人の心の裏表

第57話 レイノルズside

女の子の悲しい言葉が続いている。
ジャネット嬢はこんな事になるとは思っていなかったのだろう。自分が正しくいつものようにしていれば皆が喜び自分を称える…そう思って生きて来たのだから。
その後女の子が泣き出してしまった時、誰も何も言えなかった。
エリス嬢以外は…。

彼女は直ぐ様少女に駆け寄り、膝をついて話しかけ、すがるように差し手された手を受け入れ、ぎゅっと抱き締めてあげている。周りはそれを見て驚き自分もなにか…と言う感じで慌てているが、エリス嬢は周りににこりと笑いかけた後
「大丈夫、だからね。落ち着こうね」
と声をかけた。周りの領民と女の子への気遣い。
そして、子供に対する優しさが溢れていた。


しかしこっちの女は
「なんで、何で泣くのよ。いいじゃん兄弟いっぱいで…」
等とブツブツ呟いている。
俺は、少しだけ近寄りこう言った。
「アンタとルキアの結婚は王命だ。
　アンタが何時までも夢を見るのは勝手だが、そのせいで
　首を捧げる人間が居ることを忘れるな」
「首っ!?なんで？」
「王命になった時点で、グラント家は救われた。
　ただ、アンタの遊びで横領し、国に迷惑をかけた者の処分はミラー子爵が被った。
　しかしこの後、何かが起これば次はグラント家になる。
　アンタはジャネット・グラントだからな」
「わたしはジャネット・ミラーよ」
「じゃあ、ミラー子爵と共に、一生返せないほどの借金と生きるんだな」
そう言った瞬間、静かになった。
「アンタの両親は家財一式、屋敷までなくなり、
　返せない借金の為に働きに出てる。そこに戻る…と言うんだな。アンタは」

その言葉にブンブンと頭を振ったジャネット嬢は、大人しくグラントの屋敷に帰ることにしたようだ。
送り届けた者の話によると、ジャネット嬢は三日前に屋敷を飛び出したそうだ。
二日、領内を探したが見つからず三日目に警備隊に捜査の依頼を出した所、家の領から似た人が居ると聞いた様だ。
その後、届けられた姿を見たグラント夫妻はぶっ倒れ、ルキアに預けたと聞いた。

まぁ、人騒がせな女だ。