なくなって気付く愛

戒月冷音

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第二章 25年後

クリストファ・マルコスside2

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それから数年後、兄上が後を追うような亡くなった。
マルコスの屋敷は俺の一番上の兄上が継ぎ、サンディ様は屋敷を出ることが決まった。
その時
「サンディ様。どうか私と結婚していただけませんか?」
俺は彼女にプロポーズした。
しかし
「クリストファ様。
 私はこのような体で、あなた様のお役に立てるとは思いません。
 どうか、私などお見捨てになって、あなた様にふさわしいご令嬢と
 ご結婚なさることをお薦めいたしますわ」
と、やんわりと断られた。
けれど俺は、諦めなかった。
絶対に彼女を、俺の手で幸せにしたかった。
だから、何度も何度もプロポーズした。

貴方が良いのだと。
貴方が欲しいのだと・・・

そうしてやっと、承諾してくれた彼女と、小さな協会で式をあげ、2人の子供と4人で生活するようになった。


それから数ヵ月経った時、俺はあることを思い出した。
彼女が目を覚ましてから数ヵ月後、町を皆で歩いていると、一台の見たことのない馬車とすれ違った。
この散歩は、サンディのためのものだ。
マルコスの家に籠って、動かなければ、体が固まってしまう。
だから毎日、俺と子供達でマルコス家を訪ね、皆で買い物と言う名の散歩を、していたのだ。
何時も通り、歩きなれた道を歩く。
息子と娘は、サンディと歩くのが楽しいのか、何時も笑ってついてくるが、サンディの調子が悪くなればすぐに俺におんぶしろと言って、持っている荷物などを回収してくれる。

その日も途中までは大丈夫だったが、馬車が横を通りすぎると、何故か固まった。
「お母様。ゆっくりでいいのよ」
「ありがとう」
「父上。母上を支えて上げてください」
「分かった。すぐに行くよ」
そう答えて、持っていた荷物を息子に渡すと、サンディに背中を向ける。
「乗って」
「いいの?」
「乗らなきゃあいつに、俺が叱られる」
俺の前で、まだかと睨み付けている息子を見て、サンディが笑った。
そして、おんぶをして歩き出すと、俺の首にキュッとしがみついた後、
「ごめんなさい。ごめんなさい」
と言って涙をこぼした。
その時、少しだけ話を聞いた。
あの紋章の家に居たこと。
自分の病気に気付いて、家を出たこと。
その時に残してきた、ユーリウスと言う、男の子の事を・・・


彼女と一緒になって数ヵ月後、俺はたまたま王都に行く用があり、彼女から聞いた住所に行ってみるとその屋敷は真っ暗だった。
近所で話を聞いてみると数年前に屋敷を引き払い領地に引きこもったらしい。
それを聞いて帰った俺は、彼女にその事を伝えた。
すると
「やっと・・・ユーリの母親と一緒になるのね」
と呟いた。
俺からするとそうじゃないと思うんだが・・・その言葉は飲み込んだ。
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