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第83話
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次の日、王妃様の侍女から、ルイス殿下とメリア殿下が朝早くご帰国なさったと聞いた時、私はホッとした。
カサンドラ様が、ヘンドリック様とうまく合わせて、きっちりと断りを伝えたのだろう。
私はあの後、マルクス様に部屋まで送ってもらい、お休みの挨拶をして別れた。
侍女の方々が色々お世話をしてくださり、何とか休めたのだが…
心配でほとんど眠れず、朝を迎えたというわけだ。
コンコン…
「ミシェル。入ってもいいかい?」
マルクス様の声に、私はまだ準備中だったため
「も、もう少しお待ち下さい」
と返し、急いで準備を行う。
そして、自分でガチャッと扉を開け
「お待たせいたしました」
と言って、マルクス様を中へと誘導した。
「おはよう。ミシェル」
「おはようございます。マルクス様」
互いが朝の挨拶をして、ホッとしているのを見たルーザが
「お二人とも、他人行儀すぎます」
と、ツッコミを入れた。
「だからお前を外してくれと、兄上に言ったのに…」
「ヘンドリック様からは、もっとつつけと言われております」
つつかなくて、良い…
心の中でそう思った私は、二人のやり取りを聞きながら、苦笑いを繰り返した。
その後、ルーサは朝食の準備をしてから部屋を辞し、私とマルクス様だけになった。
「申し訳ございません。マルクス様は、朝食を終えておられますよね」
「軽くは、食べているが…」
そう言って、目の前に並ぶ朝食を見る、マルクス様。
王宮の朝食は基本、硬めのパンとスープ。
そして、フルーツ盛り合わせぐらいだった。
私はそこに、肉の腸詰と卵…卵(ラン)を焼いたものを、付けてもらっていた。
どちらも私が持ってきたもので、パンも硬いものではなく、私が焼いたふわふわのパンになっていた。
「俺も、少しもらって良いだろうか?」
マルクス様の問いに
「はい」
と答えた私は、マルクス様の前に、半分にカットしたパンと焼いた腸詰、そしてサラダと、私が作ったマヨを並べた。
「もしかして、バレた?」
「サンドしたいのかなぁ…と、思いまして。
ケチャップがないのが残念ですが、マヨを作りました。
後は、こちらのクフィで何とか…」
クフィは、越していないソースのようなもの。
沢山の野菜を、長時間煮込み、それを潰しただけ。
マルクス様はウキウキしながら、パンに挟んでいく。
私の前だから、隠す必要がない。
日本でやったように、好きなように挟んで頬張る。
「うまいよ」
「ランとマヨも、美味しいですよ」
「あぁ、その組み合わせは、懐かしいなぁ」
「今度、こちらにはない、湯でランを、作ってこようと思います」
「マヨと合わせると、最高だな」
「タルタルも作れますよ」
「揚げ物を、作らないと…」
こんな感じでこの日の朝は、2人で懐かししい食べ物を食べた。
そうし心を回復した私は、マルクス様の婚約者としての勉強を始めたのである。
カサンドラ様が、ヘンドリック様とうまく合わせて、きっちりと断りを伝えたのだろう。
私はあの後、マルクス様に部屋まで送ってもらい、お休みの挨拶をして別れた。
侍女の方々が色々お世話をしてくださり、何とか休めたのだが…
心配でほとんど眠れず、朝を迎えたというわけだ。
コンコン…
「ミシェル。入ってもいいかい?」
マルクス様の声に、私はまだ準備中だったため
「も、もう少しお待ち下さい」
と返し、急いで準備を行う。
そして、自分でガチャッと扉を開け
「お待たせいたしました」
と言って、マルクス様を中へと誘導した。
「おはよう。ミシェル」
「おはようございます。マルクス様」
互いが朝の挨拶をして、ホッとしているのを見たルーザが
「お二人とも、他人行儀すぎます」
と、ツッコミを入れた。
「だからお前を外してくれと、兄上に言ったのに…」
「ヘンドリック様からは、もっとつつけと言われております」
つつかなくて、良い…
心の中でそう思った私は、二人のやり取りを聞きながら、苦笑いを繰り返した。
その後、ルーサは朝食の準備をしてから部屋を辞し、私とマルクス様だけになった。
「申し訳ございません。マルクス様は、朝食を終えておられますよね」
「軽くは、食べているが…」
そう言って、目の前に並ぶ朝食を見る、マルクス様。
王宮の朝食は基本、硬めのパンとスープ。
そして、フルーツ盛り合わせぐらいだった。
私はそこに、肉の腸詰と卵…卵(ラン)を焼いたものを、付けてもらっていた。
どちらも私が持ってきたもので、パンも硬いものではなく、私が焼いたふわふわのパンになっていた。
「俺も、少しもらって良いだろうか?」
マルクス様の問いに
「はい」
と答えた私は、マルクス様の前に、半分にカットしたパンと焼いた腸詰、そしてサラダと、私が作ったマヨを並べた。
「もしかして、バレた?」
「サンドしたいのかなぁ…と、思いまして。
ケチャップがないのが残念ですが、マヨを作りました。
後は、こちらのクフィで何とか…」
クフィは、越していないソースのようなもの。
沢山の野菜を、長時間煮込み、それを潰しただけ。
マルクス様はウキウキしながら、パンに挟んでいく。
私の前だから、隠す必要がない。
日本でやったように、好きなように挟んで頬張る。
「うまいよ」
「ランとマヨも、美味しいですよ」
「あぁ、その組み合わせは、懐かしいなぁ」
「今度、こちらにはない、湯でランを、作ってこようと思います」
「マヨと合わせると、最高だな」
「タルタルも作れますよ」
「揚げ物を、作らないと…」
こんな感じでこの日の朝は、2人で懐かししい食べ物を食べた。
そうし心を回復した私は、マルクス様の婚約者としての勉強を始めたのである。
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