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第2章 境界線の向こう側
知性を与えられた猫たちは何を見る? 第21話
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ジョンの緊急の連絡を受け、私は車を走らせた。
後部座席には2匹の猫、そしてコタローが緊張した面持ちで座っている。
ハンドルを手に、車を走らせながら骨伝導通信でジョンからの話を聞いた。
「律佳、これまで話していなかったが……今の状況を見て、そろそろ伝えるべきだと思う。君が向かう現場には、ある種の地球外技術が関与している可能性が高い。そして、それを操っているのが『トラグネス』だ。」
「トラグネス?……彼らは何者なの?」
「彼らの計画はまだ完全には分かっていない。ただ確かなのは、彼らが地球のエネルギーと人間の心理に干渉し、支配しようとしていることだ。」
「そんなことが現実に行われているなんて・・・」
信じがたい話ではあるが、これまでに起こったことで免疫がついたのだろうか。私は意外と冷静に受け止めた。
「で、これから行く先では何が行われてるの?」
「まず、今向かっているのは丸菱電力のデータセンターだが、そこでは、ここ最近、エネルギー消費が異常に増加している。そして、そこから検知されたエネルギーパターンは、明らかに人工的でトラグネス特有の技術だった。おそらくトラグネスが無線エネルギー転送技術を使って丸菱電力の発電所から転送しているとみられる。」
「それで、私たちは何をすればいい?」
「まずは、データセンターに入り込んでの調査、そして転送装置を止めることだ」
データセンターに降り立った私たち、つまり私と2匹とコタローだが、一緒に動いては怪しまれるということで、それぞれ別々に行動することにした。
正面玄関に立った私は、内心の緊張を隠しながらポケットに手を入れた。
「こんなの、本当に通用するのかしら?」
セイくんが作った偽のIDだ。このQRコードを見せれば大丈夫だというが・・・。守衛が端末で確認の間、冷や汗が背中を伝う。
しかし、次の瞬間、「確認できました。どうぞ。」 と言われ、私は安息の息を吐いた。
その頃、
「小さいって得だよなぁ!」
と茶丸はつぶやきながら、データセンターの裏手にある排気口を見つける。その下には小さな隙間が開いており、茶丸は身を縮めて
「よしよし、順調順調……」
茶丸はゆっくりと奥へ進んでいった。
セイくんはデータセンターの外壁近くに設置された監視カメラの死角を見つけ、ピタリと座った。
「さて・・・、こいつをどう無効化するか」
首輪に仕込んだ小さなデバイスを監視カメラに向けて送信信号を送る。数秒後、カメラがピタリと動きを止めたのを確認すると、セイくんは軽くうなずいた。
「カメラ無力化完了」
コタローは犬のぬいぐるみをかぶったまま、堂々とデータセンターの駐車場を歩いていた。
「あれ、犬がいるぞ?」
「いや、なんだ?あの不自然な動きは?」
警備員達が怪訝な顔で振り返る中、コタローは気にする様子もなく、正面から自動ドアを通り抜ける。
だが、次の瞬間、ぬいぐるみの頭が微妙にずれて顔が覗きそうになる。
「おっと」
コタローは素早く頭を直し、すれ違った人々に犬っぽさを精一杯装いながら奥へ進んでいった。
私がデータセンター内の待ち合わせポイントにつくと、茶丸が一番に現れた。
「やったー!いちばーん!あ、なんだ律佳ちゃんが先かぁー」
次にセイくんが静かに現れ、
「監視カメラを無力化しておいたよ。これで内部を動きやすくなったはずだよ」
最後にコタローがぬいぐるみを直しながらやってきた。
「よくこれで入れたよなー」
「私の演技力は完璧です」
「いや、ロボットだろうと犬だろうと、普通はそれで入れないんだけど」
「ホントだよ。僕たちは何を苦労して入ってきたんだろ」
彼らの陽気さに安ど感を覚えるが、すぐに次の作業に移ることにした。
「この端末だね。」
セイくんが先に動き出し、細い足で端末に飛び乗った。首輪から出してきた小さなデバイスをケーブルで接続すると、スクリーンが暗転して数秒後、画面が表示される。
「アクセス完了……システムログに侵入するよ。」
端末のディスプレイに大量のコードが流れ始めた。
セイくんが画面を見つめながら口元を引き締める。
「見て。ここにあるエネルギー消費のデータ、明らかに異常だ。」
茶丸がディスプレイを覗き込む。
「どれどれ?……って、これ、桁がオカシイよ!」
私が手元のメモを確認しながら答えた。
「普通、こんな消費量はありえないわね。これが定期的に発生しているの?」
セイくんが頷いた。
「そうみたい。そしてここに記録されているスケジュールを見ると、次の転送は今日だ!しかも転送量はこれまでの何倍も大きい。どうやら今日、アップデートが行われるみたい!」
「つまり今日の転送が完了すれば、トラグネス派の目的に大きく近づいてしまう可能性が高いわけね?」
私は眉をひそめた。
セイくんはデータをさらに掘り下げながら言った。
「ここに記録されているアクセスログ見ると……どうやら特定のIDがこのシステムを操作しているみたいだ。」
茶丸が画面を指差す。
「それが犯人ってこと?」
「その可能性が高い。」
セイ君は頷きながら続けた。
「このIDは、システム管理者権限を持っているね。」
私は指を顎に当てて考え込んだ。
「つまり、この人物がトラグネス派地球人の可能性がある……」
コタローが画面を見下ろしながら聞いてきた。
「今日の装置のアップデート内容を確認できますか?」
セイくんが画面を操作し、別のデータを引き出す。
「これだ……エネルギー転送装置の制御システムが完全に新しいプロトコルに切り替えられている。」
私はスクリーンのデータを読み取りながら目を見開いた。
「転送規模が……これまでの10倍以上……。これが成功すれば、電力網全体が一時的に麻痺する危険もある。」
茶丸が耳をピクリと動かした。
「で、その転送はいつなの?」
セイくんは画面を指しながら答えた。
「あと・・・2時間後だ」
後部座席には2匹の猫、そしてコタローが緊張した面持ちで座っている。
ハンドルを手に、車を走らせながら骨伝導通信でジョンからの話を聞いた。
「律佳、これまで話していなかったが……今の状況を見て、そろそろ伝えるべきだと思う。君が向かう現場には、ある種の地球外技術が関与している可能性が高い。そして、それを操っているのが『トラグネス』だ。」
「トラグネス?……彼らは何者なの?」
「彼らの計画はまだ完全には分かっていない。ただ確かなのは、彼らが地球のエネルギーと人間の心理に干渉し、支配しようとしていることだ。」
「そんなことが現実に行われているなんて・・・」
信じがたい話ではあるが、これまでに起こったことで免疫がついたのだろうか。私は意外と冷静に受け止めた。
「で、これから行く先では何が行われてるの?」
「まず、今向かっているのは丸菱電力のデータセンターだが、そこでは、ここ最近、エネルギー消費が異常に増加している。そして、そこから検知されたエネルギーパターンは、明らかに人工的でトラグネス特有の技術だった。おそらくトラグネスが無線エネルギー転送技術を使って丸菱電力の発電所から転送しているとみられる。」
「それで、私たちは何をすればいい?」
「まずは、データセンターに入り込んでの調査、そして転送装置を止めることだ」
データセンターに降り立った私たち、つまり私と2匹とコタローだが、一緒に動いては怪しまれるということで、それぞれ別々に行動することにした。
正面玄関に立った私は、内心の緊張を隠しながらポケットに手を入れた。
「こんなの、本当に通用するのかしら?」
セイくんが作った偽のIDだ。このQRコードを見せれば大丈夫だというが・・・。守衛が端末で確認の間、冷や汗が背中を伝う。
しかし、次の瞬間、「確認できました。どうぞ。」 と言われ、私は安息の息を吐いた。
その頃、
「小さいって得だよなぁ!」
と茶丸はつぶやきながら、データセンターの裏手にある排気口を見つける。その下には小さな隙間が開いており、茶丸は身を縮めて
「よしよし、順調順調……」
茶丸はゆっくりと奥へ進んでいった。
セイくんはデータセンターの外壁近くに設置された監視カメラの死角を見つけ、ピタリと座った。
「さて・・・、こいつをどう無効化するか」
首輪に仕込んだ小さなデバイスを監視カメラに向けて送信信号を送る。数秒後、カメラがピタリと動きを止めたのを確認すると、セイくんは軽くうなずいた。
「カメラ無力化完了」
コタローは犬のぬいぐるみをかぶったまま、堂々とデータセンターの駐車場を歩いていた。
「あれ、犬がいるぞ?」
「いや、なんだ?あの不自然な動きは?」
警備員達が怪訝な顔で振り返る中、コタローは気にする様子もなく、正面から自動ドアを通り抜ける。
だが、次の瞬間、ぬいぐるみの頭が微妙にずれて顔が覗きそうになる。
「おっと」
コタローは素早く頭を直し、すれ違った人々に犬っぽさを精一杯装いながら奥へ進んでいった。
私がデータセンター内の待ち合わせポイントにつくと、茶丸が一番に現れた。
「やったー!いちばーん!あ、なんだ律佳ちゃんが先かぁー」
次にセイくんが静かに現れ、
「監視カメラを無力化しておいたよ。これで内部を動きやすくなったはずだよ」
最後にコタローがぬいぐるみを直しながらやってきた。
「よくこれで入れたよなー」
「私の演技力は完璧です」
「いや、ロボットだろうと犬だろうと、普通はそれで入れないんだけど」
「ホントだよ。僕たちは何を苦労して入ってきたんだろ」
彼らの陽気さに安ど感を覚えるが、すぐに次の作業に移ることにした。
「この端末だね。」
セイくんが先に動き出し、細い足で端末に飛び乗った。首輪から出してきた小さなデバイスをケーブルで接続すると、スクリーンが暗転して数秒後、画面が表示される。
「アクセス完了……システムログに侵入するよ。」
端末のディスプレイに大量のコードが流れ始めた。
セイくんが画面を見つめながら口元を引き締める。
「見て。ここにあるエネルギー消費のデータ、明らかに異常だ。」
茶丸がディスプレイを覗き込む。
「どれどれ?……って、これ、桁がオカシイよ!」
私が手元のメモを確認しながら答えた。
「普通、こんな消費量はありえないわね。これが定期的に発生しているの?」
セイくんが頷いた。
「そうみたい。そしてここに記録されているスケジュールを見ると、次の転送は今日だ!しかも転送量はこれまでの何倍も大きい。どうやら今日、アップデートが行われるみたい!」
「つまり今日の転送が完了すれば、トラグネス派の目的に大きく近づいてしまう可能性が高いわけね?」
私は眉をひそめた。
セイくんはデータをさらに掘り下げながら言った。
「ここに記録されているアクセスログ見ると……どうやら特定のIDがこのシステムを操作しているみたいだ。」
茶丸が画面を指差す。
「それが犯人ってこと?」
「その可能性が高い。」
セイ君は頷きながら続けた。
「このIDは、システム管理者権限を持っているね。」
私は指を顎に当てて考え込んだ。
「つまり、この人物がトラグネス派地球人の可能性がある……」
コタローが画面を見下ろしながら聞いてきた。
「今日の装置のアップデート内容を確認できますか?」
セイくんが画面を操作し、別のデータを引き出す。
「これだ……エネルギー転送装置の制御システムが完全に新しいプロトコルに切り替えられている。」
私はスクリーンのデータを読み取りながら目を見開いた。
「転送規模が……これまでの10倍以上……。これが成功すれば、電力網全体が一時的に麻痺する危険もある。」
茶丸が耳をピクリと動かした。
「で、その転送はいつなの?」
セイくんは画面を指しながら答えた。
「あと・・・2時間後だ」
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