしていた。
その時15だった姉は、私の作ったものを持っていってしまい、食べるものがなかった時もあった。
確認すると
「これ、私のために作ったんでしょ。
だから、食べてあげたの感謝なさい」
と言って、それが当たり前のように言われた。
だからその日から、何かを作る時は2つ作るようにした。
一つはテーブルに。一つは自分の部屋に。
そうしてなんとか、食べてきたのだ。
「大丈夫?」
突然声をかけられ、ハッとした。
私は考え事をしながら、ぼーっと歩いていたようだ。
「すみません。ご心配をおかけしました」
「大丈夫ならいい。少し先にガゼボがあるから、そこで少し休もう」
マルクス様はそう言うと、ゆっくりと歩いてそこに誘導してくださった。
私は薦められた席に座り、ホッと息を吐いた。
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