私の存在

戒月冷音

文字の大きさ
54 / 168

第58話

しおりを挟む
お母様と王妃様の冷戦が続く中、私とマルクス様はゆっくりと歩き出す。
「なっ。何をやってるの?」
王妃様が気付きそう言うが、私達は止まらない。
後ろではお兄様とお姉様が
「やるわね」
「多分、ミシェルの提案だな」
と話していたが、スルーすることにした。

私とマルクス様はそのまま、国王陛下の正面に立つと、マルクス様は片膝を着き臣下の礼を、私はカーテシーをしてご挨拶した。
「父上。こちらがミシェル・オーギュスト公爵令嬢でございます」
「この国の太陽。国王陛下に拝謁できましたこと、光栄に思います。
 わたしはミシェル・オーギュストと申します。
 この度、マルクス第二王子殿下との婚約のために、呼ばれたと理解しております。
 私は、殆ど社交に出ておらず、世間をよく分かっておりませんが、
 それでも、マルクス殿下の婚約者にと望んでいただけるのであれば、
 謹んでお受けしたいと思っております」
そこまで言って、陛下のお言葉を待った。

「先程まで、蚊帳の外になっておったが、ようやく願いがかなったようだ。
 私はマルクスの父でマイルズ・エルディニアだ。
 国王という立場ではあるが、今はマルクスの父として相手をさせてくれ」
国王陛下はそう言って、ニッコリと笑った。
「父上…」
「畏まりました。ですが、国王陛下とお呼びすることしか出来ませんが…」
「ククッ…そう返してくるか。まあ良い。それで呼んでくれ」
「ありがとうございます。
 それでは…お母様とエリス王妃様は、まだ何かご用事お有りのようですので、
 私達は場所を移しませんか?」
「ふむ…それもそうだな。マルがよ。いい場所はあるか?」
国王陛下は側妃様に尋ねた。
するとそこへ
「あ、あの、お父様。私、おすすめの場所がございます。
 そこに、いたしませんか?」
とマリーシェル様が、提案してくださった。

「そうか。マリーのおすすめであれば、行かぬわけにはいかん…が。
 それで良いかな?ミシェル嬢。そしてオーギュスト公爵」
「わたしは、ミシェルが良ければ何も」
「私は、マリーシェル様のおすすめが、気になります」
「ではそこにしよう。マリー、案内を頼む」
「はい」
そう言うと国王陛下は席を立ち、マリーシエル様についていく。

「あ、あなた。お待ちになって」
エリス王妃がそう叫ぶが、お母様が逃がすはずもない。
「国王陛下。エリス様には今一度、しっかりと教育させて頂きます」
「あぁ。頼む。王妃が好き勝手に動かれては、公務にも支障が出るからな」
「心得ました。アンソニー。後で合流するわ」
「待っているよ」
そう言うとお母様と王妃様をそこに残し、私達はその部屋を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愚かな恋

はるきりょう
恋愛
そして、呪文のように繰り返すのだ。「里美。好きなんだ」と。 私の顔を見て、私のではない名前を呼ぶ。

この別れは、きっと。

はるきりょう
恋愛
瑛士の背中を見ていられることが、どれほど幸せだったのか、きっと瑛士は知らないままだ。 ※小説家になろうサイト様にも掲載しています。

王子様の花嫁選抜

ひづき
恋愛
王妃の意向で花嫁の選抜会を開くことになった。 花嫁候補の一人に選ばれた他国の王女フェリシアは、王太子を見て一年前の邂逅を思い出す。 花嫁に選ばれたくないな、と、フェリシアは思った。

【完結】あいしていると伝えたくて

ここ
恋愛
シファラは、生まれてからずっと、真っ暗な壁の中にいた。ジメジメした空間には明かり取りの窓すらない。こんなことは起きなかった。公爵の娘であるシファラが、身分の低い娼婦から生まれたのではなければ。 シファラの人生はその部屋で終わるはずだった。だが、想定外のことが起きて。 *恋愛要素は薄めです。これからって感じで終わります。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

秋色のおくりもの

藤谷 郁
恋愛
私が恋した透さんは、ご近所のお兄さん。ある日、彼に見合い話が持ち上がって―― ※エブリスタさまにも投稿します

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

マジメにやってよ!王子様

猫枕
恋愛
伯爵令嬢ローズ・ターナー(12)はエリック第一王子(12)主宰のお茶会に参加する。 エリックのイタズラで危うく命を落としそうになったローズ。 生死をさまよったローズが意識を取り戻すと、エリックが責任を取る形で両家の間に婚約が成立していた。 その後のエリックとの日々は馬鹿らしくも楽しい毎日ではあったが、お年頃になったローズは周りのご令嬢達のようにステキな恋がしたい。 ふざけてばかりのエリックに不満をもつローズだったが。 「私は王子のサンドバッグ」 のエリックとローズの別世界バージョン。 登場人物の立ち位置は少しずつ違っています。

処理中です...