なくなって気付く愛

戒月冷音

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第二章 25年後

数か月後・・・1

その日、ユーリウス・エルネストは、妻と子供達を連れてマルコス領を訪ねていた。
「父上。ここは綺麗な町ですね」
「そうだな」
「お祖父様が、時々来ていらしたのよね?」
「あぁ・・・」
ユーリの子供は、長男と長女。
長男は16、長女は14で、2人ともしっかりとした子達だ。

「あなた、顔色が・・・」
ユーリの傍に居る妻は、サンドラ母上の教え通り、自分が選んだ女性だ。
父上は、自分の伴侶について何も言わなかった。
自分が失敗したから何も言えないと、執事長のアントレに話していたのを、聞いたことがある。
「大丈夫だ。いろいろ・・・思い出してしまったから」
サンドラ母上は、父上の前からいなくなった後、この領で生活していた。
お世話になったマルコス男爵夫妻に恩を返すため、体が不自由になっても、お二人のお世話をしていたらしい。
「父上、大丈夫ですか?」
「お父様・・・」
「2人にも心配をかけてすまない。
 さすがに、あの時の事はトラウマになっててね。
 でも大丈夫。今日で全て片付くはずだから」
「本当?」ですか?」
「あぁ・・・」
そんな話をしながら、マルコス男爵邸に到着した。


「突然、申し訳ない」
「初めまして。私は、ジェファーソン・マルコスと申します。
 こちらこそ、エルネスト公爵様に来ていただけるなど、
 思っても見ないことで、ビックリしております」
「クリストファー殿は?」
「あぁ、叔父上はもうそろそろ、来られるかと・・・」
そんな話をしていると、門の方から声が聞こえてきた。

「お前達、行儀良くしろよ」
「父さんこそ、サンディ母さんの教えを思い出せよな」
「お兄様、言葉・・・」
「そうだった。父上に引きずられた・・・」
年老いた男性と、若い男性と女性が歩いて、ここまでやって来る。
「あぁ、到着したようですね。
 叔父上っ、お客様は来られていますよ」
マルコス男爵がそう叫ぶと、年老いた男性が慌ててこちらにやって来た。
「すまない、ジェフ。
 遅くなって、申し訳ございません。
 よく、おいでくださいました。
 わたしが、クリストファー・マルコスです」
「初めまして、ユーリウス・エルネストと申します。
 サンドラ母上に、10歳まで育てていただいた者です」

サンドラとサンディ・・・
その二つの名が、エルネスト公爵家とマルコス男爵家を繋いだ。

「エルネスト公爵様、叔父上。
 こんなところで話すよりも、中でお話しください。
 父上から聞いていた、サンディ様がお好きだったお部屋を、
 準備しておりますので・・・」
そう言うと、ジェファーソン様は中に入っていく。
それに続いて、エルネスト公爵一家と、クリストファー一家が、後ろを付いていった。

「こちらのお部屋でございます」
そう言って通された部屋は、サンルーフのある明るいお部屋。
日の直接当たらない場所に、ソファーとテーブルがあり、そこに軽食などがセットしてあった。
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