知性を与えられた猫たちは何を見る?

ChamalSei

文字の大きさ
21 / 68
第2章 境界線の向こう側

知性を与えられた猫たちは何を見る? 第21話

しおりを挟む
ジョンの緊急の連絡を受け、私は車を走らせた。
後部座席には2匹の猫、そしてコタローが緊張した面持ちで座っている。
ハンドルを手に、車を走らせながら骨伝導通信でジョンからの話を聞いた。

「律佳、これまで話していなかったが……今の状況を見て、そろそろ伝えるべきだと思う。君が向かう現場には、ある種の地球外技術が関与している可能性が高い。そして、それを操っているのが『トラグネス』だ。」

「トラグネス?……彼らは何者なの?」

「彼らの計画はまだ完全には分かっていない。ただ確かなのは、彼らが地球のエネルギーと人間の心理に干渉し、支配しようとしていることだ。」

「そんなことが現実に行われているなんて・・・」

信じがたい話ではあるが、これまでに起こったことで免疫がついたのだろうか。私は意外と冷静に受け止めた。

「で、これから行く先では何が行われてるの?」

「まず、今向かっているのは丸菱電力のデータセンターだが、そこでは、ここ最近、エネルギー消費が異常に増加している。そして、そこから検知されたエネルギーパターンは、明らかに人工的でトラグネス特有の技術だった。おそらくトラグネスが無線エネルギー転送技術を使って丸菱電力の発電所から転送しているとみられる。」

「それで、私たちは何をすればいい?」

「まずは、データセンターに入り込んでの調査、そして転送装置を止めることだ」

データセンターに降り立った私たち、つまり私と2匹とコタローだが、一緒に動いては怪しまれるということで、それぞれ別々に行動することにした。

正面玄関に立った私は、内心の緊張を隠しながらポケットに手を入れた。
「こんなの、本当に通用するのかしら?」

セイくんが作った偽のIDだ。このQRコードを見せれば大丈夫だというが・・・。守衛が端末で確認の間、冷や汗が背中を伝う。
しかし、次の瞬間、「確認できました。どうぞ。」 と言われ、私は安息の息を吐いた。

その頃、

「小さいって得だよなぁ!」

と茶丸はつぶやきながら、データセンターの裏手にある排気口を見つける。その下には小さな隙間が開いており、茶丸は身を縮めて
「よしよし、順調順調……」

茶丸はゆっくりと奥へ進んでいった。

セイくんはデータセンターの外壁近くに設置された監視カメラの死角を見つけ、ピタリと座った。

「さて・・・、こいつをどう無効化するか」

首輪に仕込んだ小さなデバイスを監視カメラに向けて送信信号を送る。数秒後、カメラがピタリと動きを止めたのを確認すると、セイくんは軽くうなずいた。

「カメラ無力化完了」

コタローは犬のぬいぐるみをかぶったまま、堂々とデータセンターの駐車場を歩いていた。

「あれ、犬がいるぞ?」

「いや、なんだ?あの不自然な動きは?」

警備員達が怪訝な顔で振り返る中、コタローは気にする様子もなく、正面から自動ドアを通り抜ける。

だが、次の瞬間、ぬいぐるみの頭が微妙にずれて顔が覗きそうになる。

「おっと」

コタローは素早く頭を直し、すれ違った人々に犬っぽさを精一杯装いながら奥へ進んでいった。

私がデータセンター内の待ち合わせポイントにつくと、茶丸が一番に現れた。

「やったー!いちばーん!あ、なんだ律佳ちゃんが先かぁー」

次にセイくんが静かに現れ、

「監視カメラを無力化しておいたよ。これで内部を動きやすくなったはずだよ」

最後にコタローがぬいぐるみを直しながらやってきた。

「よくこれで入れたよなー」

「私の演技力は完璧です」

「いや、ロボットだろうと犬だろうと、普通はそれで入れないんだけど」

「ホントだよ。僕たちは何を苦労して入ってきたんだろ」

彼らの陽気さに安ど感を覚えるが、すぐに次の作業に移ることにした。

「この端末だね。」

セイくんが先に動き出し、細い足で端末に飛び乗った。首輪から出してきた小さなデバイスをケーブルで接続すると、スクリーンが暗転して数秒後、画面が表示される。

「アクセス完了……システムログに侵入するよ。」

端末のディスプレイに大量のコードが流れ始めた。

セイくんが画面を見つめながら口元を引き締める。

「見て。ここにあるエネルギー消費のデータ、明らかに異常だ。」

茶丸がディスプレイを覗き込む。

「どれどれ?……って、これ、桁がオカシイよ!」

私が手元のメモを確認しながら答えた。

「普通、こんな消費量はありえないわね。これが定期的に発生しているの?」

セイくんが頷いた。

「そうみたい。そしてここに記録されているスケジュールを見ると、次の転送は今日だ!しかも転送量はこれまでの何倍も大きい。どうやら今日、アップデートが行われるみたい!」

「つまり今日の転送が完了すれば、トラグネス派の目的に大きく近づいてしまう可能性が高いわけね?」

私は眉をひそめた。

セイくんはデータをさらに掘り下げながら言った。

「ここに記録されているアクセスログ見ると……どうやら特定のIDがこのシステムを操作しているみたいだ。」

茶丸が画面を指差す。

「それが犯人ってこと?」

「その可能性が高い。」

セイ君は頷きながら続けた。

「このIDは、システム管理者権限を持っているね。」

私は指を顎に当てて考え込んだ。

「つまり、この人物がトラグネス派地球人の可能性がある……」

コタローが画面を見下ろしながら聞いてきた。

「今日の装置のアップデート内容を確認できますか?」

セイくんが画面を操作し、別のデータを引き出す。

「これだ……エネルギー転送装置の制御システムが完全に新しいプロトコルに切り替えられている。」

私はスクリーンのデータを読み取りながら目を見開いた。

「転送規模が……これまでの10倍以上……。これが成功すれば、電力網全体が一時的に麻痺する危険もある。」

茶丸が耳をピクリと動かした。

「で、その転送はいつなの?」

セイくんは画面を指しながら答えた。

「あと・・・2時間後だ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...