人の心の裏表

戒月冷音

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第60話

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馬車に乗った帰り道、私はぼーっと外を眺めていた。
レイノルズ様も何も言わず、このまま家につくまで無言かなと思った。

しかし。
「エリス嬢、そろそろ話してほしいな」
レイノルズがそう言って、私の隣りに座った。
「は、話す…ですか?」
「うん。さっきからなにか、思い詰めてる…よね」
「…」
「何も言わなくても分かるよ。街で見た笑顔がない。俺はそれが悲しいんだ。
 せっかくあんなに楽しく買い物を終えて、そのまま帰れると思ったら
 あんな事に巻き込まれて…不安になって当たり前だ」
「…で、ても、こんな事言ってしまって良いんでしょうか。
 今まで自分でなんとかしてきたので、今回も何とかなるかと…」
「今までは、それが当たり前だったんだね」
「当たり、前…」
「そう。何かあっても誰にも相談せず、なんとか自分でやってきた。違う?」
「そうですね。今までは誰にも話せませんでしたから」
「今まではそれでいいけど、これからは俺に話して」

「えっ?」
「俺、エリス嬢の事をもっと知りたいし力にもなりたい。
 困っていたら手を貸して上げたいし、楽しかったら一緒に楽しみたい。
 でも、その為には君がもっと俺を頼ってくれないと、どうにもならないんだ」
「どうしてですか?」
「だって俺は君じゃないから…君が話してくれなきゃ君の心の中まで理解らない。
 予想して動くこともやってはみるけど、多分今はそれじゃない気がする。
 俺は君にとって、頼りないのかな?」
レイノルズ様は寂しそうに、そう言った。
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