私の存在

戒月冷音

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第95話

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「ミシェル。料理もできるのか?お菓子だけじゃなく」
「はい。自分で作ったときもありますから、ほぼ覚えてはおります」
「でも、フルーツとかはどうするんだ?
 多分料理長は、少し前にミシェルが教えた、生クリームとフルーツで
 デザートを予定していたろうから、フルーツも多いと思うよ?」
マルクス様の言葉に、はっと覚醒した料理長が動きだし
「そ、そうでございます。フルーツもたくさんございまして・・・」
と話し出した。

「フルーツは、フルーツポンチでなんとかなると思います」
「あぁ、フルーツポンチ」
マルクス様は、懐かしそうに言った。
「また何か、逸話があるのですね。後で教えてください」
「分かった」
嬉しそうに答えるその横で
「あの~・・・、フルーツ、ポ、ポンチ?とは、どのような・・・」
料理長が困っていた。

「すみません。
 フルーツポンチとは、甘いシロップの中に、色々なフルーツを浸けて
 いただくデザートです。
 フルーティーなワインがあれば、それに浸けても良いですし、
 残れば、そのシロップごと固めると、フルーツゼリーになります」
「へぇ~・・・それは良いですね」
「フルーツを全て、スプーンに乗るくらいのサイズにカットして、
 つけておくので、後は器に移すだけ」
「簡単だ・・・」
「そして、これが美味しいんだ。白玉をいれても良いぞ」

マルクス様・・・やっぱり思い出はそちらでしたか。

「白玉は、また後でお教えしますが、小さな丸いお餅・・・
 は無いので分かりませんね。ん~んと・・・」
「まぁ白玉は良いとして・・・
 あのな料理長、これに炭酸をいれてもうまいんだ」
「炭酸を、ですか?」
「そう、甘い炭酸水になってうまいんだ」

「へぇ~、やってみましょう」
そういうと料理長は、ボールにフルーツを細かく切って、入れ始めた。
シェリ、ウイ、グレ、チェリ(リンゴ、キウイ、ブドウ、さくらんぼ)を切った後、
「シロップ、というのは?」
と聞かれたので
「お水に、砂糖を溶かしたものが簡単ですが」
「それだけで、良いんですか?」
「はい」
そう話すと、すぐ筒状の容器に水と砂糖を入れ、シャカシャカとふる。

「こんなもんですか?」
私は、少し味見をしてから
「はい。これを先程切ったフルーツにかけて、冷やしてください」
と伝えた。

料理長は半信半疑のままフルーツにかけ、冷蔵庫に入れて少し時間を置く。
その間、色々なフルーツの名前を言って、大丈夫かどうか確認していたが、さすがに全てをごちゃ混ぜにすると、すごいことになりそうだったので、その中からグルーブになにそうなものをピックアップして、相性の良い組み合わせを伝えた。
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