きずな食堂へようこそ！

手術結果

手術中を知らせる赤いランプが静かに消え、重い扉がゆっくりと開かれた。手術室の中から現れたのは、薄くブルーがかったカーキ色の手術着を纏った執刀医だった。彼は疲れた表情を浮かべながらも、家族の元へと足を向けた。

待合室では、コバヤシさんの家族が不安に苛まれながら椅子に腰掛けていた。妻は手を握りしめ、瞳には涙が浮かんでいる。子どもたちも緊張した面持ちで、時折、時計を見つめていた。医師の姿が視界に入ると３人は一斉に立ち上がり、息を詰めて彼の到着を待った。

「先生、うちの人は……」

コバヤシさんの妻の声は震え、今にも泣き出しそうな表情だった。

医師は一瞬言葉を探すように目を閉じ、そして静かに口を開けた。

*

夕闇が迫る中、きずな食堂ではサトウさんが子どもたちに夕食を提供していた。彼女の心は不安で押し潰されそうだったが、子どもたちにはその様子を見せまいと努めていた。食堂の電話が鳴り響き、サトウさんは急いで受話器を取った。

「はい、きずな食堂です」

受話器の向こうから聞こえる声に、彼女の表情が一瞬強張ったが、次の瞬間には安堵の色が浮かんでいた。

「はい、はい……そうですか……本当に、良かった……」

そのまま深く頭を下げ、電話を切った。

「みんな、聞いて！」

サトウさんは子どもたちに向かって声を上げる。

「コバヤシさんの手術が無事に終わったって、コバヤシさんの家族から連絡があったの！」

その言葉にワッと歓声がわき、食堂内は拍手で満たされた。子どもたちは飛び跳ねて互いに喜びを分かち合う。

「やった！コバヤシさん助かったんだ！」

タモツが叫ぶと、ユウカもその言葉に続いた。

「本当に良かった！」
「……良かった」

ただ一言、良かったと呟いたナオキは、腰が抜けたようにその場にしゃがみこむ。
サトウさんは微笑みながら、子どもたちの喜びを見守った。彼女の心にもようやく平穏が戻ってきた。

*

きずな食堂に朗報が入る10分程前。手術を終え、コバヤシさんの家族の元へと向かった執刀医は希望の光を届けた。

「ご主人は、無事に手術を終えました。手術は成功です」

医師のその言葉に、家族は涙を流し歓喜に満たされる。コバヤシさんの妻はその場に崩れ落ち、感謝の言葉を何度も繰り返し、子どもたちも父親の無事を確認し、安堵の表情を浮かべた。

「ただ、まだ予断を許さない状態です。これからICUでしばらく経過を見守る必要があります。ですが、ご主人は十分に回復の見込みがあるでしょう」

医師の言葉には、確かな希望が込められていた。