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終章 選ばれた未来
知性を与えられた猫たちは何を見る? 第58話
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しかし、彼らはすばしこく、棚から別の棚へと走り回っている。
私は、彼らをかばい、男の目の前に躍り出てエアガンを向けるが、彼は金属パイプを私めがけて打ち付けてきた。私が避けると、そのパイプはスチールの棚を強く打ち付け、次の瞬間、私はその棚が頭上に落下してくるのが見えた。
私は思わず頭を抱えた。目を開けると、棚の隙間に挟まれていることに気付いた。身体はどうにか無事だが、身動きが取れない。
男に目をやると、彼が、近くにあった布切れに液体をかけているのが見えた。そしてさらにその液体を部屋中にまき散らし、最後にライターで布切れに火をつけ、投げつけてきた。
「へっ!ざまみろ」
男はそう言って部屋を出て行った。
部屋の中は火に包まれた。パチパチという音と共に煙が立ち込める。
「ゴホッ、ゴホッ、茶丸!セイくん!大丈夫?!」
私は2匹を確認した。セイくんは無事なようだが、茶丸も私と同様、身動きがとれないようだ。
「茶丸、待って!今、助けるからっ!」
私は何とか、隙間から這い出ようと、身体を動かして力を込めて押してみたが、棚はピクリとも動かなかった。
その間に火の手は瞬く間に部屋に広がっていく。コタローに骨伝導通信で話しかけたが、距離が離れているせいか、通じない。煙は部屋中に立ち込め、火の手はますます広がっていく。
茶丸が叫ぶように言う。
「セイくん、コタローを呼んできて!」
目の前には炎が音を立て火の粉をまき散らして燃え盛っている。煙が広がり、喉や目にも痛みを感じた。セイくんを見ると、彼がその火に怯えて、震えているのがわかった。
「セイくんってば!」
「・・・・ダメだよ。僕、・・・無理だ・・・」
「何言ってんの!行かないと皆死んじゃうんだよ?!」
茶丸が急き立てる。
「無理だって!・・・僕は茶丸みたいに行動的じゃない。何でもできるように見えるけど、僕は実際には何も動けないんだ・・・」
「セイくん?!」
「僕は臆病なんだ!」
セイくんが首を垂れて、座り込む。
「違うよ、セイくん、あなたは慎重なだけ。臆病というのはそこから何もしないでいることよ」
私はセイくんに言った。彼がこんなふうに思っていたなんて・・・。知的で冷静で、いつも頼りになるセイくんの一面に胸を打たれた。
「もういい、いいから!セイくん!行くんだ!何も考えないで・・・・行くんだ!」
茶丸が叫ぶ。
沈黙の後、セイくんは顔を上げ、炎を見つめる。そして覚悟を決めたように走り、炎の隙間を狙って飛び出して行った。
セイくんは走った。目の前の炎の隙間を探し、走り抜けていくのが見えた。
私は、私の可愛い猫達をこんな危険な目に遇わせたくなかった。本当は火の中に向かうセイくんを止めたかった。だから、私は何も言えずにいた。
茶丸はそんな私の気持ちを察したのかもしれない。私はセイくんが無事でいることを祈るしかなかった。私は、口惜しさと歯がゆさの中で、拳を握りしめた。
しばらくすると、
「律佳さん!茶丸!無事ですか!?」
コタローの声が聞こえる。
「安心してください。三木さんがアップグレードしてくれたチタンコーティングの見せ場です!」
そう言って、火の中を構わず入ってきて、私に被さる棚を動かした。
「コタロー、ありがとう。助かったわ」
私はコタローに手伝ってもらい、よろめきながら立ち上がる。
茶丸も私の足元から「さすが!コタロー!」と笑みを浮かべる。
するとその時、バチバチッと音を立て、火の手が一層、大きくなるのが見えた。どこかに引火したのだろう。
「ダメだ、これじゃ、ここから出られない!」
私達は動揺し、不安な顔を見合わせた、その時。
ドローンが一機、飛んでくるのが見えた。そのドローンは消化液をまき散らしながら私達の目の前を旋回する。
「セイくんだ!」
茶丸が嬉しそうに叫ぶ。
「さすが!セイくん!」
そこを出た後、私は彼の左右の青と緑のオッドアイを見つめ、「あなたは勇敢よ」と抱きしめた。
私は、彼らをかばい、男の目の前に躍り出てエアガンを向けるが、彼は金属パイプを私めがけて打ち付けてきた。私が避けると、そのパイプはスチールの棚を強く打ち付け、次の瞬間、私はその棚が頭上に落下してくるのが見えた。
私は思わず頭を抱えた。目を開けると、棚の隙間に挟まれていることに気付いた。身体はどうにか無事だが、身動きが取れない。
男に目をやると、彼が、近くにあった布切れに液体をかけているのが見えた。そしてさらにその液体を部屋中にまき散らし、最後にライターで布切れに火をつけ、投げつけてきた。
「へっ!ざまみろ」
男はそう言って部屋を出て行った。
部屋の中は火に包まれた。パチパチという音と共に煙が立ち込める。
「ゴホッ、ゴホッ、茶丸!セイくん!大丈夫?!」
私は2匹を確認した。セイくんは無事なようだが、茶丸も私と同様、身動きがとれないようだ。
「茶丸、待って!今、助けるからっ!」
私は何とか、隙間から這い出ようと、身体を動かして力を込めて押してみたが、棚はピクリとも動かなかった。
その間に火の手は瞬く間に部屋に広がっていく。コタローに骨伝導通信で話しかけたが、距離が離れているせいか、通じない。煙は部屋中に立ち込め、火の手はますます広がっていく。
茶丸が叫ぶように言う。
「セイくん、コタローを呼んできて!」
目の前には炎が音を立て火の粉をまき散らして燃え盛っている。煙が広がり、喉や目にも痛みを感じた。セイくんを見ると、彼がその火に怯えて、震えているのがわかった。
「セイくんってば!」
「・・・・ダメだよ。僕、・・・無理だ・・・」
「何言ってんの!行かないと皆死んじゃうんだよ?!」
茶丸が急き立てる。
「無理だって!・・・僕は茶丸みたいに行動的じゃない。何でもできるように見えるけど、僕は実際には何も動けないんだ・・・」
「セイくん?!」
「僕は臆病なんだ!」
セイくんが首を垂れて、座り込む。
「違うよ、セイくん、あなたは慎重なだけ。臆病というのはそこから何もしないでいることよ」
私はセイくんに言った。彼がこんなふうに思っていたなんて・・・。知的で冷静で、いつも頼りになるセイくんの一面に胸を打たれた。
「もういい、いいから!セイくん!行くんだ!何も考えないで・・・・行くんだ!」
茶丸が叫ぶ。
沈黙の後、セイくんは顔を上げ、炎を見つめる。そして覚悟を決めたように走り、炎の隙間を狙って飛び出して行った。
セイくんは走った。目の前の炎の隙間を探し、走り抜けていくのが見えた。
私は、私の可愛い猫達をこんな危険な目に遇わせたくなかった。本当は火の中に向かうセイくんを止めたかった。だから、私は何も言えずにいた。
茶丸はそんな私の気持ちを察したのかもしれない。私はセイくんが無事でいることを祈るしかなかった。私は、口惜しさと歯がゆさの中で、拳を握りしめた。
しばらくすると、
「律佳さん!茶丸!無事ですか!?」
コタローの声が聞こえる。
「安心してください。三木さんがアップグレードしてくれたチタンコーティングの見せ場です!」
そう言って、火の中を構わず入ってきて、私に被さる棚を動かした。
「コタロー、ありがとう。助かったわ」
私はコタローに手伝ってもらい、よろめきながら立ち上がる。
茶丸も私の足元から「さすが!コタロー!」と笑みを浮かべる。
するとその時、バチバチッと音を立て、火の手が一層、大きくなるのが見えた。どこかに引火したのだろう。
「ダメだ、これじゃ、ここから出られない!」
私達は動揺し、不安な顔を見合わせた、その時。
ドローンが一機、飛んでくるのが見えた。そのドローンは消化液をまき散らしながら私達の目の前を旋回する。
「セイくんだ!」
茶丸が嬉しそうに叫ぶ。
「さすが!セイくん!」
そこを出た後、私は彼の左右の青と緑のオッドアイを見つめ、「あなたは勇敢よ」と抱きしめた。
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